ムロウテンナンショウ Arisaema yamatense  (Nakai) Nakai
  里山・林縁の植物 サトイモ科 テンナンショウ属
Fig.1 (兵庫県丹波市・植林地林縁 2010.5/14)

Fig.2 (兵庫県丹波市・林道脇 2011.5/7)

丘陵〜山地の林縁、林床に生育する多年草。
地中に扁球形の球茎があり、小球はほとんどつくらない。
葉は2個で、多くは第2葉は第1葉よりいちじるしく小型で、第1葉にほとんど接するように出る。
小葉は7〜17枚で鳥足状につき、葉軸はよく発達し、狭楕円形ときに線形で、鋭尖頭、全縁または鋸歯がある。
花は雄花になるか雌花になるかは個体の栄養状態による。花序はしばしば葉よりはやく開く。
花柄は長さ3〜15cm。仏炎苞は淡緑色、まれに紫色を帯びる。
口辺部は狭く開出し、舷部は広卵形で、先は急に狭くなり、鋭尖頭、多くは筒部より短く、内面に乳頭状の細突起を密生する。
付属体は基部が太く、しだいに細まり、上部では少し前に曲がり、淡緑色、先端はややふくらんで緑色、ふつう径2〜3mm。
近縁種 : スルガテンナンショウ、 ハリママムシグサアオテンナンショウホソバテンナンショウミミガタテンナンショウハリママムシグサ
キシダマムシグサヤマトテンナンショウ、 オオマムシグサ、 カントウマムシグサヒロハテンナンショウセッピコテンナンショウユキモチソウムサシアブミ

■分布:本州(愛知、福井、近畿地方)
■生育環境:丘陵〜山地の林縁、林床など。
■花期:4〜6月

Fig.3 葉はふつう2個つき、第2葉は第1葉に比べていちじるしく小さい。(兵庫県丹波市・植林地林縁 2010.5/14)

Fig.4 第1葉。(兵庫県丹波市・植林地林縁 2010.5/14)
  小葉は7〜17枚で鳥足状につき、葉軸はよく発達し、狭楕円形ときに線形で、鋭尖頭。

Fig.5 花。(兵庫県篠山市・植林地林縁 2009.4/17)
  花は葉よりも高い位置につくことも、低い位置につくこともあり一定しない。
  仏炎苞はふつう淡緑色まれに紫色を帯びる。付属体の先は少し前に曲がり、マッチの頭のようにふくらみ、緑色。

Fig.6 仏炎苞の舷部内側の拡大。(兵庫県丹波市・植林地林縁 2010.5/14)
  微細な乳頭状突起が密にならび、他のテンナンショウ属との区別点となる。指で触るとざらつきを感じる。

Fig.7 仏炎苞が2個の異常花。(兵庫県篠山市・樹林内渓流畔 2010.4/18)
  仏炎苞2個が互生してつき、花序を完全に被ってしまった異常花を見つけた。これでは訪花昆虫も中に入ることができない。

Fig.8 果実。(兵庫県神戸市・林床 2013.11/16)
  果実は液果で肥厚した花序軸に密に並んでつき、熟すと橙色となる。液果の落ちた後の花序軸は鮮やかな紫色だった。

Fig.9 中脈に沿って白斑の出た個体。(兵庫県香美町・林縁 2015.4/30)

生育環境と生態
Fig.10 間伐によって生じたギャプに生育するムロウテンナンショウ。(兵庫県丹波市・植林地 2010.5/14)
  間伐によって陽光が当たる場所であるが、適度な湿り気のある場所に生育している。
  生育のよい大きな株は雌花を、その周辺の小さな株は雄花をつけていた。
  周辺にはコナスビ、セントウソウ、ニシノホンモンジスゲなどのほか、ビロードイチゴ、ニガイチゴ、タケニグサなどの先駆植物が見られた。

Fig.11 林道脇に生育するムロウテンナンショウ。(兵庫県丹波市・林道脇 2011.5/7)
  シカの食害が激しい地域であるが、ムロウテンナンショウは食害を受けないため、あちこちで殖えている。
  足元にはシカの食害を受けにくい匍匐性のニョイスミレ、ヒメチドメ、サンインクワガタ、ミヤマヨメナのロゼットなどが見られる。
  ムロウテンナンショウの花が全て暗いほうに向いているのは、どういう理由によるものだろうか?


最終更新日:24th.Jul.2016

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