西宮の湿生・水生植物


 フィールド・メモ


このページはトップページの 「水辺から、そして緑から…」 で紹介した記事のバックナンバーに、一部画像を追加し加筆したものです。

 2011年 12月

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初冬に見るシダ
アツギノヌカイタチシダマガイではないかとご指摘のあったシダの自生地を、シダの研究者であるS先生とKさんとともに再訪しました。
アツギノヌカイタチシダマガイはサイゴクベニシダによく似ており、素人の私にはなかなか区別が難しいものです。
もともとベニシダの仲間は区別が難しいので、長らく敬遠していましたが、今回お二方にいろいろと教えて頂き、随分と視界が開けました。
翌日、午後から時間が空いたので、西宮市内の自宅近くのベニシダ類の多い谷に出掛けて復習してきました。
S先生・Kさんとともに出掛けた西播磨では主に以下のシダ類が観察できました。
アツギノヌカイタチシダマガイ(?)、サイゴクベニシダ、オオベニシダ、ベニシダ、トウゴクシダ、マルバベニシダ、 オオイタチシダ、コバノイシカグマ、カニクサ、フユノハナワラビ、オオハナワラビ、フジシダ、オオフジシダ、シケチシダ、シシラン、オオキジノオ、コウヤコケシノブ、 ヒメハイホラゴケ、アオネカズラ、チャセンシダ、ヌリトラノオ、ヒカゲノカズラ、カタヒバなど
翌日、西宮市内で観察できたシダ類は以下の通り。
ベニシダ、オオベニシダ、トウゴクシダ、サイゴクベニシダ、ナンゴクナライシダ、イノデ、ハカタシダ、ヤブソテツ、ヤマヤブソテツ、ヤマイタチシダ、ヒメイタチシダ、 リョウメンシダ、ジュウモンジシダ、オクマワラビ、ヘビノネゴザ、イワヒメワラビ、ミドリヒメワラビ、キジノオシダ、タチシノブ、ホラシノブ、トラノオシダ、ウチワゴケ、 コウヤコケシノブ、ハリガネワラビ、シケシダ、フモトシダ、シシガシラ、コシダ、ウラジロ、ヒカゲノカズラ、トウゲシバなど
自宅近くでも、ちょっと山に入ればいろいろなシダが見れるものですね。
今回、お世話になったS先生、Kさんをはじめとしてご指摘、ご意見を頂いたM先生、Sさんには感謝申し上げます。

アツギノヌカイタチシダマガイ(?)
Fig.1 アツギノヌカイタチシダマガイ(?)
ご案内した自生地とは少し離れた場所に新たに見つかったもの。 このシダは崖地を好むようで、他県の自生地もこのような場所が多いという。 どの自生地も個体数は少なく、ソーラスのついた成葉は破損しているものばかりで、正確な同定は来シーズンということになった。
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●関西の花・シダ アツギノヌカイタチシダマガイ(?)
サイゴクベニシダ
Fig.2 サイゴクベニシダ
西宮市内の棚田脇の細流の乾いた堅牢な土崖にぶら下がるように生育していた。 自生地の上方に連続する谷間にはベニシダ類が多く見られたが、サイゴクベニシダは生育していなかった。 前種同様、やや日当たりよい環境を好むのかもしれない。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花・シダ サイゴクベニシダ
ベニシダ
Fig.3 ベニシダ
ベニシダ類のなかでも最も多様な環境で見られる種で、雑草的な性格を持っている。最下羽片の下向き第1小羽片は小さく浅裂し、 葉柄基部の鱗片は褐色〜黒褐色、全縁で、苞膜は紅紫色を帯びる。
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トウゴクシダ
Fig.4 トウゴクシダ
西宮市内の谷間ではベニシダの次に多く見られた。ベニシダとの中間的な個体も多く見られ、なかなか厄介な種である。 葉面はベニシダほど光沢はなく、最下羽片の下向き第1羽片は長く、中〜深裂する。下部の小羽片は有柄。 鱗片は黒褐色、線状披針形。苞膜は紅紫色を帯びない。
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●関西の花・シダ トウゴクシダ
オオベニシダ
Fig.5 オオベニシダ
最下羽片の下向き第1羽片は長くトウゴクシダと似ており、紛らわしい個体も多い。葉面には光沢がなく、薄い紙質で、黄緑色。 葉柄基部の鱗片はトウゴクシダよりも幅広く披針形で、褐色。小羽片の基部は広いくさび形で無柄。 今回訪れた西宮市内の谷間では個体数は少なく、稀であった。
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●関西の花・シダ オオベニシダ
マルバベニシダ
Fig.6 マルバベニシダ
小羽片はベニシダよりも丸みを帯びる。ベニシダのソーラスが中肋と辺縁の中間からやや中肋寄りにつくのに対し、マルバベニシダのソーラスは中肋に接してつく。 また基部の鱗片は赤褐色〜褐色で、赤味が強く、苞膜は紅紫色を帯びず白色。 今回、西宮市の谷間では見つけることができなかったが、見落としたのかもしれない。若い苞膜がある時期に再確認したい。
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オオイタチシダ
Fig.7 オオイタチシダ
ヤマイタチシダやヒメイタチシダに似るが、ヤマイタチシダよりも明るい緑色で、光沢が強く、小羽片に鋭い鋸歯があり、苞膜は小さい。 またヒメイタチシダの葉面には光沢がなく、鱗片は淡色に縁どられるが、オオイタチシダの鱗片には縁どりはない。 関東地方ではオオイタチシダは5つのタイプに分けられるというが、関西ではどうなのか、今後の検討が待たれる。
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フジシダとオオフジシダの群生
Fig.8 フジシダとオオフジシダの群生
S先生にご案内いただいた取って置きの自生地。 兵庫県中部では古生層の堅牢な岩上にフジシダ、オオフジシダ、シシランなどが生育する場所が多いが、これほど群生している場所はそうやたらとはない。 付近には斜面を覆うオオキジノオの群落や、シシラン、ヌリトラノオ、カタヒバなどにびっしりと覆われた露頭なども見られる。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花・シダ フジシダ  ●関西の花・シダ オオフジシダ
ヒメハイホラゴケとシケチシダ
Fig.9 ヒメハイホラゴケとシケチシダ
フジシダやオオフジシダの近くにある、別の岩壁にヒメハイホラゴケがシケチシダとともに生育していた。 ヒメハイホラゴケは岩壁基部の湿った場所にのみ見られ、やや乾いた場所はコウヤコケシノブが群生していた。 ハイホラゴケに似るが、葉身は小型で、ハイホラゴケが平面的に裂片がつくのに対して、ヒメハイホラゴケの裂片は立体的につく。
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●関西の花・シダ ヒメハイホラゴケ  ●関西の花・シダ シケチシダ
オオハナワラビ
Fig.10 オオハナワラビ
山腹の寺院の植え込みの陰にオオハナワラビがまばらに群生していた。 よく見かけるフユノハナワラビとは生育環境が異なり、フユノハナワラビが日当たりよい丈の低い草地や畦などに生育するのに対し、 オオハナワラビは樹林下の湿った場所に見られる。 フユノハナワラビの葉は地表に広がり、鋸歯は鈍頭となるが、オオハナワラビの葉は葉柄が立ち上がり、鋸歯は鋭頭となる。
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●関西の花・シダ オオハナワラビ

 ------- 写真帳 2011・12・19 ---------------------------------------------------------------------------------------
サンカクベニシダ(仮称)
Fig.11 トウゴクシダの変異
トウゴクシダではなく、ベニシダの1型であるサンカクベニシダ(仮称)ではないかというご指摘を受けました。 ベニシダの仲間はやはり難解だ。
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ジュウモンジシダ
Fig.12 ジュウモンジシダ
西宮市内の谷間にて。県中部以北には多いが、市内では比較的少ない。
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●関西の花・シダ ジュウモンジシダ
ナンゴクナライシダとシシガシラ
Fig.13 ナンゴクナライシダとシシガシラ
ナンゴクナライシダは夏緑性だが、若い葉が緑色を保っていた。
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●関西の花・シダ ナンゴクナライシダ  ●関西の花・シダ シシガシラ
キジノオシダ
Fig.14 キジノオシダ
谷間によく見られるシダで、西宮市内では多い。
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黄葉を終えたヤマコウバシ
Fig.15 黄葉を終えたヤマコウバシ
黄葉を終えても多くの枯葉が枝に残り、その葉は新芽が膨らむ春に落ちる。
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果実をつけたホソバオオアリドオシ
Fig.16 果実をつけたホソバオオアリドオシ
照葉樹林の縁やギャップに見られる常緑低木。西宮市内では稀。
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