西宮の湿生・水生植物


 フィールド・メモ


このページはトップページの 「水辺から、そして緑から…」 で紹介した記事のバックナンバーに、一部画像を追加し加筆したものです。

 2012年 8月

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里山・溜池・草地
なかなか落ち着かず、今回の更新の画像も、細切れに訪れた複数箇所のものがほとんどです。 調査というよりも、忙しい合間をぬっての気分転換に行ったものばかりです。
今回も訪れた場所は溜池を中心とした2次的自然環境が色濃く残るところばかりです。

溜池畔の貧栄養湿地
Fig.1 溜池畔の貧栄養湿地
小規模地すべり地跡の緩斜面に堤を築いて溜池が造られている。その上部には湧水によって成立した湿地が広がっている。 このような場所は地下の基岩から鉱物質の成分が溶出するため、普通の草本は生育できず貧栄養湿地に特有の湿生植物群落が成立していることがある。 マット状に広がるオオミズゴケのほか、イヌノハナヒゲの仲間が優占し、サギソウ、トキソウ、カキラン、コバノトンボソウ、ミカヅキグサなどの稀少種、 アブラガヤ、モウセンゴケ、ミミカキグサ、ホザキノミミカキグサなど、多くの湿生植物が見られる。
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サギソウ
Fig.2 開花したサギソウ
サギソウは貧栄養湿地によく出現する植物。花の姿が美しいためかつてはよく乱獲にあっていた。 最近は園芸店で球根が売られ、斑入りの品種も出回っている。管理さえ良ければ分球してよく殖える。 サギソウは花の後方で下に伸びている距に蜜を溜めている。この距の中にまで口吻が届く昆虫はスズメガの仲間だけで、サギソウの受粉はもっぱらスズメガが行っている。 このためか、サギソウは夜になると甘い香りが最も強くなると言われている。
環境省準絶滅危惧種(NT)・兵庫県RDB Bランク種
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●湿生植物・サギソウ
イヌノハナヒゲ
Fig.3 イヌノハナヒゲ
Fig.1とは別の場所で撮影した群落。貧栄養な湿地の代表的なカヤツリグサ科植物。 この仲間はイトイヌノハナヒゲ、コイヌノハナヒゲ、オオイヌノハナヒゲなど互いによく似ており、正確に同定するには実体顕微鏡が欲しいところだ。 種子には花びらが退化したような逆刺を持った刺針状花被片と呼ばれるものが付属し、これが獣の体毛に絡んで種子散布されるのではと考えている。
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●湿生植物・イヌノハナヒゲ
ヒナノカンザシ
Fig.4 ヒナノカンザシ
画像中央の小さなピンク色の花をつけているのがヒナノカンザシ。 貧栄養湿地の草本の少ない半裸地状の場所に生える小さな植物で、注意していないと踏みつけたり見逃してしまう。 周囲に写りこんでいるのはどこにでも出てくるアリノトウグサで一緒に生えていると尚更見つけづらい。 草体とともに葉も小さいため、半寄生植物ではないかと考えている研究者もいるようである。
兵庫県RDB Cランク種
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●湿生植物・ヒナノカンザシ
オオミズゴケ
Fig.5 オオミズゴケ
貧栄養な湿地には必ず出現し、マット状の群落をつくる。 直射日光がよく当たる場所では右のように赤紫色に色付くことがある。 左のものは多湿の雑木林の林床で生育していたもので、苔体、葉身ともに大きい。
環境省準絶滅危惧種・兵庫県RDB Cランク種
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●湿生植物・オオミズゴケ
チゴザサの花序
Fig.6 チゴザサの花序
溜池畔から水田の畦まで広く生育し、匍匐枝を伸ばしてよく殖える。その性質から、水田に侵入するものは水田雑草として嫌われる。 画像は開花中の花序で、小穂の先から出た、2岐する羽毛状の雌蕊が愛らしい。
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●湿生植物・チゴザサ
ミミカキグサ
Fig.7 ミミカキグサ
貧栄養な湿地、溜池畔などの半裸地に生育する小型の食虫植物。特に貧栄養な湿地では必ず出現する。 葉は普通3〜5mmで地下茎の節から1枚ずつ出し、泥中に横走する地下茎には捕虫嚢を付ける。 水没にも耐え、水中葉は線形となり、長さ3cmに達し、葉身だけ見ると、まるで別種のようである。
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●湿生植物・ミミカキグサ
ムカゴニンジン
Fig.8 開花し始めたムカゴニンジン
湿地や溜池畔で夏の終りから秋にかけて開花するセリ科の湿生植物。草体はヒョロヒョロと伸びて、少しの風にも揺れ、なかなか良い画像を撮るのが難しい。 花期以降、葉腋にムカゴを作るためムカゴニンジンの名があり、他種との明瞭な区別点とされているが、兵庫県下ではムカゴをつくるヌマゼリも確認されている。
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●湿生植物・ムカゴニンジン
溜池の浮葉・抽水植物群落
Fig.9 溜池の浮葉・抽水植物群落
溜池は人が農業の灌漑用に造ったものだが、のちに動物や水鳥が種子や草体を持ち込むことによって、水生植物、特に止水域に適応した種の楽園となった。 画像では水深にあわせて水際からカンガレイ、クログワイ、ガマなどの抽水植物が生育し、 水深のある場所ではジュンサイを主体とし、少量のヒシ、ヒツジグサ、ヒルムシロ、ホソバミズヒキモが混生する浮葉植物群落が発達している。 また開放水面のある場所では水底にタチモ、ホッスモ、イヌタヌキモ、フラスコモの仲間が生育しおり非常に多様性に富んだ植生が発達している。
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カンガレイ
Fig.10 カンガレイ
Fig.9とは別の溜池畔に生育しているもの。カンガレイの仲間にも似たものが多くあるが、 小穂が披針形で長く、雄蕊の葯が2.5mm以上のものはカンガレイであり、この特徴さえつかんでいれば区別は易しい。 最近ではかなり慣れてきたためか、手に取らずともハタベカンガレイと区別できるようになってきた。 画像の背景に広がっているのは兵庫県RDBではBランクとされるヤマトミクリの群落で、この溜池も相当2次的自然度が高い。
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●抽水植物・カンガレイ
ミズニラ
Fig.11 群生するミズニラ
毎年沢山のミズニラが発生する篠山市の溜池で、今年も浅水域で群生していた。 ミズニラは止水域を好む水生シダ植物で、葉の基部に大胞子嚢と小胞子嚢をつくる。 外見では区別できないミズニラモドキも兵庫県に分布しており、高倍率の顕微鏡によって小胞子表面に針状突起があるかどうかを確認する必要がある。 大胞子表面には蜂の巣状の網目があって美しい。
環境省準絶滅危惧種(NT)・兵庫県RDB Cランク種
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●湿生植物・ミズニラ 
ジュンサイ群落
Fig.12 ジュンサイ群落
ジュンサイは山際の池や谷池に出現し、貧栄養〜中栄養な溜池でよく見かける浮葉植物。ヌメリに包まれた新芽が食用となり、秋田産のものが有名。 古くは万葉集にも「ぬなは(沼縄)」として詠まれ、古くから利用されていたことが想像できる。 新芽は4〜7月に採取され、7月頃赤紫色の小さな花を水面上に開く。 この池ではジュンサイの開花期は終わっていたが、変わりにイヌタヌキモが花序を上げて開花していた。 (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●浮葉植物・ジュンサイ 
スイレン
Fig.13 水面を覆うスイレン
西宮市内にスイレンに覆われた溜池がある。温帯スイレンは日本の気候によく適応し、屋外でもよく育つ。 花が美しいので、時々溜池に投入されているのを見ることがある。根茎による繁殖力が旺盛で、在来の水生植物を駆逐してしまうことがある。 この溜池ではかつてはフトヒルムシロ、ジュンサイ、イヌタヌキモが生育していたが、今では全く見られなくなってしまった。
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●浮葉植物・スイレン
ヒツジグサ
Fig.14 ヒツジグサ
ヒツジグサは在来種で、スイレンのように根茎で繁殖せず、種子を散布して繁殖する。したがってスイレンと競争する事態が生ずれば消滅してしまう。 ヒツジグサは共存型の浮葉植物といえるような種で、ジュンサイ、フトヒルムシロなどとともに浮葉植物群落をつくっていることが多いが、 この溜池では澄んだ水中にヒツジグサが単独で群生している。
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●浮葉植物・ヒツジグサ
ヒルムシロ
Fig.15 開花したヒルムシロ
同じ溜池に生育する浮葉植物でも、ヒルムシロ科の植物は棒のような花序を水面上に突き出すだけで、非常に地味だ。 虫媒花のヒツジグサ、スイレン、ジュンサイなどと違い、ヒルムシロ科は受粉に風媒を選んだからだ。 別に虫を呼ぶ必要もないので、水面上に必要最小限の花序を突き出していればそれで済んでしまう。あとは風まかせってことです。
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●浮葉植物・ヒルムシロ
ホソバミズヒキモ
Fig.16 開花したホソバミズヒキモ
兵庫県ではよく見る普通種の水草ですが「細葉水引藻」という優雅な名をもち、草体も繊細なので好きな水草のひとつ。 良く似たものにコバノヒルムシロがあるが、これは県内では数ヶ所の溜池からしか発見されていない稀少種。 浮葉を持たないものはイトモに似ているが、夏以降に葉腋にできる殖芽によって区別できる。 西宮市ではイトモは生育しているが、ホソバミズヒキモは確認していない。
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●浮葉植物・ホソバミズヒキモ
ユウスゲ群落
Fig.17 溜池土堤のユウスゲ群落
現在も利用されている溜池の土堤は管理上年数回草刈りが行われ、場所によっては野焼きがなされることもある。 このことによって高茎草本の生長は程よく抑えられ、草原的な環境が保たれる。 かつて家々の屋根が茅葺であった頃、農村の後背に茅を採取する茅場があり、そこに草原環境を好む草本が生育していたが、 茅場が無くなった現在、草原環境が保たれている場所として溜池土堤は貴重な場所である。 溜池土堤はその高さにより水分含有量が異なり、下方では湿生植物が生育し、上方では乾性草原に生育する草本が見られる。
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●湿生植物・ユウスゲ
ユウスゲの花
Fig.18 ユウスゲの花
ユウスゲは兵庫県下では但馬地方の海岸草地の集団が有名だが、内陸の溜池土堤にも生き残っていて、特に播磨地方によく見られる。 溜池土堤では中部以下の比較的湿った場所を好み、ここではカキラン、ヤマラッキョウ、ノハナショウブなどの湿生植物とともに生育している。 その名の通り夕暮れとともに開花する。夕暮れの中、薄い黄色の花が浮かび上がり、儚げで美しい。 このような時間帯に草体全体を判りやすく撮影するのは難しく、周辺環境とともに写そうとすると、花が必ず色トビしてしまう。  兵庫県RDB Cランク種
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●湿生植物・ユウスゲ
スズサイコ
Fig.19 スズサイコ
スズサイコも夕暮れとともに開花する草本。 ユウスゲよりは乾いた草原環境に生育し、ここではワレモコウ、キキョウ、ナンテンハギなどとともに生育している。 各地で減少傾向にあるが、兵庫県内では溜池土堤や棚田の土手などでよく見かけ、西宮市内でも比較的普通である。  環境省準絶滅危惧種(NT)
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●関西の花・スズサイコ
チダケサシ
Fig.20 群生するチダケサシ
Fig.10の溜池土堤下部にチダケサシが群生していた。 山間の棚田で見るアカショウマに似ているが、花が淡紅色を帯びることが多く、小葉がやや丸みを帯びてややぼってりとしていることで区別できる。 三田市や篠山市ではよく見かけるが、西宮市では確認できていない。
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●湿生植物・チダケサシ
キキョウ
Fig.21 キキョウ
これもFig.10の溜池土堤で生育していたもの。チダケサシと違って上部に点々と生育している。 草原環境を代表する花で、各地で激減し絶滅危惧種となっているが、兵庫県内では溜池土堤で健在である。 この溜池土堤の最下部ではノハナショウブとキセルアザミが群生しており、ここでも2次的自然環境の高さが伺えた。 環境省絶滅危惧U類(VU)
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●関西の花・キキョウ
イシモチソウ
Fig.22 花期も終りのイシモチソウ
溜池土堤下部でカキランとともに生育していた。イシモチソウは初夏に開花する食虫植物。開花が終り盛夏を過ぎると黒変して、刮ハを結実して枯死する。 画像のものも半数は枯死し、最後の一花を開花し終えたものも見える。 このように地上部は早々と枯れてしまうが、地下には養分を蓄えた塊茎があって、翌春に再び出芽する。 環境省準絶滅危惧種(NT)・兵庫県RDB Cランク種
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●湿生植物・イシモチソウ
コカモメヅル
Fig.23 コカモメヅル
Fig.14の溜池土堤に生育していた。コカモメヅルも草刈りの行き届いた溜池土堤や棚田の土手の比較的乾いた場所に出現する種である。 花は小さいがガガイモ科特有の星型で渋い色調をしており、見つけると必ず撮影したくなる。 やはり2次的自然度の高い場所に見られ、この溜池土堤では他にオトコゼリ、ムカゴニンジン、チダケサシ、オミナエシ、リンドウ、アマドコロなどが生育していた。
兵庫県RDB Cランク種
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●関西の花・コカモメヅル
コバギボウシ
Fig.24 コバギボウシ
西宮市内の山間棚田の用水路脇に生育しているもの。西宮市内では棚田の畦などでよく見かける種で、大きな群落が見られるところもある。 湿地に生えるものでは同じく小型のミズギボウシがあるが、ミズギボウシが貧栄養な場所を好むのに対して、コバギボウシは栄養分の豊富な土壌を好む。 肥えた土壌は放置しているとすぐに高茎草本が茂ってしまうため、草刈りがなされる場所にしか生育できない。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●湿生植物・コバギボウシ
ヒメシダ
Fig.25 草刈り後に萌芽したヒメシダ
ヒメシダは棚田の用水路脇や畦などに生育する湿生シダ。地下に盛んに根茎を横走して群生することが多い。 水田の畦は年に何度も草刈りされる場所であるが、地下の根茎に養分を蓄えているヒメシダはすぐに瑞々しい葉を萌芽してくる。 水田内なで侵入せず、横走する根茎が畦を強化しているはずで、どちらかというと歓迎されるべき種に思う。
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●湿生植物・ヒメシダ
オニユリ
Fig.26 オニユリ
あちこちの河川堤防や墓地でオニユリが開花していた。日本国内のオニユリは全て3倍体で結実せず、葉腋にできるムカゴによって殖える。 百合根を食用とするために古くに渡来した史前帰化植物と考えられている。 ヤブカンゾウ、シャガ、ヒガンバナも同様に3倍体で結実せず、同じように史前帰化植物であろうとされている。 そのためか、草地環境でもかなり人くさい河川堤防で見かけることが多く、墓地に多いのはお盆の時期に献花されたものからムカゴが落ちて成長するからだろう。 (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花・オニユリ
無農薬水田の水田雑草
Fig.27 無農薬水田の水田雑草
自家消費用の水稲を栽培する水田では、田植え前に除草剤を撒く程度で、以後は無農薬で稲を育てていることが多い。 このような水田では様々な水田雑草が生育し、絶滅に瀕しているような草本も出現することがある。 この水田は今のところ画像に見えるコナギ、イヌホタルイ、クログワイ、イボクサといった一般的な水田雑草しか見られないが、これから稀少種が出現する可能性が高い。
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萌芽したキクモ
Fig.28 萌芽したキクモ
Fig.27の水田を覗き込むとキクモの萌芽が確認できた。他にミゾハコベ、キカシグサなどの指標となるような水田雑草も見られたので、 これから何が生育してくるか楽しみな場所である。 この水田の直下には溜池があり、カンガレイ、エゾアブラガヤ、イヌノハナヒゲ、カンガレイ、ムカゴニンジン、ヌマトラノオ、ミソハギ、マルバオモダカ、 イヌタヌキモ、ヒシが生育している。
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●湿生植物・キクモ
休耕田のガマとヒメガマ
Fig.29 休耕田のガマとヒメガマ
西宮市内の住宅地の奥に経年した休耕田があり、そこにガマとヒメガマが混生していた。 背丈が高く雌花穂の上方が太く暗褐色のものがガマで、より背が低く雌花穂が細く上下均一で褐色のものがヒメガマである。 またヒメガマは脱落した雄花穂と雌花穂の間に軸が露出しているのが明瞭であることも解る。 これに加えてコガマも生えていれば観察会に最適な場所だが、コガマは兵庫県下では稀少種で、西宮市内でも北部の休耕田でしか見れない。
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●抽水植物・ガマ  ●抽水植物・ヒメガマ
休耕田のクワイ
Fig.30 休耕田のクワイ
Fig.29と同じ休耕田の片隅に生育しているもの。 西宮市内ではかつて平野部の水田で稲とともに栽培されていたものが、痕跡的に水田の縁などに生育しているのを比較的よく見かける。 かつてはおせち料理の自家用として栽培する農家もあったのだろう。 関西では小振りの吹田グワイが有名だが、このあたりのものも根茎は小さいので同じものを栽培していたのかもしれない。 花が咲かない品種が多く、まだ開花しているものを見たことが無い。
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ハマビシ
Fig.31 甲子園浜のハマビシ
かつて戦前には西宮市の海岸で記録があった海浜植物。 現在甲子園浜で数個体が生育しているが、これは人と自然の博物館のシードバンクから種子を持ち込んだものだ。 兵庫県では野生状態で自生するものはなく、最後の自生地であった富島のものが、浄水場建設のため敷地内に移植されて、そこで命脈を保っている。  環境省絶滅危惧TB類(EN)・兵庫県RDB Aランク種
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ボタンボウフウ
Fig.32 ボタンボウフウ
西宮市にこれまで記録のなかった種である。 甲子園浜の後背湿地の脇に1株だけ生育している。 しかし、未記録種を見つけたからといって素直には喜べない。 かつてハマビシの移植があったような場所では、埋土種子や漂着した種子が発芽成長したものか、持ち込まれた種子が発芽したのか、スグには見極め難い。 有用植物であるという点がさらに疑いをもたらす。
兵庫県RDB Bランク種
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