西宮の湿生・水生植物


 フィールド・メモ


このページはトップページの 「水辺から、そして緑から…」 で紹介した記事のバックナンバーに、一部画像を追加し加筆したものです。

 2011年 1月

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越冬期の草花・その2
冬の谷池
Fig.1 凍りついた冬の溜池
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冬の溜池と殖芽など

今年初頭の冬は例年よりも寒い日が続き、深夜から早朝にかけては氷点下となって、ほとんどの溜池では薄氷が張っているのを眼にします。 水生植物はこのような厳冬期にはそれぞれ固有の特徴を持った殖芽となって冬を越すものも多く見られます。 ヒルムシロやササバモなどは地中に殖芽をつくるため観察するのはちょっと難しいのですが、水中に殖芽を形成する水生植物のものは観察適期であると言えます。 夏から秋のシーズン中はヒシなどの浮葉植物によって水面が覆われている溜池でも、水量が増える前の冬期に訪れると、それまで確認できなかった水草の殖芽が 溜池畔に打ち寄せられていて、新たに自生の追加種を発見できることもあります。
今回はフィールドで見られたそういった殖芽のほか、溜池や土堤の植物の冬の様子や、冬場も元気な草本を紹介したいと思います。

切れ藻と殖芽
Fig.2 水面に浮かぶ切れ藻と殖芽
水生植物の豊富な溜池では岸近くに切れ藻とともに殖芽が風に吹き寄せられていることが多い。 ここでは殖芽のついたオグラノフサモの切れ藻、タチモの切れ藻、ジュンサイの殖芽などが見られた。 この溜池では他にノタヌキモとホソバミズヒキモが生育しているが、ノタヌキモは殖芽をつくらず種子で越冬し、 ホソバミズヒキモの殖芽は沈降性で水底に沈んでしまうため、ここには写っていない。
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ジュンサイの殖芽
Fig.3 ジュンサイの殖芽
ジュンサイは分枝した水中茎の枝先に新芽が肥厚した殖芽をつくる。ジュンサイの新芽は通常寒天質によって包まれているが、殖芽の寒天質はより分厚くなる。 養分を蓄えて肥厚し、さらに寒天質が厚味を増すためか、ジュンサイの殖芽は完全には浮遊せず、ある程度の重量があって半沈降性であり、水底に沈んでいるものも多いが、 波風を受けて水底を移動して生育領域を広げる。そのため岸辺に打ち上げられているものもよく見かける。
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●浮葉植物 ジュンサイ
オグラノフサモの殖芽
Fig.4 オグラノフサモの殖芽
オグラノフサモの典型的な殖芽である。 実際の自生地では典型的なものの他、Fig.2 のように短い殖芽も混じり、短いものはフサモの殖芽と紛らわしいが、フサモの殖芽は先端が丸みを帯び、より太く、 より緑色を帯びることで、一度認識すれば区別可能となる。
余談だが、殖芽が吹き寄せられていた浅瀬の底に溜まった落葉の間には数百匹に及ぶ大量のカワバタモロコの稚魚が越冬していて驚かされた。
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●沈水植物 オグラノフサモ
フサモの殖芽
Fig.5 フサモ(ハリマノフサモ?)の殖芽
典型的な殖芽をつくるフサモが見られる継続観察していた溜池が、水量が少なくフサモの殖芽の生産が見られなかったため、別の自生地のものを撮影した。 典型的なものよりも長い殖芽が見られるため、フサモではなくオグラノフサモとフサモの種間雑種であるハリマノフサモの可能性もないとはいえない。 ハリマノフサモについては、まだ実態がよく把握できていないので、この冬、これまで発見したフサモの自生地の殖芽をひととおり調べてみたいと思う。
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●沈水植物 フサモ
水底のマツモの殖芽
Fig.6 水底に散乱するマツモの殖芽
シーズン中にはヒシが密に水面を覆い、水中にはマツモが密生するやや富栄養な溜池の水底に見られたもの。 栄養状態が良いため殖芽の生産量は多く、殖芽も大きい。水底に留まっているものとともに、水面に浮いているものも見られ、 表面に張った氷の中に封じ込まれているものも多数見られた。
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●浮遊植物 マツモ
マツモの殖芽
Fig.7 やや中栄養な溜池畔に見られたマツモの殖芽
Fig.6 で見られた殖芽よりも小さく、長さは約1cm程しかない。Fig.6 のものは長さが4cm程度のものが多く見られた。 マツモにとっては栄養分が少なく生育しにくい溜池であろうが、湿生・水生植物の出現種数ははるかに多く、マツモ、ヒシの他にヒルムシロ、タチモ、ホッスモ、 キクモ、ミズユキノシタ、イボクサなどが見られ、ドブガイやオオタニシが生息する。
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打ち上げられたイトモの殖芽
Fig.8 岸辺に打ち上げられたイトモの殖芽
山際にあるヒシの密生する溜池畔で見られたもの。 この溜池にイトモが生育しているとは思わず、ヒシの果実のサンプルを得ようと池畔に降りたところ発見した。 何度も見ていた溜池だが、ヒシの繁殖が旺盛で常時満水であり、しかも透明度が悪かったためイトモの生育は確認していなかった溜池である。 水の引いた溜池畔の陸上に非常に多くの殖芽が打ち上げられており、溶けかかった霜柱の上や薄氷の中にも殖芽が見られた。 殖芽は側枝の新芽部分が肥厚して硬化したものであり、硬く締まっているため多少の低温に晒されてもあまり影響がないのであろう。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●沈水植物 イトモ
凍ったフトヒルムシロ群落
Fig.9 氷に封じ込められたフトヒルムシロ群落
フトヒルムシロは殖芽を形成せず、そのまま越冬する。しかし、浮葉がこのように氷漬けになってしまうと、浮葉内部の水分も氷結してしまうため浮葉は枯死する。 浮葉は枯死しても、水中葉をつけた水中茎は生きているため、春になって水温があがると新芽から新たに沈水葉と浮葉を展出し、早くから花茎を上げる。 土中で殖芽越冬するヒルムシロやササバモよりも花期が早いのは、この性質によるものである。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●浮葉植物 フロヒルムシロ
冬期のヤマトミクリ
Fig.10 氷結したヤマトミクリ自生地の溜池
抽水形のヤマトミクリは水面の氷結がなければ半常緑越冬するが、気温が低下し水面が氷結すると抽水葉は枯死する。しかし、水面下になびいている水中葉は常緑で越冬する。 画像では見難いかもしれないが、表面の薄氷の下に青々とした水中葉が見えている。 これらの水中葉をつけたシュートのうちよく成熟したものは、春になると抽水葉をあげて初夏から開花がはじまる。
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●抽水植物 ヤマトミクリ
氷結した溜池のハタベカンガレイ
Fig.11 氷結した溜池のハタベカンガレイ
ふつうのカンガレイは冬期にはすっかり地上部が枯れてしまうものであるが、ハタベカンガレイは秋期に展出した茎は水面が凍結した状態でも枯死せずに常緑越冬する。 一方、前年に花序を生じた茎は水面上に出た部分は枯死し、水中部分が半常緑越冬する。 自生地は山間にある溜池で、水源の多くは湧水によるものであり、水面の氷結具合は渓流を水源とする溜池よりも弱い。 このような生態を持つハタベカンガレイだが、秋に出た茎も低温の限界というものが当然あるはずで、限界に近い低温が何日続くかによって分布の北限が決まるはずである。 ただし、多雪地では雪による保温効果によってさらに北に伸びる可能性がある。
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●抽水植物 ハタベカンガレイ
ミズハコベ
Fig.12 冬期に生育するミズハコベ
溜池直下にある水路内で生育していたもの。ミズハコベは晩秋から初夏にかけて盛んに成長し、冬場も水路内でよく見られる。 湧水の多い河川や水路では1年中枯れることなく生育している。 画像のものは水中では線形で先が2裂した沈水葉と、水面上では楕円形となった気中葉を形成している。
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●湿生植物 ミズハコベ
トウゲシバ
Fig.13 葉腋に胞子嚢を形成したトウゲシバ
兵庫県下では林縁や林床にごくふつうに見られるシダ植物。冬から春にかけて胞子嚢を形成する。 胞子をつくるほか、葉先にムカゴを形成して繁殖する。 画像のものでは、茎中部の少し上に他の葉とは様子が異なる先が広がった葉が2枚隣接しているのが見えるが、上側にも隣接して葉があり、これらの葉の間にムカゴができる。 ネット上ではムカゴは夏につくとなっているが、この様子では春にはムカゴを観察できそうである。
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開花したヒメカンアオイ
Fig.14 開花したヒメカンアオイ
冬に開花し、ギフチョウの食草としてよく知られているカンアオイの仲間で、本州から四国にかけて分布し、兵庫県下では明るい雑木林の林床などでよく見かける。 図鑑などでは開花期が早春となっているが、兵庫県では12月に開花し、なかには11月に開花しているものもある。 愛知県では9月に開花する集団があり、アキザキヒメカンアオイという呼称されているようである。
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●関西の花 ヒメカンアオイ
冬のミヤコアオイ
Fig.15 雪をかぶったミヤコアオイ
カンアオイの観察ついでに、近くのミヤコアオイの自生地も覗いてみたが、まだ開花には早く、花芽が動き出したばかりで、つぼみの形成もこれからといった感じだった。 兵庫県下ではミヤコアオイは2,3月頃に開花することが多い。ヒメカンアオイと混生する場所もあるが、混生地は少ない。 カンアオイの仲間は花弁がなく、萼は果実期になっても残っているため、外見上開花期と果実期の境が区別がつかない。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 ミヤコアオイ
冬期のセリバオウレン
Fig.16 常緑越冬するセリバオウレン
ミヤコアオイと同じ場所に生育しているセリバオウレン。変種のキクバオウレン、コセリバオウレンとともにオウレンと一まとめにすることもある。 セツブンソウなどとともに2月頃から開花するが、今年は冷え込みが厳しいためか、花茎を上げるような様子は今のところ全く見られなかった。 生薬の「黄連」はオウレンの根茎を半干しにしたもので、丹波市山南町のセリバオウレンの根茎を干したものが丹波黄連として名高いが、現在はほとんど生産されていないらしい。
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●関西の花 セリバオウレン
ショウジョウバカマ越冬ロゼット
Fig.17 春を待つショジョウバカマのロゼット
ショウジョウバカマは湿地や渓流畔、あるいは棚田の水路脇に生育し、兵庫県下ではごくふつうに見られるが、花は大きくはないが美しく、 ショウジョウバカマの開花によって里山にも春が来たと感じる方も多いだろう。 画像のものはミズニラやゴウソ、オタルスゲ、アブラガヤなどが生育する沼沢地に沿った植林地の林床に群生しているもので、ロゼットの中央には春を待つ大きなつぼみが付いている。 花は3月下旬頃から開花しはじめ、多くの昆虫が訪花する。
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●湿生植物 ショウジョウバカマ
フユノハナワラビ
Fig.18 溜池土堤に生育するフユノハナワラビ
これも兵庫県では溜池土堤や棚田の土手、畦、堤防などでごくふつうに見かけるシダ植物である。 酷似するものに鋸歯が鋭頭となるオオハナワラビがあるが、オオハナワラビはあまり見かけない。 オオハナワラビは山地の林下に生育し、フユノハナワラビとは生育環境も異なる。 オオハナワラビを見かけないのは、たんに私が水辺ばかり歩き回り、山地帯をほとんど歩かないためかもしれない。
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●関西のシダ フユノハナワラビ
果実を裂開したキキョウとリンドウ
Fig.19 果実を裂開して種子散布する溜池土堤のキキョウとリンドウ
どちらの種も兵庫県下の管理が行き届き、かつ自然度の高い溜池土堤によく見られる種である。 キキョウの果実は冬に黒く立ち枯れた茎の先に先が5裂した姿でそれなりに目立つが、リンドウの果実は淡褐色で、多くは倒れこんだ茎の先に宿存する枯れた花弁から2裂した先端部だけを出し、 他の枯草と紛れて、注意していないと見つけられない。 リンドウの種子は非常に細かく、果実を指で弾くと、まるでほこりのように種子を飛散させるが、キキョウの種子は大きく、冬の強い北風に吹かれて種子を撒くのだろう。
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●関西の花 キキョウ  ●関西の花 リンドウ
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越冬期の草花・その1
冬の休耕田
Fig.1 冬期の休耕田
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冬の休耕田にて

明けましておめでとうございます。本年もさらにサイトを充実させていきたいと思います。 不備な点、改良すべき点、誤りやアドバイスなどお気づきの点があれば、是非ご指摘ください。本年も当サイトをよろしくお願いいたします。
山野は冷え込んで渋い色調に沈んでいます。しかし、枯れた草の間には越冬中の草花が、多くは地に張り付くようにして生育しています。 特に目立つのは根生葉を地表に放射状に開いている、いわゆるロゼットと呼ばれる形になっている草本類です。 より詳しく分類するとロゼットの形態には3型あり、開花期に花茎のみを上げるものは正真正銘のロゼットとされています。タンポポ属がその代表的なものです。 生育期に葉のついた茎を出すものは偽ロゼットとされ、多くのキク科、アブラナ科、マツヨイグサ属、キランソウなど、冬期に見られる多くのロゼットがこのタイプになります。 冬期にはロゼットが見られるが、開花時には枯れてなくなっているものがありますが、これは一時ロゼットとされるもので、 ヤマジノギク、ツリガネニンジン、ネコノメソウ属の一部などに見られます。
今回は里山の休耕田で観察した越冬中の草花を、主にロゼットを形成するものを中心に紹介してゆきたいと思います。
左のFig.1は冬の管理休耕田の様子です。画像にはロゼットとなったコオニタビラコ、ハハコグサ、冬も生長し続けるノミノフスマ、スズメノテッポウ、スズメノカタビラ、 オランダミミナグサ、出芽したオオイヌノフグリなどが見られます。

ゲンゲのロゼット
Fig.2 ゲンゲ(レンゲソウ)のロゼット
ゲンゲは秋に発芽し、冬期には奇数羽状複葉の根生葉を地表に広げて越冬する。 ゲンゲは春になると、葉をつけた花茎を立ち上げ、開花時には根生葉が消失していることが多く、一時ロゼット型の植物ということになる。 イネの品種改良、2毛作の普及、化学肥料の使用によって緑肥として使用されることが少なくなったが、最近では休耕田に播種して、レンゲ畑を観光資源とする例も見られる。
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●湿生植物 ゲンゲ (レンゲソウ)
ナズナのロゼット
Fig.3 ナズナのロゼット
ナズナは葉のある花茎を立ち上げ、開花時にも根生葉が残るため偽ロゼット型である。ナズナのロゼット葉は変異が多いが、画像のような頭大羽状裂葉が最も典型的なものだろう。 小さな個体では葉が切れ込まず、柄のある楕円形で粗い鋸歯を持つものとなる。 また場所によっては側裂片が線形に近くなるものがあるが、このような個体は大型化する傾向が強い。春の七草のひとつとして馴染み深い。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●湿生植物 ナズナ
コオニタビラコのロゼット
Fig.4 コオニタビラコのロゼット
ナズナとともに春の七草のひとつで「ほとけのざ」と称されるもの。コオニタビラコのロゼット葉は薄く無毛な点で、次に紹介するオニタビラコと区別される。 ロゼットは径5cmほどのものであるが、地中には太い主根が10cm以上伸びている。根生葉は開花時にも残るため、ロゼットのタイプは偽ロゼット型である。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●湿生植物 コオニタビラコ
オニタビラコのロゼット
Fig.5 オニタビラコのロゼット
コオニタビラコと同様、偽ロゼット型であり、同様に食用とすることもできる。葉はコオニタビラコよりも厚味があり、葉裏には毛が密生してごわつくような感じがする。 また、側裂片は中央脈に密につき、基部の葉柄状に見える部分は短い。 吹きさらしとなる休耕田では、画像のようにロゼットが赤褐色を帯びたようになることが多い。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
タネツケバナのロゼット
Fig.6 タネツケバナのロゼット
タネツケバナのロゼットは頭大羽状裂葉を隙間なく多数広げ、間から地表がほとんど見えないことが多い。 ロゼット葉の葉軸は開出毛が密生して毛深い。この仲間は区別の難しいものが多いが、冬期ロゼット時に根生葉が多数束生し、葉軸が毛深いものはタネツケバナかタチタネツケバナで、 タチタネツケバナには葉軸に側裂片とともに托葉状の小片が付属物としてつくので、区別可能である。ロゼットのタイプはタネツケバナ属のものは全て偽ロゼット型。
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●湿生植物 タネツケバナ
ニシノオオタネツケバナ
Fig.7 ニシノオオタネツケバナ
紅葉した大きな個体が、花茎を直立せずに斜上して開花していた。気温が低く、吹きさらしの環境なので、花茎も斜上しているのだろう。 ロゼット葉は無毛で、柔らかく、頂小片は大きく腎円形となる。ロゼット葉は大きな個体では多数束生するが、小さな個体ではロゼット葉は少数である。 ロゼット葉は生育環境によって変異が多いうえ、オオバタネツケバナ、ミズタネツケバナ、ミズタガラシのロゼットと酷似し、区別が難しい。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●湿生植物 ニシノオオタネツケバナ
ウマノアシガタのロゼット
Fig.8 ウマノアシガタのロゼット
休耕田の畦畔に見られたウマノアシガタの越冬ロゼット。ロゼットのタイプは偽ロゼットで、葉柄と葉裏には開出毛が多く、葉面には光沢がある。 葉は多くは3〜5中裂するが、7裂するものや、切れ込みも深裂するもの、葉面に斑が入るもの、葉脈が赤紫色を帯びるものなど、個体による変異が大きい。
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●湿生植物 ウマノアシガタ
ヘビイチゴのロゼット
Fig.9 ヘビイチゴの越冬ロゼット
ウマノアシガタとともに畦畔に見られた越冬ロゼット。タイプは偽ロゼット。ロゼット葉の形は開花期の根生葉と同様であるが、小型化して葉面に光沢が出る。
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●湿生植物 ヘビイチゴ
ノアザミのロゼット
Fig.10 ノアザミのロゼット
畦畔に見られたノアザミのロゼット。タイプは偽ロゼット型。ロゼット葉の形は個体によって変異に富み、葉縁の切れ込みは羽状となるものから、粗い鋸歯状となるものまで様々である。 また、画像のように葉脈が白くなるものもあれば、緑色で目立たないものもある。
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●湿生植物 ノアザミ
アメリカオニアザミのロゼット
Fig.11 アメリカオニアザミのロゼット
最近になって里山でも見かけるようになってきたアメリカオニアザミのロゼット。草体は大型化し、多数の花をつけるため、種子生産量はかなりのものがある。 生産された種子には長い羽毛状の冠毛があり、風に乗って遠くまで飛散する。 ロゼット葉は奇数羽状裂葉で、葉面には開出毛が多く、鋸歯の先は鋭く硬いトゲとなる。ロゼットのタイプは偽ロゼット型。
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ハルジオンのロゼット
Fig.12 ハルジオンのロゼット
ヒメジョオンに似るが、冬期のロゼット葉では基部はしだいに狭くなって葉柄が不明瞭となる。また、葉縁の鋸歯は切れ込みが浅く、葉身は黄緑色であることが多い。 ハルジオンは多年草であるため、ロゼットの多くはヒメジョオンのものよりも大きい。ロゼットのタイプは偽ロゼット型。
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オオアレチノギクのロゼット
Fig.13 オオアレチノギクのロゼット
ロゼットも大きく、ハルジオンのロゼットとよく似る。葉柄はハルジオン同様不明瞭であるが、葉身は倒披針形で細長く、寝た軟毛が生え、鋸歯間の間隔はより広く、側脈の角度はより小さい。 また、葉身が完全に地表に接することは少なく、やや弧状に四方に広がっていることが多い。偽ロゼット型。
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ヒメムカシヨモギのロゼット
Fig.14 ヒメムカシヨモギのロゼット
開花期ではオオアレチノギクとの区別が難しい種であるが、越冬時のロゼットでは明らかに形態が異なる。 葉には明瞭な葉柄があり、葉身は楕円形で数対の円い鋸歯がある。中央脈から葉柄にかけて紫色を帯びることが多く、葉身は濃緑色。偽ロゼット型。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
スイバのロゼット
Fig.15 スイバのロゼット
スイバのロゼットはギシギシのものと非常によく似ているが、ギシギシの葉は厚味があって、葉脈間が盛り上がる傾向があり、葉縁は大きく波打ち、基部は丸みを帯びる。 スイバのロゼット葉は葉縁があまり波打たず、基部は矢じり状となる。両種とも新芽や新葉には酸味があって生食することができるが、シュウ酸を含むため多食は避けるべきである。偽ロゼット型。
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ヤマネコノメソウのロゼット
Fig.16 ヤマネコノメソウのロゼット
畦畔に見られたヤマネコノメソウのロゼット。開花時には根生葉が消失することが多い、一時ロゼット型である。畦畔では、同所的にカキドオシやツボクサが現われることが多く、葉形がよく似るが、匍匐茎はない、 葉に厚味があって葉脈が不明瞭といった点で区別できる。
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●湿生植物 ヤマネコノメソウ
冬期開花したキランソウ
Fig.17 冬期に開花したキランソウ
休耕田のやや乾いた場所に、冬期にもかかわらず紅葉したキランソウが不時開花していた。 キランソウはふつうこの時期には広倒披針形のロゼット葉を広げるが、葉の形も基部が長く伸びた長倒卵状で、まるで越冬時のムラサキサギゴケのような形態であった。 同じ時期のムラサキサキゴケも紅葉することが多く紛らわしいが、ムラサキサギゴケの葉裏はほとんど無毛であることで区別できる。キランソウの葉裏には毛が密生する。
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●関西の花 キランソウ(モモイロキランソウ含む)
コケオトギリの越冬態
Fig.18 コケオトギリの越冬態
コケオトギリが半ば紅葉しながら越冬していた。茎頂にみられる円い越冬芽は肉芽と呼ばれ、厳しい寒さに遭って茎が枯死しても残り、地表にちらばり、あるいは湛水状態であれば 水面上に浮かんで風に吹かれて移動して生育領域を広げる。肉芽は茎頂だけでなく、葉腋にも形成され、多数のクローン株を形成する準備ができている。 コケオトギリの分布域が広く、個体数も多いのは、この肉芽を形成する性質によると考えられる。
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●湿生植物 コケオトギリ
オオカサゴケ
Fig.19 オオカサゴケ
西宮市内の用水路脇の畦と斜面でオオカサゴケに出会った。オオカサゴケは最も大型で美しい蘚類で、これまで市内での生育は確認できていなかった。 自生地はこれまで数回訪れたことのある場所だったが、草深い夏〜秋にかけて調べたところであり、その頃は生長した草本に覆われて気付かなかった。 ほとんどの蘚類は冬期も枯れることがないので、冬期は蘚類の観察によい時期であるいえる。 画像のものは葉先がやや縮れているが、雨が降ると水分を吸収して伸び、雨後には美しい姿となる。
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