西宮の湿生・水生植物


 フィールド・メモ


このページはトップページの 「水辺から、そして緑から…」 で紹介した記事のバックナンバーに、一部画像を追加し加筆したものです。

 2011年 3月

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春植物ほか
つい先日までは気温が10℃前後をウロウロして長い間寒の戻りの状態が続いていましたが、序々に最高気温も上がりはじめ、ようやく春らしい日が来たように感じられます。
近場の里山の雑木林ではヤマウグイスカグラやクロモジ、キブシなどが開花しはじめ、山深い場所ではアブラチャンやダンコウバイも開花しはじめました。 これらの木々の花が咲き始めると、スプリング・エフェメラルと呼ばれる春植物達も次々に開花し始め、フィールドに出るのも楽しくなります。 今回はK先生とともに丹波地方の春植物の調査を行い、その際に撮影した花々の他、西宮市内の春に開花する花を交えて、その生育状況などを報告します。

ヤマウグイスカグラ
Fig.1 開花したヤマウグイスカグラ
西宮の里山の雑木林にはヤマウグイスカグラが多い。毛のないウグイスカグラや、腺毛が密生するミヤマウグイスカグラもあるが、それほど多くはない。 ヤマウグイスカグラは萼が無毛のものから腺毛が生えるものまで変異に富むが、新葉には毛が多く、他種と区別できる。
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ヒメスミレ
Fig.2 ヒメスミレ
社寺の玉石の敷かれた場所に小さなヒメスミレが開花していた。西宮市内の中〜南部にはアオイスミレは見られず、この地域のスミレの仲間ではヒメスミレが最も早く開花する。 葉裏が紫色を帯びるのが特徴である。
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●関西の花 ヒメスミレ
アオイスミレ
Fig.3 アオイスミレ
篠山市の小河川の土手で朝の斜光を浴びてアオイスミレが咲いていた。スミレの仲間のうちでは最も早くから開花する種で、兵庫県下では中〜北部に多い。 花茎は短く、地表に張り付いて開花しているように見える。常緑越冬し、前年の葉が濃緑色となって残っていることが多い。
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●関西の花 アオイスミレ
アマナ
Fig.4 アマナの群生
アオイスミレの咲いている土手の近くの畑地の畦でアマナが沢山開花していた。 日当たり良い場所では開花が見られるが、半日陰に生育しているものなどは花茎を上げず、葉だけを出しており、そういう場所が割りと多い。 そのような場所ではキバナノアマナも生育しているもとがあり、葉だけでは区別ができないため紛らわしい。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 アマナ
キバナノアマナ
Fig.5 キバナノアマナの花
オオマルバコンロンソウの調査に訪れた場所でキバナノアマナを見つけた。 この日はいろいろな場所でキバナノアマナが見つかったが、いずれも落葉広葉樹林下であり、春に陽光が当たり、初夏以降は日陰となるような場所であった。 そのような場所は湿度が保たれるため、生育を続けていくことができるのだろう。丹波地方にはキバナノアマナの自生地が比較的多いと推測される。
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●関西の花 キバナノアマナ
ヒロハノアマナ
Fig.6 ヒロハノアマナ
兵庫県下では危機的状況にある種で、シカによる食害と環境改変で減少し、丹波地方のみで数ヶ所生育が確認されているにすぎず、それぞれの場所での個体数も少ない。 現時点での生育環境の激変の可能性は少ないが、盗掘による減少が最も懸念される。 花はアマナによく似ているが、葉幅が広く、中央脈周辺が淡色となり、苞がふつう3個あることによって区別できる。 訪れた時間が悪かったのか、まだ時期的に早いのか、花は半開であった。
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●関西の花 ヒロハノアマナ
コオニタビラコ
Fig.7 コオニタビラコ
西宮市内の里山でもアマナの開花が始まっており、アマナの咲く畦の水田内ではコオニタビラコの開花も始まっていた。 他にはタネツケバナやスズメノカタビラが開花しているが、ムシクサやタガラシの開花ももうすぐである。
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●湿生植物 コオニタビラコ
ネコノメソウ
Fig.8 ネコノメソウ
日当たりのよい用水路内ではネコノメソウが開花していた。ネコノメソウは西宮市内では見られず、三田市北部から北に普通に見られる。
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●湿生植物 ネコノメソウ
コガネネコノメソウ
Fig.9 コガネネコノメソウ
渓流畔の日当たりよい場所ではコガネネコノメソウが開花していた。コガネネコノメソウは半日陰に多いが、そのような場所のものはまだ開花していなかった。 兵庫県下では割合局所的に生育しており、丹波地方でも生育地域が限られている。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 コガネネコノメソウ
タチネコノメソウ
Fig.10 タチネコノメソウ
コガネネコノメソウが生育する渓谷の日陰の水のしたたる岩上では、タチネコノメソウが満開だった。 満開といっても淡黄緑色の萼裂片が開いて、黄色い雄蕊が顔を出すだけの地味なものだ。この谷ではマルバコンロンソウやホソバコケシノブがあるような場所で見られた。
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●関西の花 タチネコノメソウ
ヤマエンゴサク
Fig.11 ヤマエンゴサク(広義)
篠山盆地ではまだ出芽したばかりであるが、氷上低地ではすでにヤマエンゴサクの開花が始まっていた。 氷上低地は篠山盆地よりも北に位置するが、標高60〜100m程度で、篠山盆地は標高180m以上となり、多くの春植物は氷上低地のほうが開花が多少早い。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 ヤマエンゴサク(広義)
セリバオウレン
Fig.12 多くの花茎を立ち上げたセリバオウレン
丹波地方はかつて丹波黄連の産地として知られており、その名残りなのかどこに行っても林縁や明るい林床にセリバオウレンが沢山見られる。 生育個体数が多いため、ときに盛大に花茎をあげているものも見られる。しかし、シカの多い場所では、花茎は全て食害され、足元に根生葉ばかりが目立つ。
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●関西の花 セリバオウレン
ユリワサビの花
Fig.13 ユリワサビの花
丹波市の社寺の裏山の斜面に多くのユリワサビが生育し、新鮮な花を開花していた。 以前、多くのユリワサビの花を撮っていたのだが、画像を保存していたハードディスクの物理崩壊によってデータが失われ、ページが作れないでいた。 今春の取材でようやくユリワサビのページが作成できた。
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●関西の花 ユリワサビ
オオマルバコンロンソウ
Fig.14 オオマルバコンロンソウ
オオマルバコンロンソウはその名の通り、マルバコンロンソウよりも草体は大きく、がっしりとしている。 画像のものは大株となったもので、頂小片の大きなものでは幅が3.8cmもあった。自生環境は明るい落葉広葉樹林下で、長らく人の手が入っていない場所である。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 オオマルバコンロンソウ
半開のユキワリイチゲ
Fig.15 半開のユキワリイチゲ
丹波市の社寺境内の斜面にユキワリイチゲが生育していた。しかし、日差しのほとんどないスギ植林地であるため、花茎を持つものは1個体だけで、しかも半開の状態だった。 ユキワリイチゲは陽光が充分に当たらないと開花せず、丹波地方では半開のままシーズンを終えるような場所も多く、開花の全く見られない集団も多い。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 ユキワリイチゲ
アズマイチゲ
Fig.16 アズマイチゲ
アズマイチゲの自生地も丹波地方では限られている。 ここは丹波市の放棄された果樹園の林床で、スギの植林地とかつての果樹園の境界付近の斜面に多くの個体が生育している。 スギ植林地にはシカ除けの柵がつくられており、それによってシカの食害からはまぬがれており、レンプクソウ、アマナsp.と混生し、画像にも両種が写っている。 アマナsp.は開花個体がなく、アマナなのかキバナノアマナなのか解らない。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 アズマイチゲ
キクザキイチゲ
Fig.17 キクザキイチゲ
丹波地方ではキクザキイチゲはアズマイチゲとともに出現することが多い。 Fig.16 でもキクザキイチゲは生育していたが、まだ蕾で開花していなかった。 画像のものは篠山市の自生地のもので、そばにはアズマイチゲの群生地がある。 花の色は画像よりも紫色が強く、その色は再現が難しい。
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●関西の花 キクザキイチゲ
ニリンソウ
Fig.18 開花しはじめたニリンソウ
ニリンソウの開花の走りである。 ニリンソウが開花しはじめるとスミレ類など多くの植物の開花も始まり、アズマイチゲ、キクザキイチゲなどのスプリング・エフェメラルの開花全盛期も終りを告げる。 萼裂片の外面は淡紅色を帯び、半開の状態でも、ある種の美しさを持つ花である。
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●関西の花 ニリンソウ
コチャルメルソウ
Fig.19 コチャルメルソウ
コチャルメルソウは渓流畔に見られる種であるが、ここでは社寺内を流れる細い水路の脇に群生していた。 花は地味であるが、拡大してみると魚の食べ後に残った骨格のようで面白い。 よく似たチャルメルソウも丹波地方では多いが、混生している所は少なく、ゆるやかな棲み分けが見られる。
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●関西の花 コチャルメルソウ
ミヤマカンスゲの開花
Fig.20 ミヤマカンスゲの開花
コチャルメルソウの脇ではミヤマカンスゲが開花していた。 ミヤマカンスゲはオクノカンスゲと同所的に見られることもあるが、ミヤマカンスゲの葉は黄緑色でやや軟らかく、横断面はV字に近いゆるやかなM字状で、 オクノカンスゲの葉は緑色で硬く、横断面はM字となることにより区別できる。
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●関西のスゲ ミヤマカンスゲ
ミヤマカタバミ
Fig.21 ミヤマカタバミ
日当たり良い渓流畔にミヤマカタバミの花が全開していた。 日当たりよく湿った場所でなければ平開して開花する姿は見られず、そのような条件が揃う場所は少なく、多くは半開しているものを見ることが多い。
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●関西の花 ミヤマカタバミ
ヤマルリソウ
Fig.22 ヤマルリソウ
ミヤマカタバミが開花しているすぐそばに、地表に張り付いたように開花しているヤマルリソウが見られた。 西宮市内でキュウリグサの開花が始まる頃、丹波地方の山間ではヤマルリソウの開花が始まり、春植物の探索のためのよい指標となる。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 ヤマルリソウ
出芽したエンレイソウ
Fig.23 出芽と同時に開花するエンレイソウ
エンレイソウは出芽すると同時に花茎を上げて開花する。 画像の右側の個体は雄蕊の葯から花粉がこぼれて、花被片の上に落ちているのが判る。 葉が伸びきって大きく広がった頃には果実期となるが、花被片は宿存するため、開花期間は長いように見える。 ユリ科にはそのような種群が見られ、春先に美しい花を開くショウジョウバカマの仲間は根生葉は常緑越冬しているが、気温が上がると花茎を上げてすぐに開花し、 花後も長く花被片が残る。
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●関西の花 エンレイソウ
カタクリの出芽
Fig.24 カタクリの出芽
篠山市内の山麓のクリ果樹園に新たにカタクリの生育を確認したが、自生する個体数は非常に少なく、花茎を持つ個体は1個体のみである。 出芽当初は、2枚の直立して出た根生葉に花茎が包まれている。 周辺は明るい林床となってヤマエンゴサクの群生やアマナsp.の生育が見られ、春植物の出現要因が揃っているがシカ除けの柵は壊れており、あたりにはシカの糞が多い。 カタクリはシカの好む草本であり食害によって消滅する可能性が極めて高い。
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●関西の花 カタクリ
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冬から春へ
凍った岩壁のオサシダ
Fig.1 凍った岩壁のオサシダ群落
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●関西の花 オサシダ
殖芽の続きと、春の花

あちこちで春の兆しが見られ、日当たり良い土手などではオオイヌノフグリやホトケノザ、タネツケバナなどが咲き、走りのツクシも出始めました。 しかし、少し山間を分け入るとまだまだ雪が残っている場所があったりで、春はまだ遠いといった感じです。 気温も上がって陽気が続いたかと思うと、寒の戻りで降雪を見たりと、なかなか安定しない春先特有の気候になっています。 今回のフィールド・メモはそのような冬と春がないまぜになった山野の様子が反映された内容となりました。
水辺の植物は未だに越冬状態で、山間の溜池などは未だに朝夕に氷結しているところもあります。 前回はいくつかの種の殖芽をレポートしましたが、今回はガガブタとイヌタヌキモの殖芽が見られたので掲載しました。 湿生植物はまだ萌芽しないか、越冬状態のものばかりです。 一方、丹波地方ではセツブンソウが開花して満開の場所もあり、ハンノキの仲間も地味な花を開花しています。 西宮北部の山間部ではマンサクが開花し、日当たり良い場所ではフキノトウが顔を出しています。 花の多い季節まで、あと少しです。

ガガブタ殖芽
Fig.2 ガガブタの殖芽
平野部の中栄養な溜池に大きなガガブタの殖芽が打ち寄せられていた。 かなり大株で栄養状態のよい個体から生じたものだろう。
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●浮葉植物 ガガブタ
イヌタヌキモ殖芽
Fig.3 水面上を浮遊するイヌタヌキモの殖芽
今年初頭は激しい冷え込みがあったためか、多くの溜池のイヌタヌキモの殖芽は沈降して見られなかったが、浮遊しているところが1ヵ所だけあった。 典型的なイヌタヌキモの殖芽と異なり、扁平な円形をしているため、殖芽葉を観察したが、イヌタヌキモの殖芽葉とあまり変わりがなかった。 なぜ、ここのものだけが沈降していないのか、今後も観察を続けていく必要があるだろう。
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●浮遊植物 イヌタヌキモ
オニビシ堅果
Fig.4 打ち寄せられた昨年のオニビシ果実
やや不栄養な溜池の縁に見られた。播磨地方の平野部では溜池の富栄養化に伴い、ヒシとオニビシは増加している傾向にあるようだ。 ヒシやオニビシの刺の先には返しのような小刺が並んでおり、これが水鳥の羽毛に絡んで、他の溜池や湖沼などに運ばれる。 ヒメビシの小さな刺の先に逆刺が並ぶが、富栄養な水質は好まず、ヒシやオニビシの繁殖力に負けてしまい、減少傾向にある。
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●浮葉植物 オニビシ
冬のトウカイコモウセンゴケ
Fig.5 越冬するトウカイコモウセンゴケ
溜池畔の粘土質土壌の湿地でトウカイコモウセンゴケが小さく赤いロゼットを形成して越冬していた。 枯野の中では小さくても赤い草体がよく目立つ。トウカイコモウセンゴケとともに小型の冬葉をつけて越冬しているのはヒメオトギリ。
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●湿生植物 トウカイコモウセンゴケ
越冬中のホソバノウナギツカミ
Fig.6 越冬中のホソバノウナギツカミ
管理放棄された溜池の水が抜けて、湿地化した場所にホソバノウナギツカミが越冬していた。 湿地の一画をマット状に覆っており、葉は小さな卵心形となり、夏秋に見られる葉とはかなり異なる。
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●湿生植物 ホソバノウナギツカミ
越冬中のネコノメソウ
Fig.7 越冬中のネコノメソウ
Fig.6 と同じ溜池跡湿地に生育しているもの。越冬中のネコノメソウは地表をはって成長を続ける。 ホソバノウナギツカミは日当たり良い水没しない場所に見られたが、ネコノメソウは日陰〜半日陰の細流内に点在している。
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●湿生植物 ネコノメソウ
丹波市のセツブンソウ
Fig.8 セツブンソウとツクシ
画像は2月8日に撮影した丹波市内にあるセツブンソウ自生地のもの。南西向きの草地土手で、日当たり良い場所であるためであろう、そこだけ春がやってきたようだった。 この場所ではセツブンソウの開花やツクシのほか、ヤマネコノメソウの開花も始まっていた。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 セツブンソウ
満開のセツブンソウ群落
Fig.9 満開のセツブンソウ群落
こちらは篠山市内の群落で撮影は2月26日である。丹波市と比べ標高は100〜150mほど標高が高いため、丹波市よりも開花期が多少遅れる。 ここではちょうど満開の状態で、足の踏み場もないほど高密度に開花していた。すぐそばにはミヤコアオイもあったが、まだ開花していなかった。
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フキノトウ
Fig.10 フキノトウ
西宮市内の山間渓流を遡行していくと、日当たり良い砂防ダム上の砂礫の堆積した場所で、フキノトウが顔を出していた。 まだ開花はしておらずつぼみの状態で、食べごろの状態である。顔を出している量は少なく、汁の実になる程度であろう。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
開花したカワラハンノキ
Fig.11 開花したカワラハンノキ
武田尾の河畔ではカワラハンノキが開花していた。カワラハンノキは兵庫県南部のある程度流量のある河川の川岸に散在している。 垂れ下がる雄花が枝の先端につき、続いて雌花がつく枝を分けるが、雌花の枝は直立するため、雌花群は雄花群よりも上に位置する。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 カワラハンノキ
開花したケヤマハンノキ
Fig.12 開花したケヤマハンノキ
Fig.10 のフキノトウのある砂防ダム内に多くのケヤマハンノキが生育し、こちらも開花していた。ケヤマハンノキの雌花の枝は曲がって下垂する。 そのため雄花とほぼ同じ高さに位置する。市内のサクラバハンノキの花を撮影したいのだが、花をつけるのは高木ばかりで手頃な高さの個体がなく、撮影の機会がない。
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●関西の花 ケヤマハンノキ
マンサク
Fig.13 満開のマンサク
六甲山系のみならず、全国的にマンサクの葉が壊死する病気の広がりが懸念されているが、今年は例年になく、沢山の花を開花させており少し安心している。 谷を遡ると、冬枯れの山腹のあちこちで盛大に開花しているマンサクが見られた。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 マンサク
ヤマグルマの果実と冬芽
Fig.14 ヤマグルマの果実と冬芽
マンサクやケヤマハンノキ、オサシダの生育する谷を遡っていくと、やがて渓流の縁にヤマグルマが現われる。 ヤマグルマは導管を持たず、仮導管をもつ原始的な被子植物で、花弁も萼もない花を初夏に咲かせる。 この時期見られるのは種子がほぼ出てしまった果実殻であるが、常緑であることと特徴的な花序を持つためよく目立つ。種子は4,5mm程度で、高木となるわりに非常に小さい。 ヤマグルマは古い時代に岩場や断崖などの条件の厳しい場所に逃げ込んで遺存した種であると考えられている。
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ウチワゴケ
Fig.15 社寺石垣のウチワゴケ
ウチワゴケは湿った岩壁などに着生するごく小型のシダ類で、私のよく出掛けるフィールドでは丹波地方でよく見かける。 西宮市内では武田尾周辺で点々と見られる。市内の中部ではこれまで発見できなかったが、自宅からほど近い社寺の石垣のベニシダの陰に発見することができた。 規模は小さなものだったが、社寺近くの沢を登っていくと、岩上にコウヤコケシノブとともに広い面積を覆った大きな集団を発見することができた。 市内中部の乾いた山によく生育しているものだと思う。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西のシダ ウチワゴケ


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