西宮の湿生・水生植物

兵庫県レッドデータブック 2010 の変更点について

「兵庫県レッドデータブック2010」が5月に発表された。
これで兵庫のRDBの再評価による改訂は2度目で、湿生・水生植物についてもいくつかの種のランクの変更がなされた。
以下に削除・追加・変更されたもののうち湿生・水生植物とみなされるものを抜粋してみた。
これらのランク変更は順次各種のページにも反映させていく予定です。

兵庫県RDB 2010年度版 湿生・水生植物編レッドリストへ
---------------------------------------------- 削除されたもの ------------------------------------------

 ヒナザサ、ヒメコヌカグサ、オニスゲ(自生地・個体数ともに多いため)
 イヌノヒゲモドキ(標本が別種と判断された)
ヒナザサ
ヒナザサ
新たに自生地が確認され、標本数も多いため削除。西宮市内では稀。
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ヒメコヌカグサ
ヒメコヌカグサ
新たに自生地が確認され、標本数も多いため削除。西宮市内では稀。
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オニスゲ
オニスゲ
新たに自生地が確認され、標本数も多いため削除。市内の自生地も多い。
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---------------------------------------------- 新たに追加されたもの ------------------------------------------

 ミズスギ:C
 ヒメタデ(アオヒメタデ含む):B
 ナガバノウナギツカミ:B
 サイコクヒメコウホネ:C
 ミズマツバ:C
 ウスゲチョウジタデ:C
 オトコゼリ:B
 オオアブノメ:A
 オオミズヒキモ:A
 ヒロハノエビモ:A
 イバラモ;C
 トリゲモ:要調査種
 ツクシガヤ:A
 コゴメカゼクサ:要調査種
 ホザキマスクサ:Ex
 サトヤマハリスゲ:要調査種
 カンエンガヤツリ:要調査種
 ヌマガヤツリ:要調査種
 ヤリハリイ:C
 ハタベカンガレイ:要調査種
 ロッカクイ:A(ヒメカンガレイに含まれた)
 ノグサ:C
 コキクモ:A


◎自生地の人為的な環境改変、管理放棄による自然遷移により減少したものはミズスギ、ミズマツバ、オトコゼリ、イバラモ、ノグサなど。
ミズスギ
ミズスギ
棚田の土の露出するような場所に生育。棚田の耕作放棄などにより減少している。西宮市内でも少ない。
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ミズマツバ
ミズマツバ
分布域は広いが、個体数は減少している。西宮市内では稀。
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オトコゼリ
オトコゼリ
休耕田の管理放棄による自然遷移が減少の主な原因と思われる。西宮市内では1ヶ所の休耕田のみで生育する。
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イバラモ
イバラモ
溜池の改修などの生育環境の改変や水質悪化により、急激に減少しつつある。
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ノグサ
ノグサ
半裸地状の湿った草地斜面に生育するが、遷移などによってそのような生育環境が減少し、自生地での個体数も減少傾向にある。市内の自生地も遷移が進みつつあり個体数が減少している。
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◎もともと自生地が少なく、新たに自生地が発見されないものはヒメタデ(アオヒメタデ含む)、ナガバノウナギツカミ、コゴメカゼクサなど。
アオヒメタデ
アオヒメタデ
もともと自生地が少なく、新たな自生地が発見されていない。兵庫県のものは花披が赤味を帯びないアオヒメタデである。
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ナガバノウナギツカミ
ナガバノウナギツカミ
もともと自生地が少なく、新たな自生地が発見されていない。
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◎新たに発見された種ではウスゲチョウジタデ、オオアブノメ、オオミズヒキモ、ヒロハノエビモ、ツクシガヤ、カンエンガヤツリ、コキクモが、
  新記載や再分類に基づいて認識された種ではサイコクヒメコウホネ、サトヤマハリスゲ、ヤリハリイ、ハタベカンガレイ、ロッカクイが追加された。
ウスゲチョウジタデ
ウスゲチョウジタデ
由良川水系の氾濫原周辺に自生地が点在することが確認された。
オオアブノメ
オオアブノメ
新たに自生地が確認されたが、自生地は1ヶ所のみである。
ヒロハノエビモ
ヒロハノエビモ
新たに自生地が発見された。県内では1ヵ所のみ。
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サイコクヒメコウホネ
サイコクヒメコウホネ
新たに記載された新分類群。かつてヒメコウホネ西日本型とされていたもの。
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サトヤマハリスゲ
サトヤマハリスゲ
新たに記載された新分類群。それまではハリガネスゲと混同されていた。標本数が少ないため要調査種とされた。
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ヤリハリイ
ヤリハリイ
ハリイの標本の中から標本が見出されたが、標本数は少ない。
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ハタベカンガレイ
ハタベカンガレイ
新たに記載された新分類群。標本のある地域が偏っており、今後の調査が必要とされる。
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ロッカクイ
ロッカクイ
新たに記載された新分類群。ヒメカンガレイとともに自生地、個体数ともに少なく、生育環境からも今後自生地が発見される可能性が少ない。
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ヌマガヤツリ
ヌマガヤツリ
標本庫に標本数が少なく、実態が不明であったため再調査が必要とされたもの。1水系の河川敷に点在していることが確認された。
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◎ホザキマスクサは戦前に採集された標本が2例あるのみで、以後まったく標本が採られていない。
ホザキマスクサ
ホザキマスクサ
戦前の標本が残されているのみで、近年自生が確認されていない。西宮市内に生育する集団は建設用土とともに移入されたものだと考えられる。
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---------------------------------------------- ランクが変更されたもの ------------------------------------------

 ヤチスギラン:A→Ex
 サンショウモ:B→A
 ヌカボタデ:B→C
 サデクサ:B→C
 コウホネ:C→A
 オグラコウホネ:A→B
 タコノアシ:B→C
 クリンソウ:A→B
 ハイハマボッス:A→Ex
 アサザ:A→B
 ミズネコノオ:A→B
 オギノツメ:B→C
 オグルマ:B→C
 オナモミ:A→Ex
 アギナシ:B→C
 マルミスブタ:A→B
 スブタ:B→C
 トチカガミ:B→A
 イトモ:C→B
 コバノヒルムシロ:A→B
 ムサシモ:A→Ex
 サガミトリゲモ:C→B
 イトトリゲモ:B→C
 ヤマトホシクサ:要調査種→C
 クロホシクサ:要調査種→Ex→A
 スズメノコビエ:C→B
 ミクリ:B→C
 クロタマガヤツリ:要調査種→A
 マツカサススキ;C→B
 シズイ:A→B
 フトイ・オオフトイ:C→要調査種

絶滅種(EX)とされた5種のうち、ヤチスギランは開発による自生地の消滅が原因で、あとの3種については古くに標本が採られて以降、 まったく採集例がないもので、かつて産した場所の詳細な経緯度もわかっていない。クロホシクサは絶滅とされていたが、自生地が新たに発見された。
多くの種が新たな自生地の発見でランクが下がっているが、このうちクリンソウはシカの食害をまぬかれて増えた結果である。
トチカガミやイトモのランクが上がったのは平野部の溜池の開発や水質汚染、埋め立てによるもの、マツカサススキはそれに加えて河川改修工事により減少したもの。 またコウホネがCからAとなったのは、多くの溜池で生育しているものが過去に植栽されたものと判明したためである。
フトイが要調査種となったのは、標本中に形質のばらつきが見られ、フトイとするかオオフトイとするか保留されるものが見られ、さらに自生地の確認が必要なためである。

◎危惧ランクが上昇したもの。サンショウモ、コウホネ、トチカガミ、イトモ、サガミトリゲモ(ヒロハトリゲモ)、マツカサススキ、スズメノコビエ。
サンショウモ
サンショウモ
危惧ランクが上昇。もともと消長の激しい種で、過去の記録地では消滅し、新たに2地域で確認されたのみである。
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コウホネ
コウホネ
危惧ランクが大幅に上昇。県内の溜池でよく見かけるが、実は大半が過去に薬用または観賞用として植栽されたもので、もとから自生していたと見られる場所はわずかに数ヶ所しかないという。
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トチカガミ
トチカガミ
危惧ランクが上昇。平野部の溜池の改修、埋め立てによって減少。西宮市内の甲陽園大池からの記録があるが、現在では見られない。
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イトモ
イトモ
危惧ランクが上昇。溜池の改修、埋め立てによって減少。市内2ヶ所の自生地のうち、1ヵ所は土砂の流入によって埋まり絶滅寸前である。
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ヒロハトリゲモ
ヒロハトリゲモ (サガミトリゲモ)
危惧ランクが上昇。溜池の改修、埋め立て、棚田の耕作放棄によって減少。市内では数ヶ所の棚田の水路内で生育する。
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マツカサススキ
マツカサススキ
危惧ランクが上昇。溜池の改修や埋め立て、河川の改修によって減少。
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スズメノコビエ
スズメノコビエ
危惧ランクが上昇。溜池の改修、埋め立てによって減少。もともと自生地も少なく、目立たない植物であるため認知度が低く注意が必要である。
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◎危惧ランクが緩和されたもの。ヌカボタデ、サデクサ、オグラコウホネ、タコノアシ、クリンソウ、アサザ、ミズネコノオ、オギノツメ、オグルマ、アギナシ、マルミスブタ、 スブタ、コバノヒルムシロ、イトトリゲモ、ミクリ、シズイ。
ヌカボタデ
ヌカボタデ
危惧ランクがダウン。新たに自生地が多数発見された。
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サデクサ
サデクサ
危惧ランクがダウン。新たに多数の自生地が確認された。
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オグラコウホネ
オグラコウホネ
危惧ランクがダウン。詳細な調査が行われ自生地域の個体数が多いと判明。
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タコノアシ
タコノアシ
危惧ランクがダウン。新たに多数の自生地が確認された。
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クリンソウ
クリンソウ
危惧ランクがダウン。シカの不嗜好植物であるため食害からまぬかれ、加えて花が美しいため保護活動が盛んで、各所で増加傾向にある。
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アサザ
アサザ
危惧ランクがダウン。新たに自生地が確認されたほか、保護活動が定着して個体数は安定しつつある。
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ミズネコノオ
ミズネコノオ
危惧ランクがダウン。新たに自生地が多数確認され、生育規模も大きい。
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オギノツメ
オギノツメ
危惧ランクがダウン。新たに自生地が多数確認され、生育規模も大きい。
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オグルマ
オグルマ
危惧ランクがダウン。新たに多数の自生地が確認された。
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アギナシ
アギナシ
危惧ランクがダウン。新たに多数の自生地が確認された。西宮市内では数株が残存するのみで絶滅寸前である。
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スブタ
スブタ
危惧ランクがダウン。新たに多数の自生地が確認された。
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コバノヒルムシロ
コバノヒルムシロ
危惧ランクがダウン。新たに複数の自生地が確認された。
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イトトリゲモ
イトトリゲモ
危惧ランクがダウン。新たに自生地が多数確認された。
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ミクリ
ミクリ
危惧ランクがダウン。新たに多数の自生地が確認された。
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シズイ
シズイ
危惧ランクがダウン。新たに多数の自生地が確認された。西宮市内では数ヶ所で見られ、生育規模や個体数は安定している。
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◎要調査種から変更されたもの。ヤマトホシクサ、クロホシクサ、クロタマガヤツリ。
  要調査種となったもの。フトイ。
クロホシクサ
クロホシクサ
過去に採集された地区での自生が確認できなかったが、2011年に新たな自生地を確認した。絶滅種となっていたが、Aランクに復帰した。
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フトイ・オオフトイ
フトイ・オオフトイ
要調査種に移行。県内産の標本の再検討が必要となったもの。県内産の標本はフトイとオオフトイに分けられ、その後の現地調査も必要となる。
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  兵庫県RDB 2010年度版 湿生・水生植物編レッドリストへ

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植物全体でのリストや変更点などについては以下の公式サイトを参照してください。

兵庫の貴重な自然 兵庫県レッドデータブック2010 (植物・植物群落)




最終更新日:15th.Nov.2013

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