西宮の湿生・水生植物


 フィールド・メモ


このページはトップページの 「水辺から、そして緑から…」 で紹介した記事のバックナンバーに、一部画像を追加し加筆したものです。

 2011年 9月

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水中の水草達
私の持っている防水コンデジは細かな設定があまりできないオモチャのようなものだが、画質にこだわらなければ水中の様子を探るには充分なものだ。 暑さにめげずウェーダーを穿いて溜池に防水コンデジとともに入ると、まるでメダカやカエルが見ているような水中の視界を与えられる。 水面ぎりぎりの水上の画像と水中の画像を合成すればミズスマシが見ているような水面上と水面下の世界をも見ることができる。 さらに工夫を重ねることで、水生植物が生育するリアルな環境を多少でも捉えることができるような気がする。
今回は湿生・水生植物の自生地の多くを、兵庫水辺ネットワークのOさん、Sさんにご案内いただきました。お世話になったお二方に感謝申し上げます。

浅水域の広がる中栄養な溜池
Fig.1 浅水域の広がる中栄養な溜池
中栄養な溜池の浅瀬に豊富な植生が見られた。 画像に見えるガガブタ、ヒルムシロ、ウキシバ、ノタヌキモのほか、タチモ、セキショウモ、カンガレイ、クログワイ、ミズニラなど多くの水生植物が生育している。
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浅水域の水中の様子
Fig.2 浅水域の水中の様子
Fig.1の水中の光景。ヒルムシロが浮葉を次々にあげつつあり、その根元には泥中に草体下部が埋もれたノタヌキモが見える。 後方にはハリイの仲間が生育し、水底にはまばらにタチモが生育している。
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水面下のガガブタ
Fig.3 水面下のガガブタ
伸びた水中茎に長さ1〜2cmの葉柄を持つ浮葉をつけ、その基部に束状の花序をつける。花序には数個〜10数個の花がつき、つぼみが成熟してくると花柄が上向きに曲がり開花時に水面上に出る。 浮葉の裏面は紫色を帯びるものが多く、水中茎の先に新たに形成された浮葉の葉柄基部には花序となる突起が見える。 ガガブタは多数の花を咲かせるが結実は稀で、主に葉柄基部に形成される殖芽によって栄養繁殖する。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●浮葉植物 ガガブタ
ノタヌキモ
Fig.4 丘陵溜池のノタヌキモ
水面すれすれの水面上の画像と、水面直下の画像を合成したもの。陸地から撮影した画像よりも、その生態を明瞭に捉えることができる。 花後の未熟な刮ハがついている花茎部分は曲がって水中に没するが、開花中の花がつく部分は水面上に直立する。 このため、刮ハは水面上に見られることはない。また、花後の刮ハの柄は下向きに曲がる。結実率、発芽率ともに高く、種子は低温期を必要とせず、水温が高ければ休眠することなく発芽する。
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●浮遊植物 ノタヌキモ
水抜きされる溜池
Fig.5 水抜きされる溜池
丘陵部に連なる溜池群が上から順に水抜きされつつあった。 どの池にもサイコクヒメコウホネの群生が見られ、水位の下がった溜池では浮葉の長い葉柄が水面に横たわり、沈水葉が水面近くに現れていた。
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●浮葉植物 サイコクヒメコウホネ
増水した溜池の水中
Fig.6 増水した溜池の水中
Fig.5直下の溜池ではFig.5からの水抜きされた水が流入して水位があがり、サイコクヒメコウホネの太い葉柄を持った気中葉や花が水没していた。 周辺には浅水域の泥上に生育していたと見られる小型のイヌタヌキモとヒメタヌキモが水中に立ち上がっていた。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●浮遊植物 イヌタヌキモ  ●浮遊植物 ヒメタヌキモ
谷津田減反部の水田雑草群落
Fig.7 谷津田減反部の水田雑草群落
谷津の溜池直下の棚田の減反部に素晴らしい水田雑草群落が見られた。 画像では抽水状態のコナギ、アゼナ、アメリカアゼナ、アゼトウガラシ、キクモが、沈水状態のスブタ、ヤナギスブタ、ミゾハコベが見える。 このほかに、ミズオオバコ、シソクサ、アブノメ、ヒロハトリゲモが生育していた。
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自然度の高い水田
Fig.8 自然度の高い水田
丘陵から沖積地へと広がる扇状地状の緩斜面に圃場整備された水田が広がっていたが、その水田の素掘りの排水路周辺に多くの水田雑草が生育していた。 Fig.7とは離れた場所であるが、生育していた種はミズオオバコ、スブタ、ヤナギスブタ、ヒロハトリゲモと、その構成種はよく似ている。 隣の水田では多数のミズマツバが生育していた。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
素掘り水路内のヒロハトリゲモとヤナギスブタ
Fig.9 素掘り水路内のヒロハトリゲモとヤナギスブタ
Fig.8の水路内を撮影したもので、ヒロハトリゲモ、ヤナギスブタのほか、スブタも少しだけ写っている。 兵庫県の南部では水田や溜池にホッスモは多く見られるが、ヒロハトリゲモやイトトリゲモはやや稀である。
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●沈水植物 ヒロハトリゲモ   ●沈水植物 ヤナギスブタ
素掘り水路内のホシクサ、サワトウガラシ、イトトリゲモ
Fig.10 素掘り水路内のホシクサ、サワトウガラシ、イトトリゲモなど
Fig.8,9とは異なる、山際の水田の素掘り水路内で見られた光景である。 水路内はほぼイトトリゲモが密生して占拠されているが、イトトリゲモのまばらな場所で沈水状態のホシクサやサワトウガラシ、キカシグサ、チョウジタデなどが生育していた。 ここでは水田内にミズマツバも見られた。
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●湿生植物 ホシクサ  ●湿生植物 サワトウガラシ
●沈水植物 イトトリゲモ  ●湿生植物 キカシグサ
水田のスブタ
Fig.11 水田のスブタ
水田内に生育していたやや大きな株が花茎を上げて開花していた。 スブタは水田で見かけることが多く、スブタといえばこのような姿が一般にイメージされるが、溜池に生育するものはまるで別種のような姿となる。
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●沈水植物 スブタ
溜池に生育するスブタ
Fig.12 溜池に生育するスブタ
溜池に生育するものは水深にあわせて葉が長く伸びて、水面に達した葉は浮葉状に水面にたなびく。ここでは葉の長さは50cmに達していた。 近くの水田に生育するものは開花中で、果実を形成しているものもあったが、ここのものはまだ花茎が全く上がっていなかった。
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水路内のミゾハコベ
Fig.13 水路内のミゾハコベ
コガムシやマツモムシの多い水田の素掘りの水路にミゾハコベがイトトリゲモに混じって美しい沈水形となって生育していた。 ミゾハコベは水中でも自家受粉するためか、各葉腋には成熟しつつある果実をつけている。 画像に写った多くのマツモムシは、まるで水中を飛んでいるかのように見える。
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●湿生植物 ミゾハコベ
水中で形成されるジュンサイの果実
Fig.14 水中で形成されるジュンサイの果実
ジュンサイの開花期は6月末から7月頭の梅雨の時期に重なり、目にする機会は少ないかもしれない。 今回、ジュンサイの生育する溜池の水中画像を撮影してみたが、水中で形成された果実が案外多いということに気が付いた。 画像では下を向いた花茎についた果実が5つ見えている。1本の水中茎に思ったよりも多くの花をつけるようである。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●浮葉植物 ジュンサイ
ヒメビシ
Fig.15 ヒメビシ
村落の小さな何の変哲もない溜池にヒメビシが群生し開花していた。 ヒメビシは全国的に稀な種であるが兵庫県内でも自生地は数ヵ所しかなく、兵庫県版RDBではAランクとされている。 草体はふつうのヒシよりもかなり小さく、花も小型で淡紅色を帯びる。 ヒメビシが生育していた多くの溜池では富栄養化などの水質の悪化でヒシやオニビシにとって変わられてしまったという。
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●浮葉植物 ヒメビシ
結実したヒメビシ
Fig.16 水中で結実するヒメビシ
ヒメビシはヒシよりも開花開始期がはやく、自生地では水中に多くの果実が形成されつつあった。 水中画像のものは成熟途上のもので、右下のふつうイメージされるヒメビシの果実とはまだほど遠い形状をしている。
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溜池畔の水中に群生するマルバオモダカ
Fig.17 溜池畔の水中に群生するマルバオモダカ
自然度の高い丘陵部にある溜池畔に浮葉をあげた群落が見られた。 以前、湿地内の水路に生育する開花中のものを掲載したが、ここでは水位が下がらないためか花茎はおろか抽水葉も見られず、年内に花茎を上げることはないのかもしれない。 あるいは花茎を上げても、殖芽しかつけないのかもしれない。
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●浮葉〜抽水植物 マルバオモダカ
マルバオモダカの水中の様子
Fig.18 マルバオモダカの水中の様子
Fig.17の右端に見える個体の水中画像。 浮葉状態のマルバオモダカの草体は柄を持った浮葉が束生するという単純なもので、水中の画像を撮影してもとりたてていうほどのこともないが、 周囲にはノタヌキモと沈水状態の小型化したヌマトラノオが見えており、草体の雰囲気や生育環境の一端は伺えるかもしれない。
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 ------- 写真帳 2011・9・17 - 19 -----------------------------------------------------------------------------------------
溜池畔のオオホシクサ群落
Fig.19 溜池畔のオオホシクサ群落
中栄養な溜池畔に大群生していた。
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●湿生植物 オオホシクサ 
溜池畔のホシクサ
Fig.20 溜池畔のホシクサ
オオホシクサ群落の合間にまばらに生育していた。
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●湿生植物 ホシクサ
カガシラ
Fig.21 カガシラ
溜池畔に広がる貧栄養な湿原中に非常に多くの個体が生育していた。
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●湿生植物 カガシラ
開花しはじめたナガボノワレモコウ
Fig.22 開花しはじめたナガボノワレモコウ
溜池土堤に生育。紅花品も少数混生していた。
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●湿生植物 ナガボノワレモコウ
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水生・湿生植物のメイン・シーズン
8月終わりから9月にかけての晩夏〜初秋にかけては低地から高山にいたる各所で、多くの水生・湿生植物の開花が始まります。 どの草花も例年よりも開花が遅れていますが、水田の水管理は例年とほぼ変わらず、ミスオオバコヤやヤナギスブタ、トリゲモ類などの沈水植物は開花・結実できぬまま 水抜きされた水田で乾いてしまっているのを見かけます。 溜池では8月終わり頃にはかなり水位が下がっていましたが、9月頭に長期にわたる豪雨をもたらした台風によって、いずれの地域の溜池も満水状態となってしまいました。 山間の谷池では土砂の流入が激しく、台風が去った1週間後でも濁りがとれず、水が乳白色を帯びていて、水際には切れやすいホソバミズヒキモ、イトモ、トリゲモ類が吹き寄せられていました。 沈水状態の植物の生態をより明確に捉えようと価格の落ちた防水コンデジを手に入れましたが、溜池の水は濁り、なかなか活躍の機会がありません。

開花中のイトタヌキモ
Fig.1 開花中のイトタヌキモ
西播磨の溜池畔の湿原の細流中にイトタヌキモが生育し、花茎を上げて開花していた。 イトタヌキモは自生地が限られる上、開発行為や水質悪化による減少傾向が強く、環境省絶滅危惧U類(VU)、兵庫県版RDBではAランクとされている。 自生が見られるのは比較的古い溜池で、小さな溜池にはほとんど見られず、軟泥の堆積した湧水の滲出する浅瀬を持ち、減水期にも表水のある箇所にのみ見られる。 花はよく結実し、有性生殖と切れ藻による栄養繁殖によって生育領域を広げる。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●浮遊植物 イトタヌキモ
浮遊するイトタヌキモ
Fig.2 浮遊するイトタヌキモ
イトタヌキモの自生地では池畔で浮遊する草体も見られる。浮遊する草体では開花するものは見られない。 イトタヌキモの草体は繊細で、それに比べ花茎は太くしっかりしており、浮遊する草体では花茎を支えることができないためだろう。 開花が見られるのは泥中に草体の多くが埋もれたものや、干上がった池畔の表水のある場所で折り重なったものである。 これまでイトタヌキモを見かけたのはガガブタ、ノタヌキモ、セキショウモが生育するような中栄養な溜池で、溜池畔には湧水による貧栄養湿地があるようなところであった。
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開花したノタヌキモ
Fig.3 開花したノタヌキモ
ノタヌキモは環境省絶滅危惧U類となっているが、兵庫県下ではイヌタヌキモとともに普通に見られ、イヌタヌキモが貧栄養〜やや中栄養、腐食栄養質な溜池に見られるのに対して、 中栄養〜やや富栄養な溜池に見られる。 ノタヌキモが生育するような溜池は平野部に多く、このような溜池は都市化にともなう開発行為や水質悪化によって各地で極端に減少し、都市化が進んだ西宮市では見られない。 かつてはナガバノウナギツカミが記録されたように、平野部の溜池にトチカガミなどとともに生育していたのであろうが、開発により絶滅してしまったのであろう。 ノタヌキモは1年草で、花茎に次々に花をつけ、結実率・種子の発芽率も高い。 この画像は台風来襲前に撮影したものだが、台風が去った1週間後に同じ場所を訪れたが水没しているような花茎はなく、水域が攪乱に遭ってもすぐに花茎を水面上に上げる適応力があるのだろう。 1年草なだけにどうしても種子の結実が生存を左右するため、花茎に多くの可塑性の幅を持たせたのであろう。
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●浮遊植物 ノタヌキモ
水田型イヌタヌキモ
Fig.4 水田型イヌタヌキモ
イヌタヌキモは西宮市内の山間の貧栄養な溜池にふつうに見られるが、水田に生育するものは少なく、2か所で確認したにすぎない。 画像のものは上部に溜池のある山間棚田の素掘りの用水路内に生育しているものだが、上部の溜池にはイヌタヌキモは見られず、用水路から水田にかけてにのみ生育している。 用水路内にはホッスモやヒロハトリゲモ、ミズオオオバコなども生育するが、消長があり、イヌタヌキモも年によっては確認できないこともある。 水田に生育するものは葉腋から側枝をよく出して、その先に小さな殖芽をつくる。 溜池とちがって水の増減が顕著で水分条件の厳しい環境下であるため、小さな殖芽を沢山つくって絶滅のリスクを軽減しているのだろう。 この他、溜池に生育するもののうち、葉面に不定芽をつくって新植物を生じる集団があり、様々な繁殖形態を持っている。
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●浮遊植物 イヌタヌキモ
ヒメタヌキモ
Fig.5 ヒメタヌキモ
西日本ではヒメタヌキモはもともと自生地が限られる上、生育環境の悪化により各地で減少傾向にあり、環境省準絶滅危惧(NT)、兵庫県ではRDB Bランクとされている。 自生地ではイヌタヌキモとともに混生していることが多く、イヌタヌキモは開放水面に浮遊していることが多いが、ヒメタヌキモは浅瀬の泥中に草体の一部を固着させて、 水底から斜上して伸びているものが多く、頂芽がクルリと巻いているのが特徴である。 画像の自生地でもイヌタヌキモと混生していたが、その個体数はイヌタヌキモよりもはるかに多く、岸近くの浅瀬でミズユキノシタ、オオハリイ沈水形、ホッスモ、ミズオオバコ、 ヒツジグサなどとともに生育していた。
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●浮遊植物 ヒメタヌキモ
イトモとホッスモ
Fig.6 溜池のイトモとホッスモ
ヒメタヌキモの生育している溜池ではホッスモとイトモも生育していた。 両種の群落はヒメタヌキモが生育する場所よりも少し深い水深50cm前後で見られ、ホッスモのほうがやや優勢だった。 兵庫県下ではトリゲモ類の中ではホッスモが最もふつうに見られ、貧栄養な溜池から山間や丘陵部の水田にまで生育しており、見かける機会が多く、この日も3か所で見かけた。 イトモは兵庫県版RDBではBランクとされており、減少傾向にあるが、摂津から丹波にかけての兵庫県東部では山間の溜池で比較的目にする機会も多い。 イトモは浮葉のないホソバミズヒキモに似るが、葉幅が明らかにホソバミズヒキモよりも広く、見慣れれば簡単に区別できる。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●沈水植物 イトモ  ●沈水植物 ホッスモ
ミズオオバコ
Fig.7 ミズオオバコ
西宮市内にはミズオオバコが安定して生育する棚田が3か所あり、今年も成熟しかけたイネの間で開花が見られた。 今年はミズオオバコも開花が遅れており、イネの刈取りのために水抜きされた田では開花まで至らずに干乾びているものが多いが、ミズオオバコは土中にシードバンクを形成することが知られており、 1年くらい種子ができずとも、新たな攪乱によって目覚めた種子が発芽するため、来年も例年どおりの気候であれば沢山の開花が見られるだろう。 ミズオオバコはまだ開花が見れたが、同じ水田に生育するヤナギスブタは、全く開花しないまま枯死していた。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●沈水植物 ミズオオバコ
湧水河川のセンニンモ
Fig.8 湧水河川のセンニンモ
琵琶湖の内湖に流入する湧水河川に生育しているものである。 入手した防水コンデジのテスト撮影をした際のもので、泥中を横走する根茎からまばらに水中茎を上げている様子がよくわかる。 防水カメラを使ってみて有効だと思われるのは、水中での自生状況や、水底での他種との混生する様子などがよく把握できることである。 また水面で浮葉を広げる浮葉植物の水中での立体的な分枝の様子も捉えることもできるかと思われる。 当たり前のことだが、透明度の低い溜池での撮影は難しく、なるべく泥を巻き上げないように被写体に近づくのに苦労する。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●沈水植物 センニンモ
ドジョウツナギ沈水形
Fig.9 ドジョウツナギ沈水形
ドジョウツナギは水田雑草として知られるが、水路などの流水域で生育するものはシーズンのはじめや若い個体では沈水形となる。 画像のものはFig.8と同じ湧水河川に生育しているもので、同じ河川内にはナガエミクリの沈水形も生育しており、ナガエミクリよりも細い葉を持った個体があったため、 手にとってみると横走根茎はなく、葉が密に叢生したドジョウツナギであった。 周辺を調べると大きくなった個体も見られ、水面上に気中葉とともに有花茎を上げているものも見られた。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●湿生植物 ドジョウツナギ 
ミズハコベ沈水形
Fig.10 ミズハコベ沈水形
ミズハコベは秋から春にかけて湿田や用水路などで生育し、夏場は見られないことが多いが、水温がほぼ一定する湧水河川では通年生育しているのが見られる。 流水域では草体は流れの圧力によって水没するため、葉は沈水葉となるが、湧水の湧く泉などの止水域では水面に達した茎頂には広倒卵形の浮葉をつける。 また秋から春にかけての水没していない草体では長楕円形の気中葉をつける。 湧水河川のような透明度の高い場所に生育するものは、水中でも盛んに光合成を行い、葉面に気泡をつけて涼しげである。
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●湿生植物 ミズハコベ
サギソウ群落
Fig.11 サギソウ群落
たまたま訪れた場所の生育条件がどこも良かっただけなのかもしれないが、今年はサギソウの開花個体が多く、当たり年なのではないかと思う。 ここでは例年の2倍近くの開花個体が見られた。 兵庫県下では自生地が比較的多く、兵庫県版RDBではCランクとなっており、その気になれば1日に多くの自生地を見て廻ることも可能であり、 同じCランクとなっているラン科のトキソウよりも自生地ははるかに多いと感じる。 とはいえ、サギソウは湿原を象徴する花であり、この花とともにその生育場所である湿原が末永く残っていくことを願わずにはおれない。
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●湿生植物 サギソウ
ミズトンボの花
Fig.12 ミズトンボの花
ミズトンボは兵庫県下では播磨地方の溜池畔の湿原や湿地化した経年休耕田で見かけることが多く、西宮市内からも過去の記録があるが、現在では確認できず絶滅したと思われる。 種名にトンボの名がついているが、花はトンボというよりも黄褐色の部分が眼のように見え、異星人や妖精といったかんじで、一度仔細に観察すると二度と間違えることはない。 眼のように見える黄褐色の部分は蕊柱の花粉塊の収まっている葯で、その先には球形の粘着体があり、訪花した昆虫に引っ付いて、花粉塊を他の花へと運ぶ仕組みとなっている。
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●湿生植物 ミズトンボ
ゴマクサ
Fig.13 ゴマクサ
ゴマクサは湿地や湿原周辺の湿った草地に生育する1年草で、周囲に湿原を伴う古い大きな溜池畔に、コシンジュガヤやミカワシンジュガヤを伴ってイヌノハナヒゲ群落中に出現することが多い。 兵庫県下では自生地が県南部の神戸市から播磨地方に偏在し、他の地域では全く見られず、兵庫県版RDBではBランクとなっている。 1年草であるにも関わらず草体は大きいうえに、葉が小さいため、ママコナ、コシオガマ、ヒキヨモギ、クチナシグサなどのゴマノハグサ科草本と同様、半寄生植物とされている。 自生地ではイネ科のヌマガヤ、カモノハシ、トダシバ、チガヤやカヤツリグサ科のイヌノハナヒゲなどの多年草が見られ、宿主はこれらのうちのどれかだろう。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●湿生植物 ゴマクサ
タヌキマメ
Fig.14 タヌキマメ
タヌキマメは西宮市内で見たことはないが、播磨地方では湿地周辺の湿った草地に、丹波地方では圃場整備の行き届いた乾いた土手に突然出現し、 どういった環境を最も好むのか未だによく解らず、湿生植物のページに入れるかどうか迷っている種である。 乾湿関わらず、草原環境を好む種であるとはいえよう。 豆果は褐色を帯びた毛に覆われた萼に包まれて花序に垂れ下がり、タヌキという名称がピッタリで、一度見れば忘れることはない。 花の色も鮮やかで、タヌキマメが好だという人も多い。 (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●湿生植物 タヌキマメ
アイナエ
Fig.15 アイナエ
アイナエは禿山や崩壊地、丘陵の滞水しがちの貧栄養な粘土質土壌に生育する小型の1年草で、貧栄養湿地の周辺にはそのような環境も多く、湿生植物と見られがちだが、かなり乾いた場所にも生育している。 アイナエが生育する場所では同様な環境を好むイトハナビテンツキ、イガクサ、コモウセンゴケ、イシモチソウ、ノグサ、イトイヌノハナヒゲ、イヌノハナヒゲ、ウシクサ、アリノトウグサなどが出現することが多く、 ヤマイが繁茂するような場所には見られない。
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●湿生植物 アイナエ
イトテンツキ
Fig.16 イトテンツキ
禿山の麓の農道脇の小湿地にイトテンツキが生育していた。 イトテンツキは同様な場所によく見られるイトハナビテンツキや海岸に生育するハタガヤとよく似ているが、草体はより小型で、イトハナビテンツキのように花序枝が出ることはなく、 小穂は頭状に集まり、ハタガヤのように鱗片の先が芒状に反曲することはない。 イトハナビテンツキは兵庫県下では比較的よく見られるが、イトテンツキは非常に少ない。 ここではイトハナビテンツキとともに生育しており、同所的にアイナエ、イシモチソウ、アリノトウグサ、イガクサ、ノグサが見られた。
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●湿生植物 イトテンツキ
イガクサ
Fig.17 イガクサ
アイナエやイトテンツキの生育する禿山の麓の小湿地に生育していた。 イガクサはイヌノハナヒゲやミカヅキグサなどとともにミカヅキグサ属とされるが、比較的似たものの多い同属の他種に比べると、イガクサは小穂が頭状に集まり区別は容易である。 生育場所は岩山や禿山の多少とも地下水のにじむ粘土質の半裸地状の草地や、湿地周辺の草丈の低い草地、崩壊地の小湿地などである。 (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●湿生植物 イガクサ
イヌハギ
Fig.18 イヌハギ
イヌハギは河川敷や海岸近くの草地に生育するとされるが、ここでは溜池の土堤の一画に群生していた。 この溜池土堤ではマメ科草本が非常に多く、メドハギが一面に群生しており、他にネコハギ、ツルマメ、ノアズキなどがよく繁茂していた。 イヌハギは各地で減少傾向にあるようで、環境省準絶滅危惧(NT)、兵庫県でもRDB Cランクとなっており、なかなか見かける機会の少ない種である。
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 ------- 写真帳 2011・8・28 - 9・14 -----------------------------------------------------------------------------------------
サギソウとゴマクサ
Fig.17 湿原に咲くサギソウとゴマクサ
イヌノハナヒゲ、コシンジュガヤ群落中に点在。
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●湿生植物 サギソウ  ●湿生植物 ゴマクサ
休耕田のミズトンボ群落
Fig.18 休耕田のミズトンボ群落
1000株以上の個体が生育する群生地である。
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●湿生植物 ミズトンボ
開花したアサザ
Fig.19 開花したアサザ
西播磨で発見した開花が見られる集団。
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●浮葉植物 アサザ
溜池の浮葉植物群落
Fig.20 溜池の浮葉植物群落
ヒツジグサ、ヒルムシロ、ホソバミズヒキモ。底にはタチモ、フラスコモsp.が密生。
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●浮葉植物 ヒツジグサ  ●浮葉植物 ヒルムシロ
●浮葉植物 ホソバミズヒキモ
ヒメタヌキモの生育する浅瀬
Fig.21 ヒメタヌキモの生育する浅瀬
オオハリイが繁茂し、ヒツジグサ、ミズユキノシタ、ヤナギタデが見える。
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●浮遊植物 ヒメタヌキモ  ●浮葉植物 ヒツジグサ
●湿生植物 ミズユキノシタ  ●湿生植物 オオハリイ
花穂を上げたヒルムシロ
Fig.22 花穂を上げたヒルムシロ
水面から撮影。
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●浮葉植物 ヒルムシロ
ヒナザサ-エゾハリイ群落
Fig.23 ヒナザサ-エゾハリイ群落
丹波の溜池畔にて。周辺にはミズユキノシタ、ミズニラが多い。
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●湿生植物 ヒナザサ  ●湿生植物 エゾハリイ
ミゾカクシ群落
Fig.24 群生して開花するミゾカクシ
中栄養な溜池畔で群生していた。
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●湿生植物 ミゾカクシ
ナガバオモダカ
Fig.25 溜池に植栽されたナガバオモダカ
山間溜池にオオフサモ、ポンテデリアとともに移入されていた。
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イトイヌノヒゲ
Fig.26 イトイヌノヒゲ
ホシクサ科草本では最も開花が早く、花は繊細である。
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●湿生植物 イトイヌノヒゲ
ヒナノカンザシ
Fig.27 ヒナノカンザシの群生
溜池直下の小湿地にサギソウ、モウセンゴケとともに生育。
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●湿生植物 ヒナノカンザシ
溜池土堤の草原植物
Fig.28 溜池土堤の草原植物
キキョウ、コガンピ、オミナエシ、ワレモコウが開花し賑やかであった。
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●関西の花 キキョウ  ●関西の花 コガンピ
オミナエシ群落
Fig.29 オミナエシ群落
溜池土堤に大群生が見られた。
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●湿生植物 オミナエシ
オトコエシ群落
Fig.30 オトコエシ群落
鉱山跡の溜池畔草地に群生していた。
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サワシロギク
Fig.31 サワシロギク
山間棚田の用水路脇にヌマガヤ、ヒメシダとともに。
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●湿生植物 サワシロギク
シラヤマギク
Fig.32 シラヤマギク
溜池跡の林縁草地に群生していた。
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●関西の花 シラヤマギク
カエデドコロの雄株
Fig.33 カエデドコロの雄株
農道脇で雄株が満開だった。
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ツリガネニンジン
Fig.34 ツリガネニンジン
里山の秋を代表する花。
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●関西の花 ツリガネニンジン


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