西宮の湿生・水生植物


 フィールド・メモ


このページはトップページの 「水辺から、そして緑から…」 で紹介した記事のバックナンバーに、一部画像を追加し加筆したものです。

 2009年 3月

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春の里山 (西宮市内)
アマナ
アマナ (ユリ科 アマナ属)
3月下旬の約1週間の間だけに開花が見られる。 アマナは草刈りの行き届いた日当たりの良い背丈の低い草地にだけ生育できる植物で、 かつては武庫川の堤防にも見られたようですが、今では市内でもごく限られた場所でしか見られません。 西宮市内では生育地が限られ、絶滅寸前です。
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●関西の花・春の花 アマナ

春の棚田を飾る花々
西宮市内の中部から北部にかけては所々開発されて住宅地となっている場所も多いですが、二次的な自然度の高い棚田も数多く残っています。
ここでいう二次的な自然とは、人が農耕やそれに伴う畦や溜池の土提の草刈りや野焼きなどを行うことによって維持されている環境で、 そのような場所では半裸地や草原環境を好む多様な生物が生育しています。 人によって造成される溜池や水田、休耕田も数多くの生物を宿す二次的な自然環境であるといえます。
市内の棚田ではごく一部の場所の畦や農道に アマナ の生育が見られ、白い可憐な花を咲かせます。 花が美しいため掘り取られることもありますが、市内では絶滅寸前であり、大切に見守って欲しい植物です。
3月下旬、棚田は春早くに開花する種によって、ようやく彩られてきます。 まず、早くから花茎を上げるのはイグサ科の地味な草本である スズメノヤリ です。 スズメノヤリは雌性先熟で、まず雌蕊が出て、しばらくしてから雄蕊を出して自家受粉を防いでいます。 林縁や半日陰となる棚田斜面に タチツボスミレ や、日当たりの良い畦にカンサイタンポポの開花が見られるようになると、棚田もだんだん賑やかになってきます。 棚田の斜面の日当たりの良い場所では キジムシロ が沢山の花を開花させます。斜面下部の水路に近いものほど大株となって花数も多いようです。 畦には踏みつけに強い ムラサキサギゴケ が美しい紫色の花を咲かせ、それよりも小さな花を咲かせて庭先にも出現する トキワハゼ も混じります。 用水路の脇では開花した タガラシ が沢山見られ、 マツバスゲ も開花しています。水路内では早くも ムツオレグサ が花茎を上げはじめています。
休耕田では タネツケバナ に混じって、赤味を帯びた草体の ムシクサ の開花が始まっています。
この日は他に、用水路脇で ウマノアシガタ の一番花や、畦では クロカワズスゲ の開花も見られました。

スズメノヤリ
スズメノヤリ
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●関西の花 スズメノヤリ

タチツボスミレ
群生するタチツボスミレ
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●関西の花 タチツボスミレ

キジムシロ
キジムシロ
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●関西の花 キジムシロ

ムラサキサギゴケ
ムラサキサギゴケ
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●湿生植物 ムラサキサギゴケ

用水路脇のタガラシ
用水路脇のタガラシとムツオレグサ
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●湿生植物 タガラシ

ムシクサ
休耕田のムシクサ
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●湿生植物 ムシクサ

マツバスゲの開花
用水路脇で開花中のマツバスゲ
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●湿生植物 マツバスゲ

ウマノアシガタ1番花
用水路脇でウマノアシガタの一番花が開花
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●湿生植物 ウマノアシガタ

---------------------------------------------- 28,29th. Mar. 2009 ------------------------------------------

春の西宮市内各所で
スミレ類
上段左:ツヤスミレ(タチツボスミレの1変種)
上段右:ナガバノタチツボスミレ
下段左:ヒメスミレ
下段右:コスミレ
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咲き始めたスミレ類・その他
28日、29日と市内各所の水辺周りを中心に様子を見て廻りました。
丘陵の河原ではヒメオドリコソウオオイヌノフグリなどに混じって ムラサキケマンカキドオシ の開花が始まっていました。 水際では オオバタネツケバナ の開花が始まっていましたが、それに混じって生育している ミズタネツケバナ はまだ開花していません。 古いダム湖の周りではクロモジコバノミツバツツジ の開花しているのをあちこちで見かけ、湖岸では ミズオトギリ が昨年の刮ハの名残を未だに茶枯れた花茎に付けていました。
行く先々でスミレ類が開花して楽しませてくれます。この時期に開花しているのは タチツボスミレナガバノタチツボスミレヒメスミレコスミレなどです。 左の画像の左上のものは葉面に強い光沢が見られ、タチツボスミの1変種 ツヤスミレ のようです。 ツヤスミレはふつう海岸付近に見られるようですが、以前紹介した ヒトモトススキ の近くに生育していたので、地質的に古い年代に遺存したものでしょうか。
河川敷では西宮市内で初見となる外来種の オオヤハズエンドウ を数株見つけました。図鑑やweb上での情報も少ないので、葉や托葉の画像を付加しておきました。 花は ヤハズエンドウ(カラスノエンドウ) よりもかなり大きくて美しく、円形に近い旗弁が大きく広がりよく目立ちます。 付近には越冬して開花・結実している大きな コセンダングサ が数株見られ、脱1年草化しているようです。河川敷の湿地を探索すると、 アゼナルコ が新葉を沢山出していました。 ゴキヅル の発芽はまだ始まっていません。
その後、某所のカワラサイコの様子を見に行きました。 しかし、カウンターを持ってくるのを忘れ、50を数えたところで行く手にまだ沢山の個体が見られたので、カウントは後日改めて行うことにしました。 また、先日 ヒトモトススキ を発見した下流部を調べたところ、急峻な岩壁が続く河岸の澱みのたもとにさらに1株大きな個体を見つけました。 岩壁の水のしたたる場所ではホソバミズゼニゴケジャゴケツルチョウチンゴケをはじめとした蘚苔類が多く、 コチョウショウジョウバカマ(シロバナショウジョウバカマ)ショウジョウバカマ が見られましたが、ここではショウジョウバカマの開花はまだ見られませんでした。 他にはちゃんと裂片が3つ揃った ミツデウラボシ も岩壁に着生していました。 市内では山自体が花崗岩でできているため乾燥している場所が多く、裂片が3つ揃ったものはあまり見かけません。

ムラサキケマン
ムラサキケマンの花
ウスバシロチョウ(アゲハチョウ科)の食草として知られていますが、西宮市内にはウスバシロチョウは分布しておらず残念です。
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●関西の花 ムラサキケマン
オオバタネツケバナ
オオバタネツケバナ開花
何度か氾濫に巻き込まれたためか、裂葉がいびつな部分がある。
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●湿生植物 オオバタネツケバナ
ミズオトギリ・名残果
ミズオトギリの昨年の刮ハ
割れた刮ハの底には、まだ種子が少し残っていました。強風によって少しずつ種子を散布するのでしょう。
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●湿生植物 ミズオトギリ
クロモジ
クロモジの開花もあちこちで
兵庫県は近似種ケクロモジの分布東限ですが、西宮市内ではまだ見つけることができません。
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オオヤハズエンドウ
外来種のオオヤハズエンドウ(オオカラスノエンドウ)
葉は羽状複葉で、葉先はつるとなって、つるは分枝しています。鋸歯のある托葉には窪みがあり、そこに赤褐色の腺点があります。
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●湿生植物 オオヤハズエンドウ
カワラサイコのロゼット
カワラサイコの春先のロゼット
西宮市内の自生地は今のところ安泰。
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コチョウショウジョウバカマ
岩壁でひっそりと咲いていたコチョウ(シロバナ)ショウジョウバカマ
普通のショウジョウバカマと較べて、開花がはやい。
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●関西の花 コチョウショウジョウバカマ
ホソバミズゼニゴケの朔
朔を立ち上げたホソバミズゼニゴケ
朔は春先にだけ見られます。
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---------------------------------------------- 26th. Mar. 2009 ------------------------------------------

春の渓流畔にて
ニッコウネコノメ開花
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ニッコウネコノメの開花
いろんな花の開花が早まっているので、ニッコウネコノメも開花しているだろうと様子を見て来ました。
谷に向かう途中の水田では一面に開花した タネツケバナ が見られ、早くも春の蝶ツマキチョウが飛んでいて驚きました。 谷間の入り口近く棚田の斜面にはツクシが胞子嚢穂をあげ、タチツボスミレカキドオシヒカゲスゲが目立ち、石垣にはミヤマキケマンが開花しています。 ミヤマキケマンを石垣や護岸の隙間によく見かけるのは、アリが種子を運ぶからでしょうか。
杉の植林された谷に入ると タチネコノメソウ が最盛期であちこちで沢山開花しています。ヤマアイも雄花が全盛期。チャルメルソウも花茎を上げ始めていました。 ユリワサビは開花寸前です。ユキノシタが沢山着生した岩上ではミヤマカンスゲがいい感じで開花し、いよいよスゲ類のシーズンも到来です。 で肝心のニッコウネコノメはというと、明るい日の当たる場所に生えているものが開花が始まっていました。 まだ萼片が平開しきっていないものが大半で、最盛期はまだまだ先のようです。他には ニリンソウ の根生葉があちこちに見られ、4月半ばには開花する群落が見られるでしょう。
帰り際、少し時間があったので隣の山の谷に入ると、砂防ダムの河原で シロバナネコノメ が群生していました。 あたりはかなり暗くなっており、LEDのヘッドランプの光を当てながら12秒ほど開放して撮影したため、ちょっと妙な色合いになってしまいました。

● 関西の花 ニッコウネコノメ
【参考サイト】 : 私の植物観察日記 ニッコウネコノメ
ミヤマキケマン
ミヤマキケマンも開花
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●関西の花 ミヤマキケマン
タチツボスミレ
タチツボスミレ
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●関西の花 タチツボスミレ
ミヤマカンスゲ
岩上のミヤマカンスゲ
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●関西のスゲ ミヤマカンスゲ
ユリワサビ
ユリワサビの開花も間近
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●関西の花 ユリワサビ
タチネコノメソウ
タチネコノメソウ
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●関西の花 タチネコノメソウ
シロバナネコノメ
シロバナネコノメ
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●関西の花 シロバナネコノメ
---------------------------------------------- 18th. Mar. 2009 ------------------------------------------

西宮市内でヒトモトススキを発見!
ヒトモトススキ
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常緑越冬していたヒトモトススキ
まさか西宮市内でヒトモトススキを見つけることができるとは思ってもみませんでした。 ヒトモトススキはふつう海岸近くの湿地に生えるのですが、見つけたのは低山の中河川の川岸です。 いつものフィールドのルートを巡回していて、少し道をそれてみると川の向こう岸に青々とした線形の葉をもつ大型の叢生した草体が眼を引きました。 以前、東大阪で見たことのあるヒトモトススキだと直感しました。非常に大きな存在感のある株で、前年の花茎も残っていました。 近寄って観察したいところですが、ヒトモトススキは深くなった澱みの縁に生えており、履いていた長靴では渡渉することができません。 次回はウェーダー持参で自生地に向かおうと思います。付近では早くもコバノミツバツツジの開花が始まっていました。
他に市内北部の渓流も歩いて見ました。 砂防ダムの溜まりの底から フトヒルムシロ が美しい浮葉を出し始めていました。 そして盗掘されて全滅したと思っていたウメガサソウが根茎か埋土種子でも残っていたのか、1本見つかりました。 さらに付近を注意深く探すと岩陰にもう一株見つかりました。こちらの株には前年形成された果実がついていました。 付近は休日になるとバーベキューなどで賑わう場所で、岩はカマドにするのに良さそうな様子で、焚き火で焼かれないか心配です。 近くのシソバタツナミが群生していた場所は残り炭やゴミなどで荒らされ消滅寸前です。今年はなんとかして手を打ちたいと思います。

● 湿生植物 ヒトモトススキ
マンサクの花
マンサクの花
花弁が所々で折れ曲がっているように見えるのは、つぼみの時に花弁は内側に
折れながら巻かれているため。
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●関西の花 マンサク
フトヒルムシロの萌芽
新しい浮葉を出したフトヒルムシロ
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● 浮葉植物 フトヒルムシロ
ウメガサソウ
発見したウメガサソウ
大きい株の先には前年の果実が残っています。
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コバノミツバツツジ
開花したコバノミツバツツジ
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●関西の花 コバノミツバツツジ
---------------------------------------------- 16th. Mar. 2009 ------------------------------------------

着生シダと春の妖精たち
ウチワゴケ
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巨岩に密生したウチワゴケ

この日は友人と共に3ヶ所見どころをハシゴしてきました。うち2ヶ所のレポートです。最初は シロバナネコノメ を継続観察している寺院参道でもある林道へと向かいました。
渓流は以前よりも水かさが増して、シロバナネコノメの大きな群生は一度水没したようで、泥をかぶっていました。では、ということで林道脇に生育しているものを観察。 撮影したりルーペで観察しているうちに、ふと目の前の岩を見ると、ウチワゴケがびっしりと付いていました。
ウチワゴケはコケの仲間ではなく、シダの仲間ですが、葉の大きさは2cm以下で、まさにコケのようで、裂葉を扇状に広げてウチワゴケのネーミングがぴったりです。 よくみると沢山の葉がチャルメラの形をした苞膜をつけていました。苞膜の中には胞子嚢が沢山つまっています。 チャルメラというとユキノシタ科のチャルメルソウを思い出しますが、チャルメラ状の杯の上に種子を載せて雨滴による種子散布をします。 ウチワゴケも雨滴によって胞子嚢を散布するのかもしれません。水滴でも垂らして確認すればよかったと今になって思います。
この巨岩の周囲にはミヤマカタバミの新鮮な花が沢山開花し、シロバナネコノメのほか ヤマネコノメソウサンインクワガタオオバタネツケバナミヤマハコベなどの草本が賑やかでした。
また、この渓谷にはシシランヒトツバヌリトラノオカミガモシダヤノネシダコウヤコケシノブホソバコケシノブなどの着生シダ類が豊富に見られ、 さして標高の高くない場所にヒカゲツツジも見られる面白い場所です。

● 関西のシダ ウチワゴケ
巨岩下のシロバナネコノメなど
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巨岩の下のネコノメソウ類とオオバタネツケバナ

         ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
シシラン
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岩壁に群生して着生するシシラン
● 関西のシダ シシラン
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キバナノアマナ
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開花したキバナノアマナ

つづいてスプリング・エフェメラルの様子を見に行って来ました。相変わらず ユキワリイチゲ は花数は多いものの半開きの状態のままでした。
キバナノアマナは開花して間もないようで新鮮な花を沢山見ることができました。あちこちに先が曲がった幼苗が見られ、保護されているので将来は大きな群生地になりそうです。
アズマイチゲ も半開き気味ですが、葯や雌蕊群の様子はしっかり観察できます。
キクザキイチゲ は一番きれいな時期ではないかと思います。画像でみるよりも実際はもっと紫色を帯びて見えるのですが、この色を出すのはほんとに難しいです。
セリバオウレン は開花期が長いのであちこちの林床に見られ、 セツブンソウ もまだチラホラと咲き残っていました。 またニリンソウ の第一花が開花し、 ヤマエンゴサク の新葉も芽吹きはじめて、間も無くスプリング・エフェメラルの第3ステージが始まりそうです。
ところで、今年はじっくりと観察したいと思っているヒロハノアマナの根生葉が見つけられず、今年は出てこないのかと少し心配です。 もし出てこなかったら自生地近くの庭先の栽培株の観察で我慢するしかありません。
他に田園地帯周辺では抽水状態で開花している ネコノメソウ や、青々としたオオカサゴケ、 湧水池のカスミサンショウウオの卵のう、ツツトビケラミズムシなどの水棲生物が観察でき充実した1日となりました。

● 関西の花 キバナノアマナ


アズマイチゲ
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アズマイチゲ
● 関西の花 アズマイチゲ
キクザキイチゲ
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キクザキイチゲ
● 関西の花 キクザキイチゲ
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コガネネコノメの最初の1花
コガネネコノメ
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1花だけ開花していたコガネネコノメ

3/10に県内の シロバナネコノメ の開花が確認できたので、県内のコガネネコノメも開花がはじまっていないかと思い自生地の様子を見てきました。
盆地から谷間に向かう途中の水田では、所々にオオアカウキクサなのか外来アゾラなのか区別し難い赤いウキクサが群生していました。 最近ではあちこちで見かけます。
谷の入り口に車を止め、林道を歩いて谷間に入りましたが、まだ景色は寒々としています。
適当なところで谷に下りるとコチャルメルソウがびっしりと群生していますが、花茎はほとんど上がっていません。 付近にはやたらと アケボノソウ の越冬ロゼットがあり、危うく踏みつけそうになってしまいます。
ミヤマカタバミが1花だけ開花していました。シロバナネコノメの自生地ではミヤマカタバミが沢山開花していたのですが、 この谷には春がやってくるのが少しばかり遅いようです。 コガネネコノメの株は沢山見つかり、かなり大きな群落も見られますが、全てつぼみの状態です。 さんざんウロウロしたあげく、広くなった河原が窪んで湿地状になりササが茂ったその株元に1花だけ開花した株を見つけました。 この株にしてもようやく開花しはじめたところのようでした。 付近には開花中の タチネコノメソウネコノメソウヤマネコノメソウ、 まだ花芽が見えない ニッコウネコノメ、 沢山のつぼみを付けたヤマルリソウが見られました。
コガネネコノメは先にレポートした ヤマシロネコノメ に似ていますが、分布域は広く、関東以西から四国、九州まで生育し、葯は萼から出ず、萼裂片は釣鐘状で円頭です。
● 関西の花 コガネネコノメ
群生するアゾラsp.
途中の水田で群生していたアゾラsp.
この日は6枚の水田でアゾラsp.が発生しているのを見た。
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アゾラsp.
近寄って見たアゾラsp.と葉の拡大
こうやって見たところで、素人にはどの種なのか見当もつきません。
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水田のオタマジャクシ
アゾラsp.のある水田にいたオタマジャクシの群れ
時期的にヤマアカガエルかニホンアカガエルか、どちらかのオタマジャクシでしょう。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)

アゾラsp.
新葉を出しはじめたアケボノソウとミヤマカタバミの花
この谷に多いアケボノソウとミヤマカタバミ、そして花茎を上げはじめたコチャルメルソウ(左手前)です。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●湿生植物 アケボノソウ  ●関西の花 ミヤマカタバミ  コチャルメルソウ
---------------------------------------------- 7th. Mar. 2009 ------------------------------------------

西宮市内の棚田にて
ミズスギ
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半常緑越冬のミズスギ

棚田最奥の削り取られた斜面にミズスギが見られました。
ミズスギは日当たりのよい湿った貧栄養な場所に見られるシダの仲間です。 西宮市内では中部から北部にかけて見られますが、あまり数は多くありません。
ミズスギは南方系の植物で、伊豆半島、東海地方以西に分布し、亜熱帯や熱帯の地方では1年中生育を続け樹木のように背丈が高くなるそうです。 市内のものはせいぜい高くても20cm止まりです。
また、分布域から外れる北日本や北海道では、火山や温泉地帯などのような地温が高く、水蒸気が上がるような場所に特異的に局所分布し、 そのような地方では絶滅危惧種に指定されていることが多いです。
ミズスギは常緑または半常緑越冬するので、胞子嚢穂がついた側枝が残っていれば、冬場でも容易に同定できる植物です。
同じような場所でよく似たヒカゲノカズラも見かけます。こちらは市内でも普通に見られ、ミズスギよりもやや乾燥した場所を好みます。 胞子嚢穂がある時は、長い柄があって直立、分枝するので区別が容易ですが、胞子嚢穂がないときはルーペで葉先を観察します。 葉先が膜質で糸状にのびていればヒカゲノカズラ、糸状にのびていなければミズスギです。
● 湿生・水生植物図鑑 ミズスギ
カスミサンショウウオ卵のう
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カスミサンショウウオの卵のうを確認

以前、篠山市の湧水池で見つけたカスミサンショウウオの卵のうを報告しましたが、市内の棚田でも産卵がはじまりました。
先のミズスギと続きの棚田で、別の谷の最奥に掘られた素掘り水路中にカスミサンショウウオの卵のうを見つけました。
このあたりでは3月の終わりから4月にかけて多く見られるのですが、今年は例年よりも早いようです。 春の花々の開花が例年よりも早まっているので、当然といえば当然のことなのでしょう。 画像の卵のう内の幼生は少し尾部が伸びているので、2月中に産み付けられた卵のうかもしれません。ここでは今回、2つの卵のうが確認できました。 幼生は産み付けられてから約1ヶ月で孵化してくるので、4月にはエラを持ったかわいい幼生が水路内で見られることでしょう。
卵のうは最初のうちは棚田最奥の水路にしか見られませんが、もうしばらくすると棚田のあちこちの湿田に掘られた、素掘りの水路内で見られるようになります。
エラを持った幼生が見られるようになったら、またレポートしたいと思います。
● カスミサンショウウオの成体(♂) (兵庫県篠山市 2008.3/29)
参考サイト:カスミサンショウウオの生態
コナアカミゴケ
乾いた地表で群生する地衣類コナアカミゴケ
放棄された柿園の地表に蘚苔類のコスギゴケやハイゴケとともに群生していた。
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モウセンゴケの目覚め
モウセンゴケの目覚め
湧水のしみ出す崖で小さな越冬芽で冬を越した モウセンゴケ が新しい根生葉を展開しはじめていた。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)

------------------------------------------------------ 1st. Mar. 2009 --------------------------------------------------

早春の渓流畔
タチネコノメソウほか
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タチネコノメソウが開花

山間の渓流畔でタチネコノメソウの開花が始まっていました(画像左)。
西宮周辺の里山で ヤマネコノメソウ が開花し始めると、県中央の山間部ではタチネコノメソウの開花も始まります。
ネコノメソウ属が好きな人はこれからは忙しい季節になりますねえ。
ほかにはヤマアイの雄花の開花が見られましたが、 ニッコウネコノメ(画像右上) のつぼみはまだ堅く、開花はもう少し先のようです。
イワタバコの越冬芽はまだ皺だらけで縮こまっていましたが、トウゴクサバノオは露出した根茎の先端から根生葉をだし(画像右下)、 ユリワサビは花茎をあげはじめていました。
山野が賑やかになるまで、もう少しです。
● 関西の花 タチネコノメソウ
● 関西の花 ニッコウネコノメ

ヤマアイの雄花
開花したヤマアイの雄花
ヤマアイはトウダイグサ科の多年草。雌雄異株で、雄花は単純で地味だが、雌花はさらに目立たない。
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●関西の花 ヤマアイ
イワタバコ越冬芽
イワタバコの越冬芽
越冬芽は縮れて縮こまった葉が握りこぶしのように固まっている。
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