西宮の湿生・水生植物


 フィールド・メモ


このページはトップページの 「水辺から、そして緑から…」 で紹介した記事のバックナンバーに、一部画像を追加し加筆したものです。

 2009年 4月

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丹波地方南部を歩く
ワチガイソウ
丹波新産のワチガイソウ
山の北面の急斜面を流れ落ちる小さな沢筋にまばらに生育していました。 花期は終わりに近く、葯壁は落ち、未熟な刮ハを多数つけていました。 また、この画像では落ち葉に埋もれて見えませんが、茎の下方の葉腋には閉鎖花が付いていました。 兵庫県RDB Cランク
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●関西の花 ワチガイソウ
丹波南部の谷筋や休耕田
前回は丹波地方の北部を訪ねましたが、今回は南部です。
谷筋や山間の溜池、休耕田を中心に廻りましたが、溜池は時期的に満水状態であり水草類もまだ芽吹いていないものが多いようで、 常緑越冬する フトヒルムシロ や沈水状態で前年の不定芽を沢山生じた ハリイオオハリイ ばかりが目立っていました。溜池畔では前回と同じような アゼスゲクサスゲタチスゲコジュズスゲ が多く見られました。
山間の最上部にある溜池に流れ込む谷筋では チャルメルソウニシノオオタネツケバナミズタビラコなどに混じって、 ヤマルリソウ、 沢山のムロウテンナンショウ、 葉だけが目立つサイハイランヤマジノホトトギスの若芽、 花後のコショウノキ、 蕾をつけたミヤマシキミなど山地性の植物が目立ちます。
谷戸奥にある休耕田では ムラサキサギゴケヘビイチゴニョイスミレ(ツボスミレ) などの畦に多い雑草が開花全盛で、まるで絨毯のように広がっていました。 また休耕田の湿り気の多い少し木陰になる場所でトリカブトの仲間を見かけました。 栽培逸出を疑いましたが、傍らの山林内を少し調べてみたところ自生が確認できたので、在来のものと見做してよいようです。
渓流沿いに林道を歩いてみると、 ヤマスズメノヒエヌカボシソウコメガヤが目立ち、ニシノホンモンジスゲの大きな株があちこちに見られました。 ある場所ではコンクリの側溝中に恐らく ミズタネツケバナ と思われますが、非常に判断に困る裂葉をつけたタネツケバナ属の群生がありました。 細流の脇につけられた踏み跡に入って行くと植林地の斜面にヤブレガサが特徴的な新芽を上げていました。
帰途、下見がてらクルマを走らせながら横断する沢をひとつひとつチェックしてゆくと、急斜面を流れる沢筋にワチガイソウを見つけました。 丹波地方に記録はなく、丹波山地新産の種です。

ミヤマキケマン
溜池畔のガレ場に生育するミヤマキケマン
以前にも石垣のものを紹介したように、ここでもガレの石の間から生えています。アリがエライオソームに惹かれて隙間に運び込むのでしょうね。
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●関西の花 ミヤマキケマン
ムラサキサギゴケ
休耕田ではムラサキサギゴケの絨毯が開花全盛
この時期の山間や里山の休耕田では必ず目にする光景です。
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●湿生植物 ムラサキサギゴケ
ヤブレガサ
ヤブレガサの新芽
ヤブレガサの新芽は一度憶えると忘れることがないでしょう。山菜として有名ですが、形がかわいい上に数が少なく、採って食べようという気が起こりません。
隣の山ではモミジガサを見かけますがヤブレガサは無く、ヤブレガサのあるこの山ではモミジガサを見かけませんでした。微妙な生育条件の差があるのでしょうか。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
ニシノホンモンジスゲ
ニシノホンモンジスゲ
県内では内陸寄りの低山〜山地に普通に見かけます。斜面の林床でこんもりと叢生して目立っている細身の葉のスゲはほとんどが本種です。
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●関西のスゲ ニシノホンモンジスゲ
トゲヒゲトラカミキリ
トゲヒゲトラカミキリ
初夏の頃、低山でよく見かけるトラカミキリです。何かの事故で触覚を片方失っており、ハナニガナの葉に止まって強風に耐えていました。
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暫定ミズタネツケバナ
暫定ミズタネツケバナ
日当たりのよい林道脇の浅い清水の流れるコンクリの溝の中で群生していました。 全体的な雰囲気や受ける印象はミズタネツケバナで、茎は軟らかく毛もありませんが、問題は羽状複葉の様子です。 側小片の基部に小片がついているあたりがタチタネツケバナ的であり、側小片自体の形は謎の多いアキノタネツケバナを思わせます。 こういうものは出来るだけ標本に採っておいて、後の見解を待つしかないでしょう。
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●湿生植物 ミズタネツケバナ
---------------------------------------------- 23rd. Apr. 2009 ------------------------------------------

丹波地方北部を歩く
サワオグルマ
休耕田のサワオグルマ群落
丹波地方をクルマで走っていると山際の休耕田で一面に開花しているのを見かけることがある。 盆地の中央付近の休耕田ではほとんど生育しておらず、必ず山に近い湿田の休耕して数年経たようなところで見られる。
サワオグルマの花上はハナバチ類、モンキチョウ、モンシロチョウ、ベニシジミ、アゲハチョウ、キアゲハ、モモブトカミキリモドキ、ルリマルノミハムシなどの訪花昆虫で賑やかだった。
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丹波北部のサワオグルマほか
※今回は「シマヘビ」の画像を掲載しておりますので、苦手な方はご注意下さい!
この時期になると丹波地方を中心に休耕田や用水路脇などに群生するサワオグルマが一斉に開花し、同時期に開花する ウマノアシガタ とともに里山を黄色く飾る様子は美しい。 休耕田の植生を調べるために足を踏み入れると、足元には アリアケスミレヘビイチゴニョイスミレ(ツボスミレ)ムラサキサギゴケ などが咲き乱れていた。 休耕田の中でもやや乾いた場所ではアリアケスミレヘビイチゴが多く、湿った場所では ニョイスミレムラサキサギゴケセリ などが多くなる。 サワオグルマはさらに水気の多い表面に浅い水が溜まっているような場所に根茎を横走して群生をつくっている。
近くの溜池の土提ではヒメハギが開花しはじめ、 オオタニシ の沢山見られる水中には比較的珍しい淡水カイメンが生育し、排水路中には濃緑色のカワモヅクsp.が見られた。 池畔では アゼスゲカサスゲタチスゲコジュズスゲ が開花の真っ盛りでした。
渓流を遡ってボタンネコノメソウを探した。途中の林道ではジャニンジンタチタネツケバナ が見られ、トリカブトの仲間がみずみずしい葉を広げて群生していました。 開花期には素晴らしい光景となるでしょう。林道が終わり、荒れた山道を踏み分けて渓流をさらに詰めて行くと、 タチネコノメソウニッコウネコノメ といった常連に混じって、 ユリワサビジンジソウイワギボウシなどが現れていよいよ深山という雰囲気になってきます。 踏み跡も定かではなくなってくるとようやくボタンネコノメソウがあちこちの斜面に見られるようになりました。 しかし、ここのネコノメソウの仲間は、なぜか花茎だけが何者かに食害を受けているものが多く、なかなか思うような画像が撮れません。 シロバナネコノメ にしても走出枝を出したものは数多く見掛けますが、花茎が無事に残っているのはわずかに1株だけでした。 食害している野生動物にとっては、ネコノメソウ類の花茎はよほど美味しいのでしょうね。
●湿生植物 サワオグルマ

タンスイカイメンsp.
溜池で見られたタンスイカイメンsp.
淡灰褐色で不規則な突起が多く、護岸の石の表面や水中の倒木に付着していた。タンスイカイメンは国産だけでも20種近くあるようだが見分け方が解らない。 最近は外来のタンスイカイメンもあるようだが、カワモヅクsp.が見られるような池なので、在来のものと思いたいが、よく見るとブラックバスも居た。 この池にはオオタニシも多数の個体が生育するが、オオタニシの稚貝はブラックバスの食害には遭わないのだろうか?
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開花中のカサスゲとマツバスゲ
溜池畔のスゲ類
画像の左は開花中のカサスゲ。右は果胞が熟しつつあるマツバスゲ。池畔では他にアゼスゲ、タチスゲ、コジュズスゲが見られた。いずれの種も県下では普通に見られる。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●湿生植物 カサスゲ   ●湿生植物 マツバスゲ
ボタンネコノメソウ
ボタンネコノメソウ
ほかのネコノメソウ属のものに比べて水際よりも日陰〜半日陰の谷筋の斜面に多くの個体が見られた。 花茎の多くが食害され、残っていたのは足場の悪い崩れそうな急斜面のものばかりで撮影には苦労させられた。 ここの集団は苞葉が黄色く染まらず、内側の苞葉は極端に小さかった。
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コンロンソウ
コンロンソウ
集落内を流れる清流の砂質の河川高水敷にオドリコソウとともに群生していた。水際はオランダガラシがはびこっていたが、勢力の及ばない場所に生き残っているようだ。 この場所の集団は全体にほとんど毛が見られないハダカコンロンソウとされるものだった。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 ハダカコンロンソウ
シマヘビ
若いシマヘビ
渓流の日当たりのよいガレ場で日向ぼっこしていました。まだ午前中だったので体温をあげるためでしょう。若い個体で、まだ褐色の横紋が薄く残っています。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
ヤマブキ
満開のヤマブキ
ちょうど渓流畔ではヤマブキの開花が全盛期でした。まだ新緑の少ない谷間のあちこちで黄色い花をたわわに付けて鮮やかに目立っていました。
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ヒメクロサナエ
休眠中のヒメクロサナエ
夕闇に包まれはじめた林道脇のミヤマカンスゲの葉上で、ヒメクロサナエが休眠に入っていました。山地の細流が多いような場所でよく見かけます。 丹波地方には多いですが、西宮市内で見かけたことはありません。
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ケブカトゲアシヒゲボソゾウムシ
ケブカトゲアシヒゲボソゾウムシ
ちょっと前まではリンゴコフキゾウムシとして親しまれていた甲虫類。5〜6月頃になると新緑の広葉樹の葉上でよく見かける。 ヒメクロサナエがいたすぐ脇に生えているコバノガマズミの幼木の葉を後食してました。 前翅には光をよく反射する鱗片が付いていて、緑色の強いものから赤味を帯びたもの、鱗片のほとんど付いていないものまでバリエーションがあります。 拡大画像では前脚の太ももにトゲがあるのが判ります。
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淡路島〜西宮市内
トウゴクサバノオ
トウゴクサバノオの群生
やや急峻な北向きの斜面の谷筋にそって群生が点々と見られ、かなり立派な規模の自生地です。 図鑑では夏期に閉鎖花をつけるとなっていますが、開花期に既に閉鎖花が見られます。 また、これまで記録のなかった県中部に2ヶ所の自生地を発見しました。  ●関西の花 トウゴクサバノオ
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ハマビシの保全とトウゴクサバノオ群生地ほか
18日は淡路島の富島にある浄化センター内のハマビシの保全現場に、TK先生のお供をして保全活動のお手伝いをさせて頂きました。
ハマビシは兵庫県内の最後の自生地がここ富島で、浄化センターがつくられる以前には良好な海浜環境が残りハマビシが群生していたが、浄化センターの工事によりほぼ消失しました。 小規模な工事には環境アセスメントが義務付けられておらず、そのため調査も行われずに着手されたのが消失の原因でした。 現在ここで保全されているものは工事によって山積みされた海岸の土砂中の埋土種子から発芽したものから、種子を採取して毎年播種育成しているもので、 いずれは近辺に海浜を確保してハマビシを戻す考えであるとのことです。6月には別件も含めて発芽個体の確認のため、再訪する予定です。
午後からは津名山地の兵庫県RDB Bランクに指定されているトウゴクサバノオの自生地へと向かいました。トウゴクサバノオの生育状況は良好で、小さな谷筋に沿ってあちこちに群生が見られました。
付近にはコタチツボスミレヤマルリソウが入り混じって斜面を埋めている場所や、アケボノシュスランが踏み付けそうになるほど群生している場所などがあり、 アオテンナンショウヒナスミレタニギキョウマルバコンロンソウなどの開花が見られました。
ふもとの美しい棚田が広がる田園地帯と周辺の雑木林ではヒトリシズカヒメカジイチゴと見られるものや、スズシロソウキジムシロミツバツチグリの混生、 県北と淡路島に隔離分布するシャク、花茎を上げ始めたヤマハタザオが見られました。
続いて19日は午後遅くに西宮市内の中部中心に出掛けました。いよいよスゲのシーズンの到来で、将来の西宮市の植物目録完成のため各種スゲ属植物の標本を採り、 馴染みの草花の生育状況を観察しました。フデリンドウは健在で林床のあちこちで開花していました。間も無く花茎を上げ始めるだろうコバノタツナミシソバタツナミも見られます。 コメガヤが花穂を出し開花間近です。里山周辺の道の脇では ミゾイチゴツナギ も花穂を上げ、キランソウが真っ盛り。今年はウラシマソウも開花していました。

ハマビシの果実
ハマビシの果実
大きさは5mm程度の小さなものでトゲが2〜3個あり、生育していた場所の小さな礫混じりの砂地に手の平を押し付けると、トゲが刺さって手に引っ付いてきます。
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アオテンナンショウ
アオテンナンショウ
兵庫県内には淡路島のみに見られ、国内分布の東限となります。島内では多産しています。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
ムベの花
ムベの花
ムベの開花は県内ではあまり見れないものですが、ここでは花盛りの個体に沢山出会えました。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
ヒトリシズカ
ヒトリシズカ
草刈りの行き届いた溜池の土提にまばらに生育していました。刈り込みと野焼きのため矮小化しわずか3cm程度で開花していました。 淡路島には近縁種のキビヒトリシズカも分布します。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 ヒトリシズカ
ヒメカジイチゴ
開花中のヒメカジイチゴ?
ヒメカジイチゴはカジイチゴとニガイチゴの雑種と推定されているもので、花も葉も丈もニガイチゴよりも大きく、茎にはトゲがある。6月には果実を確認しに再訪する予定。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)

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スズシロソウ
スズシロソウ
林縁のやや日当たりが良く乾き気味のガレた斜面に点々と生育していました。基部からは多数の走出枝を出しています。
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ニガイチゴとコマルハナバチ
ニガイチゴとコマルハナバチ
ここからは市内の画像です。
開花したニガイチゴに沢山のハナバチの仲間が飛来していました。中でもコマルハナバチは働き者で、花がかろうじて見えるような夕闇の中でも忙しく蜜と花粉を集めているのを見かけます。
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●関西の花 ニガイチゴ
フデリンドウ
フデリンドウ
雑木林の林床ではフデリンドウの開花が始まっていました。とても小さい花なので丹念に探さないと見落としてしまいます。今年はかなりの開花個体が見られました。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
マメスゲ
マメスゲ
林縁の地下水がしみ出す小湿地に見られる兵庫県RDB C種に指定されている小型のスゲです。雄小穂だけが上に伸び、雌小穂は草体の基部に集まってつくのが特徴。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●湿生植物 マメスゲ
ウラシマソウ
ウラシマソウ
自生地周辺では個体数は多いものの、開花までに到る個体は少なく、今年は花が見れてラッキーでした。 花は向こうを向いて仏炎苞の中を窺い知ることができませんが、付属体の先が長く糸状に伸びて垂れている特長的な姿をしているのが判ります。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
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天南星の季節
ムロウテンナンショウ
ムロウテンナンショウ
こちらでは、マムシグサと並んで最もふつうに見られるテンナンショウの仲間です。 仏炎苞の中にある花序の先の付属体がマッチ棒のように先がふくらんで前方に傾き、緑色となるのが特徴です。
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●関西の花 ムロウテンナンショウ
初夏の気配
あちこちの林縁や林床にはテンナンショウの仲間が出始めています。
こちらでよく見かけるのはマムシグサムロウテンナンショウコウライテンナンショウウラシマソウなどで、キシダマムシグサ(ムロウマムシグサ)が限られた場所に見られます。 兵庫県内には他にもハリママムシグサミミガタテンナンショウヒロハテンナンショウナギヒロハテンナンショウアオテンナンショウアオオニテンナンショウセッピコテンナンショウムサシアブミユキモチソウオオマムシグサナンゴクウラシマソウなど数多くの種が分布しますが、生育地は限定されます。
この仲間が見られるようになると雑木林の木々もかなり芽吹いており、山はすぐに新緑に染まるようになります。 渓流沿いのやや乾いた場所ではコクサギが花盛りで、ナガバモミジチゴニガイチゴクサイチゴも開花しており、 足元にはセントウソウカテンソウニリンソウ などの花が最盛期。 林道脇や棚田の斜面ではスミレ類にかわってキランソウがやたらと目立ちはじめ、畦ではツクシが干からびて、開花中のオドリコソウの群生が眼を惹きます。
渓流沿いに山に分け入ると ニッコウネコノメ は最盛期で、チャルメルソウがユニークな花を鈴なりにつけた花茎を林立させ、早くもミゾホオズキにつぼみをつけているものが見られました。 山中の湿地状になった場所では ネコノメソウ が黄色い絨毯のように広がり、湧水の溜まった澄んだ水溜まりには ミズハコベ が鮮やかな緑色の草体で群生して癒されます。
帰途、夕暮れの田園地帯の斜面が薄紫色に染まっているのが眼に入りました。クルマを路傍に止めて見に行くと、一面に広がったカキドオシの群落が出向かえてくれました。 このように大きな群落をこれまでに見たことがありません。手前の畦ではスミレアケボノスミレが入り混じって開花していました。

カテンソウ雄花
カテンソウの雄花
雌雄異花で花弁はなく、5個の雄蕊が目立つ。雄蕊は展開するとすぐに葯が開いて花粉を放出し、画像のような葯がもぬけの殻のような状態のもを見ることがほとんどです。 雌花は花序の付け根に付きますが、雌花自体をもっている株はごく少なく、ひとつひとつの株を探して廻るのが一苦労で、そのうち根負けしてあきらめてしまうことがほとんど。
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●関西の花 カテンソウ
セントウソウ
セントウソウ
セリの仲間で白い小さな花を沢山つけます。わりとどこにでも見かける花ですが、開花がはじまるとなぜか嬉しくなる花です。
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●関西の花 セントウソウ
オドリコソウ
オドリコソウとモンシロチョウ
ハナバチの仲間との受粉が観察しやすくて有名な花です。この日も多くのハナバチ類が訪花していました。 モンシロチョウは吸蜜している様子ではなく、夕方近くだったので休んでいるところのようでした。しかし、花の上で休んだりしてハナグモの餌食にならないのだろうか。
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●関西の花 オドリコソウ
ミズハコベ
ミズハコベ
山中の人が踏み入ることない場所では、時に素晴らしい光景が展開していることがあります。 ときおりキツツキのドラミングが聴こえる静かな山中で、澄んだ水の中にミズハコベの美しい群生が見られました。 普段は人里に近い場所で見られる種ですが、このような場所では草体の美しさが際立ちます。野生動物によって種子が運ばれて長年をかけて広がったのでしょう。
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●湿生植物 ミズハコベ
アリアケスミレ
アリアケスミレ
里山の畦によく見られるスミレの仲間です。ここのものは白味が強く、紫色の筋もほとんど見られないものでした。
※掲載当初、間違ってアリアケスミレをアケボノスミレとしてしまいました。ご指摘いただいたmojaさんには感謝いたします。
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●関西の花 アリアケスミレ
カキドオシ群落
カキドオシ群落
カキドオシといえばどこにでもある雑草ですが、これだけの群生となるとそうやたらとあるものではありません。
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●湿生植物 カキドオシ
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三田市の溜池・県中部逍遥
タチタネツケバナ
タチタネツケバナ
タチタネツケバナは兵庫県内では比較的よく見かけるタネツケバナ属植物です。 自然度の高い里山などの乾いた裸地から溜池畔の裸地にまで生育します。乾いた場所では茎を直立して主茎は明瞭で、図鑑などに見られる典型的な草体をしていますが、 溜池畔などの湿った場所では、基部から多数の茎が分枝して主茎は不明瞭となり、他種との区別がやや難しくなります。 このような草体では、茎にビロード状の短毛が密生していることと、茎下部につく葉の側裂片の基部に托葉状の小片があることを確認することにより、タチタネツケバナと判断します。 ここでは野焼きされた溜池の土提で主茎が直立した個体が見られ、池畔の水際近くでは基部付近で分枝して花茎を広げる個体が見られます。
タチタネツケバナの周りにはヒシの果実が沢山ころがっています。
画像の個体は タチタネツケバナのページの Fig.9 のロゼットが生育したものです。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
溜池畔の春植物ほか
兵庫県立・人と自然の博物館でのセミナーの帰途、三田市の溜池のひとつに立ち寄って来ました。 この溜池は山間に開かれた棚田の下部にあって、棚田から栄養塩が供給される中栄養〜やや富栄養な溜池です。 冬期から春期には水位が下がり、溜池畔で水湿地を好む春に開花する湿生植物が観察できます。 池畔に降りると、先ず眼を惹くのは開花真っ盛りの ミズタネツケバナ の群落で、池畔の一画が白く染まるほどでした。 池畔の露出した底面は軟泥に覆われ、所々に微量な湧水が流れ出ています。そのような場所では減水して取り残された マツモ の殖芽が見られます。 水際に近い軟泥質の場所では タチモ の群落が新葉を展開し始めて青々としています。この溜池では タチモ と同じような場所に ヒルムシロヒロハトリゲモ などの水草も出現しますが、まだ出芽していません。 タチモが生育する場所よりも少し上部で、砂礫質の土壌の場所で湧水がにじみ出すような所では ミズユキノシタ の群落が新葉を展開しはじめ、 ミズハコベ や出芽しはじめた イボクサ が見られます。 また、所々で大株となって沢山の花をつけた コオニタビラコ も見られ、結実期の花茎を地表に向かって屈曲している様子も観察できました。 さらに上部では根生葉を広げた キツネアザミツルヨシクサヨシアゼスゲ 、 棚田から種子が流入して生育していると見られるスズメノテッポウヤハズエンドウウシハコベコハコベ などのハコベ類が見られ、湿生植物と水田雑草が同居し非常に面白い場所だと思います。 池畔には打ち上げられた不稔の ヒシ の果実とともに、オオタニシドブガイの貝殻がごろごろと転がっており、水質は中栄養〜やや富栄養であっても自然度が高く、 注目すべき二次的自然環境が現存する溜池だと思われます。
この溜池ではタネツケバナ属の植物が豊富で泥質の場所ではミズタネツケバナが優占し、それよりも上部の砂礫質の場所から土提まで タチタネツケバナ が見られ、 池畔周辺の泥質〜砂礫質の場所全体にわたって タネツケバナオオバタネツケバナ の生育が見られます。 近場ではタネツケバナ属植物を観察するには最適のフィールドとなっています。
翌日は植生の調査がてら県中部の里山をぶらぶらと逍遥しました。 幸いなことに天候もよく陽気にも恵まれ、水田周りの小池や撹乱気味の小湿地ではどこも ネコノメソウ が満開で眩いばかりで、山野ではミヤマセセリコツバメが飛翔し、畦では ムラサキサギゴケ が絨毯のように開花していて、春ならではの至福の時を過ごすことができました。

イボクサの出芽とミズユキノシタ
出芽したイボクサとミズユキノシタ
池畔の湧水がにじみ出す場所のミズユキノシタの群落中にイボクサの発芽が見られました。 緑色の披針形のものがイボクサ、赤味を帯びた有茎の草体がミズユキノシタ。 この溜池は5月に入ると満水となり、両種とも沈水形となって生育を続ける。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●湿生植物 イボクサ   ●湿生植物 ミズユキノシタ
オオタニシ
オオタニシ
オオタニシは山間の溜池などに生育する大型のタニシ。画像のものは6cmを越える程度だが、大きなものでは7cmを越すものがある。 他に大型のタニシでは水田や用水路などに生育するマルタニシがあり、圃場整備が進んで減少傾向が激しい。 オオタニシ、マルタニシともに準絶滅危惧種に指定されている。 西宮市内では一部の水田や用水路でマルタニシは見られるが、オオタニシの生育は確認できていない。 (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
参考画像:マルタニシ
溜池畔の湿生植物群落
溜池畔の春の湿生植物群落
手前の裸地状の場所に見える緑色のコケのようなものは、越冬から目覚め新葉を展開しつつあるタチモ群落。 その向こう側に赤味を帯びて点在する小さな草体はミズユキノシタの群落。 後方の白い花はミズタネツケバナの群落で、群落中にオオバタネツケバナ、タネツケバナ、タチタネツケバナが少量混在する。
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ヒメレンゲ
ヒメレンゲ開花
渓流の岩上で開花が始まりました。まだ花序の枝は伸びていません。
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ニッコウネコノメ
ニッコウネコノメ群落
ここで開花している集団では、ほとんどの雄蕊の葯が開ききっていました。
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●関西・春の花 ニッコウネコノメ
ホソミオツネントンボ
ホソミオツネントンボ
周囲に山林のある溜池や流れの緩い水路のまわりで見かけます。一度飛び立ってもすぐに近くの枝などに止まるので、撮影しやすい昆虫です。
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イヌガンソク
イヌガンソクの枯れ残った胞子葉
株際からは新葉が出かけていましたが、まだ前年の胞子葉はしっかり残っており、叩くと褐色の胞子が飛び出してきました。
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●関西のシダ イヌガンソク
オオタチツボスミレ
オオタチツボスミレ
花も草体もタチツボスミレよりも大きく、葉は丸みを帯び、距は白いのが特徴。兵庫県内では中部〜北部で見る機会が多い。
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●関西の花 オオタチツボスミレ
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西宮市内〜県中部
ノジスミレ
ノジスミレの群落
ノジスミレも西宮市内で見つけることができました。 今春、標高350m付近のかなり離れた2ヶ所で群落が見つかりましたが、一方は工場施設の跡地であり、客土して整地されているとすれば他の場所からの移入である可能性が高いです。 画像のものは旧畑作地で、毎年野焼きのされる原野です。こちらの場所では周辺にも株が見られるので在来のものでしょう。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 ノジスミレ
里山と棚田の植物
この時期は沢山の春の花が入れ替わりに咲き、地面からは夏〜秋の植物が一斉に芽吹き、どこに出掛けても楽しいものです。 畑地ではノジスミレスミレが見られ、周りの斜面からはツルボワレモコウ などが新葉を広げはじめています。 棚田ではミツバツチグリが満開で畦を黄色く縁取っています。 クロカワズスゲ の花序に一面覆われた畦も見られます。 用水路脇では ミズギボウシヤマラッキョウ が出芽しています。 棚田の奥の湿地周辺では マメスゲ が地味ながら開花し、オオミズゴケの上では開花する ショウジョウバカマ の隣で ヒメアギスミレ が小さな葉を広げています。 畦の上で開花が始まったばかりの ツボスミレ(ニョイスミレ) を見つけました。開花がやはり例年よりも早まっています。 棚田から雑木林に向かう山道のまわりで、数十匹のハナバチの仲間が沢山飛び回っていました。ミツバチの巣箱のそばにでもいるように、羽音がわんわんと聴こえます。 様子を見ていると乾いた崖に小さな穴が沢山空いていて、どうやらハナバチの仲間がコロニーをつくっているようでした。 そこらじゅうハナバチだらけですが、おとなしいハチだし、なによりも花の受粉を媒介する重要なポリネーターです。 今後もここを通るたび、じっくりと観察したいと思います。
場所を移動し県中部の里山にいくと、 ニリンソウ に混じって イチリンソウ が開花していました。 県中部あたりではニリンソウほど多くありませんが、所々で生育しているのを見ます。 とても花など付けれないような暗い植林地の林床に、根生葉だけが群生していることもあります。

ミツバツチグリ群落
畦で群生するミツバツチグリ
用水路脇の畦では陽光のあたる西向きの面で、帯状にミツバツチグリの群落がずっと続いています。西宮市内でも、北部の棚田ではこのような光景が見られます。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 ミツバツチグリ
ツボスミレとクロカワズスゲ
開花し始めたツボスミレ(ニョイスミレ)とクロカワズスゲ
ツボスミレとスミレが咲いて満開となると、やがて湿地では アギスミレヒメアギスミレ の開花が始まります。
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●湿生植物 ツボスミレ  ●湿生植物 クロカワズスゲ
ハナバチ類のコロニー
ハナバチ類のコロニー
乾いた土質の崖に沢山の穴が掘られ、周囲を沢山のハチが飛び回っていました。 穴への出入りは少なく、ときおり巣穴の下にある小さな土のテラスの上で数匹が絡み合って塊になっていました。
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コカンスゲ
開花中のコカンスゲ
山地の渓流畔の林道沿いの斜面などに群生しているのを見かけます。区別の難しいスゲ属中にあって開花中でも同定が容易な種です。
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●関西のスゲ コカンスゲ
イチリンソウ
イチリンソウの花の拡大
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●関西の花 イチリンソウ
ヤマスズメノヒエ
開花したヤマスズメノヒエ
先日紹介した ヌカボシソウ と同じイグサ科スズメノヤリ属で近縁種ですが、ヌカボシソウは花序枝が複生し枝の先に花が単生するのに対して、ヤマスズメノヒエは枝先に数個の花がつきます。 また、草体の毛はやや少なく、昼を過ぎてもよく開花しているのが見られます。
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●関西の花 ヤマスズメノヒエ
---------------------------------------------- 7th,9th. Apr. 2009 ------------------------------------------

マルバコンロンソウなど
マルバコンロンソウ
マルバコンロンソウの開花
ミヤマカタバミとツーショット。他にキヅタヌカボシソウらしき若い株、ツルカノコソウの幼苗が写っています。生育環境がわかりますね。 マルバコンロンソウはまだ開花が始まったばかりで、開花しているのは2株だけでした。
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●関西の花 マルバコンロンソウ
マルバコンロンソウ
大町先生の画像掲示板 「何の草花?掲示板」 No.72458 で茎に毛がほとんど無く、葉の付け根の耳状の張り出しも目立たないマルバコンロンソウのようなタネツケバナ属植物の画像がアップされていました。 こちらのマルバコンロンソウにもそういった個体があるかどうか調べてみることにし、県中部の自生地に出掛けました。
訪れた場所のマルバコンロンソウは、渓流沿いの杉の植林地の林縁に点々と生育しており、周囲ではミヤマカタバミが開花の真っ盛りで、 林縁にはジンチョウゲとよく似た白花の芳香を放つコショウノキが満開でした。 植林の山の入り口近くの河原ではミヤマキケマンミヤマハコベの開花が始まっていました。 よく発達したオオバチドメの集団がありましたが、まだ新葉を展開したばかりで、葉の大きさはチドメグサ並みに小さかったです。 山から流れ出る渓流をさかのぼると ニッコウネコノメ も花の盛りで、苞葉が黄色く染まり、陽に当たると眩いばかりに輝いて見えます。 渓流にかぶさるように張り出した低木の枝にはキヨスミイトゴケカヤランなどが着生し、湿度の高さが窺えます。 林道脇の渓流の護岸の切れ目にはヤブソテツの仲間に混じって数株のコタニワタリを見かけました。 この谷にはトウゴクサバノオが多く、つぼみを付けた株があちこちに生えています。開花まであと1週間ほどでしょうか。
さてマルバコンロンソウを調べてみると、20数株のうち2個体に茎にほとんど毛が見られませんでした。 葉身基部の耳状の張り出し具合は個体によって様々で、はっきりと認められるものからかなり不明瞭なものまでありました。 耳状の張り出しは茎下部につく葉ほどはっきりとしていました。茎に毛のない個体の場合、花の子房に毛があるかどうかの確認が必要なようです。 ルーペで花を見て、子房に顕著な毛が見られたらマルバコンロンソウとしてよさそうです。

ミヤマハコベの花
ミヤマハコベ
花を拡大してみました。萼片の基部中央あたりに蜜腺が蜜をたたえて光っています。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 ミヤマハコベ
コショウノキ
コショウノキ
花は芳香をよく放って、少し離れた場所でも香ります。雌雄異株で、ここに生育しているものは花粉まみれだったことから雄株のようです。 花弁と見えるものは萼で、ジンチョウゲと違って萼筒に短毛が生えます。兵庫県の山林に自生するジンチョウゲの仲間ではナニワズの次に開花します。
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イチョウウキゴケ
イチョウウキゴケ
畑の跡地に山から水が流れ込み、ちょっと湿地状となった場所に集団が見られました。鳥が運んできたのでしょうか。
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● 浮遊植物 イチョウウキゴケ
コタニワタリ
コタニワタリ
山林中の渓流の護岸の改修をまぬがれた古いコンクリートの壁面に数株が着生していました。西宮市内では見かけないシダです。
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●関西のシダ コタニワタリ
イワガネソウ
イワガネソウ
こちらは西宮市内の渓流の岩壁に着生しているイワガネソウです。葉の大きさが80cmを超え、沢山生えていると見事な光景となります。 幼株は単葉で先のコタニワタリとちょっと似ていますが、葉縁には細かい鋸歯があり、区別することができます。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西のシダ イワガネソウ
シハイスミレ
開花しはじめたシハイスミレ
市内でシハイスミレの開花が始まりました。開花したてで、株も葉もまだまだ小さいです。
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●関西の花 シハイスミレ
---------------------------------------------- 5th. Apr. 2009 ------------------------------------------

西宮市内・中〜北部
ショウジョウバカマの花
ショウジョウバカマの花
ビロードツリアブハナバチ類が訪花していましたが、カメラのセットがいつも間に合わず、次回からはコンデジで狙おうと思います。
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春の市内中〜北部
観音山や船坂峠の山腹に春霞の中開花するタムシバを遠見すると、いよいよ春も真っ盛りと感じます。
里山の用水路脇ではショウジョウバカマがあちこちで開花し、 ミズタネツケバナニシノオオタネツケバナ の開花も始まりました。 耕起直前の水田ではヘビイチゴミツバツチグリオニタビラコニガナ などの黄色い花も開花し始めました。 水路ではイモリの姿が見られ、畦ではアマガエルも見かけ、ツチイナゴの動きも活発です。 市内では少ないツマキチョウも見られ、エゾスジグロシロチョウらしき蝶も数多く飛んでいます。
この日は5年ぶりに紅花のキランソウを見ました。 それ以前は1ヶ所の棚田で大きな株がいくつも見られたのですが、盗掘に遭ったのか全く姿を消していました。 あたりをくまなく探してみましたが、見つかったのは結局小さな1個体だけでした。大切にしたいものです。
普段はあまり足を踏み入れたことが無かった場所では、これまで市内で見つけることの出来なかったニオイタチツボスミレタチタネツケバナ が生育していました。 両種とも個体数は少ない上、タチタネツケバナは乾燥した所にとても小さな2個体があるのみで、標本にするための採集はあきらめました。 また、見かけないと思っていたノジスミレの群生も、休耕中の畑地で見つけました。
棚田へと向かう雑木林の道すがら、 モエギスゲアオスゲ の開花が見られました。細流脇に群生する セキショウ が目立たない花序を沢山上げています。 同属の ショウブ のほうは、やっと萌芽してきた段階です。
●湿生植物 ショウジョウバカマ

セイヨウタンポポを訪花したキタテハ
セイヨウタンポポを訪花したキタテハ
朱色の服を着ていたためか、私の周りを飛んで愛想を振りまいてくれました。
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ミツバツチグリ
畦で開花したミツバツチグリ
以前紹介した キジムシロ にそっくりですが、こちらは小葉が3枚、キジムシロの小葉はふつう5〜9枚です。
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●関西の花 ミツバツチグリ
シュンラン
開花中のシュンランの大株
見事な大株ですが、ほとんどの花がむこうを向いてしまっていて残念。
後日、生育場所を見たところ無残な掘り跡があり、盗掘に遭ってしまったようだ。腹立たしくもあり、情けなくもある。 残念なことであるが、今後このような個体を見つけたら落ち葉と枯れ枝で見つけにくくする処置を取りたいと思う。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
エゾスジグロシロチョウ?
エゾスジグロシロチョウ?それともスジグロシロチョウ?
画像からだけでは判断不能です。
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イモリ
イモリ
この日は用水路や鋤洗い場の枡でよく見かけました。
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キランソウの紅花品
紅花のキランソウ
やっと見つけた小さな1株。この日はカラスノエンドウの白花も見られました。
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●関西の花 キランソウ(モモイロキランソウ含む)
ニシノオオタネツケバナ
ニシノオオタネツケバナ
渓流の周辺で開花が始まっています。よく似た オオバタネツケバナ より、葉も草体も花も大きいです。
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●湿生植物 ニシノオオタネツケバナ
ミズタネツケバナ
ミズタネツケバナが開花
こちらも オオバタネツケバナ とよく似ていて、花もほとんど大きさが変わりません。日当たりのよい場所で栄養条件もよいためか、茎の色が紫色を帯びています。 今年は長角果の長さに違いはないか調べてみたいと思います。
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●湿生植物 ミズタネツケバナ
ニオイタチツボスミレ
ニオイタチツボスミレ
西宮市内でようやく見つけました。花茎には微短毛が生え、花の紫と白い部分のコントラストがはっきりとしています。
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●関西の花 ニオイタチツボスミレ
ショウジョウスゲ
ショウジョウスゲ
沢山の花序を上げていました。種子生産量は相当なもので、生育場所では大株が群生しています。
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●湿生植物 ショウジョウスゲ
セキショウ
肉穂花序を出したセキショウ
毎年、セキショウの開花中の画像を撮り忘れていたのですが、今年はしっかり撮影できました。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●湿生植物 セキショウ
ショウブの萌芽
水路脇で萌芽するショウブ
ツクシと一緒に水路脇で新葉を出していました。
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●湿生植物 ショウブ
コモチシダ
コモチシダ
ハチジョウカグマと似ていますが、この付近にはハチジョウカグマは分布していません。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西のシダ コモチシダ
タムシバ
夕暮れのタムシバの花
春先の白い花はコブシが有名ですが、この付近で見られるのは近縁種のタムシバです。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
---------------------------------------------- 3rd. Apr. 2009 ------------------------------------------

県中東部の渓流と里山にて
コガネネコノメ
コガネネコノメソウ (ユキノシタ科 ネコノメソウ属)
開花最盛期の個体は花茎が長く伸びている。
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コガネネコノメソウの咲く谷

コガネネコノメソウを継続観察している渓谷に出掛けました。
山を分け入る林道上は日当たりが良く、テングチョウキタテハルリタテハアカタテハなどの成虫で越冬する蝶達が飛び交い、 水がしみ出す場所では吸水するためにやって来たルリシジミが見られます。 蝶達は素早く動くためマニュアル・フォーカスのマクロレンズをつけた私のカメラではとても捉えることができません。
林道の脇ではタチツボスミレネコノメソウ が沢山開花しています。
河畔に降りると、日当たりの良い場所ではコガネネコノメソウが開花しています。 以前訪れたときよりも花茎がかなり伸びており、ぽつんと付いた1対の茎葉がよくわかります。 図鑑ではコガネネコノメソウは開花時には根生葉は見られないとなっていますが、ここで生育するものはいずれの個体にも根生葉がしっかり残っています。 半日陰や渓流の岩上に生育するものは、まだあまり開花は進んでいません。渓流畔や岩上ではコチャルメルソウが沢山開花していました。
●関西の花・春の花 コガネネコノメソウ

岩上のコガネネコノメソウ、コチャルメルソウ
岩上で開花するコガネネコノメソウとコチャルメルソウ
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コケの上に生えるコガネネコノメソウ
トヤマシノブゴケのマット上のコガネネコノメソウ
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ニリンソウ
ニリンソウ (キンポウゲ科 イチリンソウ属)
3〜5月に開花する多年草で、地中に根茎を横走して群生することが多い。
県内の中〜南部では4月の上旬から中旬にかけて見頃を迎える。
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ニリンソウなど
県中東部の里山周辺ではそろそろニリンソウが見頃になりつつあります。
中東部では里山の山際や、渓流の斜面などで比較的よく眼にする種です。 ニリンソウが開花する頃は、他の春に開花する植物も数多く見られ、山野を探索するのが楽しくなります。 場所によっては イチリンソウヤマエンゴサク の開花期と重なり、これらの花々とともに里山の林縁を彩ります。 この日はイチリンソウはまだつぼみの状態でしたが、ヤマエンゴサクはあちこちでぽつぽつと開花していました。 林縁では他にヌカボシソウミヤマカタバミが開花し、畑地ではノジスミレムラサキサギゴケカキドオシムラサキケマン などが開花していました。 また、寺社の石垣でチャセンシダや朔を上げたタマゴケ、地衣類のジョウゴゴケの仲間などを観察しました。
近くの渓流に移動すると、早くも クサソテツ が新芽を出し始めていました。新芽はコゴミと呼ばれ食用になる山菜として知られています。今晩の酒の肴に少し採取しました。
小さな流れのたもとでは ワサビオオバタネツケバナ が開花しています。 渓流が山中に入る場所ではチャルメルソウヤマルリソウが、また初めて見るヤマサギゴケが開花していました。 蘚苔類はちょうど朔を上げるシーズンで、ツルチョウチンゴケジンガサゴケジャゴケなどに朔が見られました。
●関西の花・春の花 ニリンソウ

ヤマエンゴサクの花
ヤマエンゴサクの花
距が長く伸びて面白い形の花は、上下左右の4枚の花弁からなります。 中央に見える左右の1対の花弁はぴったりと合わさっていて間に雄蕊と雌蕊を挟み込んでいます。 距の奥には長く伸びた蜜腺があり、ハナバチ類が無理に距にある蜜を吸おうとして中央の2枚の花弁を押し下げると、 花弁の間から雄蕊と雌蕊が現れハナバチ類によって受粉されます。
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●関西の花 ヤマエンゴサク
ヌカボシソウ
開花中のヌカボシソウ
ヌカボシソウは普通、晴天の午前中に開花しますが、午後3時過ぎにも関わらず開花していました。 おそらく、晴れたり曇ったりの天候に加え、この個体は林内の薄暗い場所に生育していたからでしょう。 花被片は赤褐色を帯びていますが、場所によっては淡緑色の花被片を持つものもあるようです。
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●関西の花 ヌカボシソウ
ノジスミレ
ノジスミレ
ノジスミレは県中部の人里周辺でよく見かける。西宮市内では見かけない花です。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 ノジスミレ
チャセンシダ
チャセンシダ
葉軸が紫褐色を帯びるシダで葉軸裏には翼がない。石垣や岩場の隙間に根を下ろしているものが多い。
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●関西のシダ チャセンシダ
タマゴケの朔
朔を上げたタマゴケ
タマゴケの朔は最初全体緑色だが、成熟してくると朔のフタの部分が茶褐色を帯び、目玉おやじのようになります。
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●関西のコケ タマゴケ
ワサビ
ワサビ
言わずと知れた国産香味野菜です。兵庫県では中部以北に多く自生が見られます。自生種の根茎は売っているものと較べると貧相で利用価値はほとんどありません。 食べる量の葉だけを摘み取るようにしましょう。
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●湿生植物 ワサビ
チャルメルソウの花
チャルメルソウの花
花茎はよく見られるコチャルメルソウよりも長いですが、花自体は小型。ここのものは花弁があまり羽状に発達していなかった。 兵庫県内では自生地は比較的局所的です。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 チャルメルソウ
ヤマルリソウ
林縁に多いヤマルリソウ
林縁でよく見かけます。
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●関西の花 ヤマルリソウ
ヤマサギゴケ
渓流畔に生育していたヤマサギゴケ
ムラサキサギゴケの1品種。ムラサキサギゴケに比べ花柄や花茎が長く腺毛が多く生え、葉には葉柄があり、葉身は円い。 匍匐枝は開花前から沢山出している。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)


ツルチョウチンゴケ
朔を上げたツルチョウチンゴケ
渓流畔や渓流中に沈水状態で生育するものも見られる。渓流畔のものは、この時期割合大きな朔を立ち上げてよく目立つ。
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