西宮の湿生・水生植物


 フィールド・メモ


このページはトップページの 「水辺から、そして緑から…」 で紹介した記事のバックナンバーに、一部画像を追加し加筆したものです。

 2011年 5月

---------------------------------------------- 30th. May. 2011 ------------------------------------------

但馬の海岸から高原へ・その1
梅雨入り前になんとか但馬の植物を見てみたかったので、1日目は丹波地方を廻り、車中泊しながら但馬の海岸から高原へと巡って来ました。 ほんとうは雪融けの春先に行きたかったのですが、丹波の植物の自生地調査などで時間をとられてしまい、行く機会を逸してしまいました。 但馬の高原では間近で若いツキノワグマと出会いましたが、写真を撮る間もなく、相手は凄い勢いでヤブの中に逃げ込んでいきました。 野生のツキノワグマを目撃する機会は少なく、今回を含めて2度しか間近で見たことがなく、兵庫県但馬から岡山県の脊梁山地に100〜150頭程度が生息していると推定されており、 絶滅が危惧されています。
初日の丹波では、里山の林縁でジャニンジンを集中して撮影していると、気付かぬうちにヤマビルの大群に取り囲まれていました。 湿った林道上には沢山のヤマビルが頭を持ち上げてこちらを目指してやって来ていました。 あわてて日当たり良い乾いた場所に退避しましたが、長靴や野冊にヤマビルがはい回っていました。気付くのが早かったためか、幸いにも長靴の中にまでは進入していませんでした。 ヤマビルは爆発的に殖えたシカによってもたらされたもので、これからのシーズンはヤマビルやダニへの対策をしっかりする必要があります。
今回の観察行は2回に分け、はじめに但馬の海岸で観察した植物を中心に紹介します。

海岸の風衡地に見られる植生
Fig.1 海岸の風衡地に見られる植生
兵庫県の海浜は瀬戸内側は多くの場所が開発や埋立にあい、自然海岸の残っている場所はごくわずかだが、日本海側では急な断崖が連なる合間に、多くの自然海岸が残されている。 画像の場所も切り立った断崖に挟まれた、礫地が広がる少し寂れた海水浴場で、高潮域にはハマダイコン、ハマエンドウ、ハマヒルガオ、ママコノシリヌグイなどが繁茂して群落をつくっており、 画像に見える海岸に迫った急峻な断崖にはタイトゴメやハマボッス、イソアオスゲが群生し、急で湿潤な草地斜面にはオオバギボウシが群生し、多くの海浜植物が観察できた。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
ハマボッス
Fig.2 ハマボッス
ハマボッスは自然度の高い海岸であれば普通に見られ、瀬戸内海沿岸部にも生育している。 かつては西宮市内の海浜部にも生育していたが、現在では絶滅して見られない。 ハマボッスは礫浜の上部や浜辺から山腹にいたる岩場などに生育していることが多く、こういった環境が残っている場所を探せば見つかることが多い。 海岸の風衡地に生育するものは節間が詰まって葉が混みあってついて厚味が増し、表面の光沢も強くなる。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 ハマボッス
ヤマハタザオ
Fig.3 ハマハタザオ ヤマハタザオ
掲載当初はハマハタザオとしたが、指摘を受けて標本を再検討したところ、ヤマハタザオだった。 海岸に生えていたのと、たまたま3岐する毛が混じっていたため、ハマハタザオと思い込んでしまった。 標本を見ると、多くの葉の毛は単毛であるか2岐し、ときに3岐するものもあり、ごく稀に4岐するものがあったが、茎下部には単毛と星状毛が混じっていた。 また開花期が春早くに開花するハマハタザオと異なる。2011.6/1更新。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 ヤマハタザオ
イソアオスゲ
Fig.4 イソアオスゲ
イソアオスゲは自然度の高い海岸の岩上や海崖に生育し、兵庫県では日本海側・瀬戸内側ともに生育が見られる。 瀬戸内側では西播や淡路島などの自然度の高い海岸で記録がある。 似たものにハマアオスゲがあるが、ハマアオスゲは砂浜や海に面した防風林下に生育し、葉がいちじるしくざらつき、雄小穂や雌小穂はイソアオスゲよりも太いことにより区別できる。 両種ともに、かつて海進があった場所に遺存的に生育していることがあり、そのような場所で見られるアオスゲの仲間には注意を要する。 (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 イソアオスゲ
キジカクシ
Fig.5 キジカクシ
キジカクシはユリ科(APG体系ではキジカクシ科)のアスパラガスに近い種で、似たものにクサスギカズラがあるが、クサスギカズラは日本海側では見られず、 海岸の礫地や林縁で見られるものは全てキジカクシである。 図鑑には山地の草原に生えるとあるが、兵庫県下の記録のほとんどは海岸近くである。 ここでは急斜面の草地や、大きな礫が折り重なる礫地、海崖の崩落箇所などに多く見られた。 花は非常に小さなものが主軸ちかくの葉腋の小さな花序につき、あまり目立たない。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 キジカクシ
アサツキ
Fig.6 アサツキ
アサツキは兵庫県下では内陸から北部の海岸や高原の草地、河川の河原などで自生種を見かける。 いずれの場所も草地環境であるが、乾いた草地には少なく、湿潤な草地に多く見られ、ここでもオオバギボウシが群生する草地や、湧水のみられるイソヤマテンツキ群落中に見られた。 流通量は少ないが、食用となるネギ属のなかでは最も葉が細く、フグの刺身には欠かせないネギである。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 アサツキ
ハマエンドウ
Fig.7 ハマエンドウ
ハマエンドウは各地の海浜で普通に見かけ、西宮市内の海岸でも生育している。ハマヒルガオとともに初夏の砂浜を飾り、茎を匍匐して群生することが多い。 砂浜を好むが、礫浜にも生育し、ここでは礫浜の高潮域を広い範囲にわたって覆っていた。 若い草体や未熟な果実は食用とすることがあるが、弱い毒性があるので加熱処理が必要である。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 ハマエンドウ
スナビキソウ
Fig.8 スナビキソウ
スナビキソウはムラサキ科の海浜性の多年生草本で、図鑑では砂浜に生えるとあるが、ここではかなり大きな礫が転がる礫浜にキジカクシ、ハマヒルガオなどとともに多くの個体が点在していた。 兵庫県下では自生地は比較的限られ兵庫県版RDBではCランクと評価されている。 全国的にも自生地は少ないようで、多くの都府県で絶滅危惧種に指定されており、近県の大阪府や和歌山県では絶滅となっている。 スナビキソウはアサギマダラの吸蜜植物として有名であるらしく、ここでも数匹のアサギマダラが飛来していた。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 スナビキソウ
ニッコウバイカウツギ
Fig.9 ニッコウバイカウツギ
海岸から山腹へいたる林縁部にウツギやイブキシモツケ タンゴイワガサに混じってニッコウバイカウツギが数本開花していた。 この季節にはウツギの白い花が目立ち始めるが、バイカウツギの仲間はウツギよりも見かける機会は少なく、西宮市内でも限られた場所にのみ生育している。 ニッコウバイカウツギはバイカウツギの変種で、葉裏に毛が多く、花柱に毛のないものをいう。 バイカウツギは兵庫県下では六甲山地周辺でのみ見られ、日本海側で見られるものはニッコウバイカウツギか、ニッコウバイカウツギとシコクバイカウツギの雑種とする説のあるアイノコバイカウツギで、 アイノコバイカウツギには葉裏に毛があるほか、花柱にも毛を散生する。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
アズマガヤ
Fig.10 アズマガヤ
アズマガヤは図鑑では山地の林下にやや稀となっているが、兵庫県下では内陸部から但馬の海岸にかけて比較的産地が多く、但馬地方では海岸部に多くの記録が偏っている。 ここではウツギやイブキシモツケが生える林縁近くの草地から礫浜上部にかけて、比較的多くの個体が見られた。 花穂は一見するとカモジグサなどのエゾムギ属のように見えるが、それよりも繊細で、花軸の1節に2個の小穂がつくことにより区別できる。 同属に花穂に小穂がより少数つき、1節に小穂を1個つけるイワタケソウがあり、北播・但馬の山地に稀産し、兵庫県版RDBのBランクに指定されている。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 アズマガヤ
コウボウシバ
Fig.11 コウボウシバ
コウボウシバはふつう砂浜に匐枝をはわせて群生するが、ここでは岩上の割れ目にそって匐枝をのばして、広い隙間のある場所で画像のように密に叢生していた。 ときに塩性湿地に現われるシオクグもこのような状態で生育するものがあり、このような場所で生育するものは草丈が矮小化してコウボウシバと区別が難しいことがある。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 コウボウシバ  ●湿生植物 シオクグ
砂浜に見られる海浜植物
Fig.12 砂浜に見られる海浜植物
今回は礫浜とは別の場所の砂浜の海浜植物の様子も観察した。道路に面した開けた砂浜では勢い外来種が多くなるが、それでも瀬戸内側よりも外来種は少なかった。 砂浜を優占するのはハマヒルガオとハマエンドウで、続いてコウボウシバとコウボウムギが多く、オニシバやハマニガナが薄く広く生育しているという感じであった。 画像ではコウボウムギ、ハマニガナ、オニシバが写っている。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
コウボウムギ
Fig.13 コウボウムギ
コウボウムギは砂浜深くに匐枝を横走して群生し、より浅い場所に匐枝を伸ばすコウボウシバのように岩上に見られるようなことはない。 自然海岸の残る場所で見られ、西宮市内でも見られるが、コマツヨイグサやホソムギなどの外来種に埋もれるように辛うじて生育している。 ここでは広い範囲にわたって、点々と小群落をつくっていた。雌雄異株で、画像左の緑色の花序のものが雌株、右の褐色の花序を持つものが雄株である。 西宮市では個体数が少ないため、採集できなかったが、ここで花序を採集することができ、やっと詳細を観察することができた。 小穂の構造など、近くコウボウムギのページに追加する予定である。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 コウボウムギ
オニシバ
Fig.14 オニシバ
オニシバは海岸の砂地に生育する、粗剛なシバの仲間で、自然海岸の砂浜の減少に伴い、自生地も減少しつつあり、兵庫県版RDBのCランクに指定されている。 オニシバの生育環境と同様な場所には良く似たナガミノオニシバがあり、高さ0.1mmの膜質の葉舌を持ち、葉身基部に軟毛と長軟毛が生える。 ナガミノオニシバはオニシバよりもさらに自生地が少なく、かつては西宮市内の甲子園浜で記録があるが、現在は絶滅して見られない。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 オニシバ
ハマニガナ
Fig.15 ハマニガナ
ハマニガナも自然海岸の減少によって見られなくなった種で、兵庫県版RDBではCランクとされている。 兵庫県下では自然海岸の多い日本海側にはまだ自生地は多いが、瀬戸内側では淡路島や播磨の海岸でわずかに生き残っている。 撮影に訪れたのは朝7時ごろで、まだ開花時刻には早く、開花途上の花ばかりで、開花した画像はお預けとなってしまった。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 ハマニガナ
ハマダイコン
Fig.16 ハマダイコン
ハマダイコンは海岸やその周辺草地などでハマヒルガオとともにもっとも普通に見られる海浜植物で、ここでは大きな株があちこちで群生していて、それだけでも海岸の自然度の高さが伺えた。 ハマダイコンの長角果は熟しても割れることなく、外果皮の節の部分から痩果を包んだままばらけて落果する。 長角果の外果皮は硬く、内部はスポンジ状に厚く痩果を包み、水に浮遊し、これによって生育領域を広げる。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 ハマダイコン
バイカモ群落
Fig.17 バイカモ群落
但馬の海岸から高原へと移動する途中、バイカモの群生地として有名な河川に立ち寄った。 ちょうど初夏の開花真っ盛りで、豊富な水量で流れる川面には、涼しげに草体がなびき、沢山の小さな白い花が立ち上がっていた。 この日は高原の水路でもバイカモを見たが、高原のものはまだ開花は遠いようだった。 兵庫県北部ではバイカモを比較的見掛ける機会が多いが、葉が大きなヒルゼンバイカモらしきものや、その中間のようなものもあり、線引きが難しいと感じる。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●沈水植物 バイカモ
開花したバイカモ
Fig.18 開花したバイカモ
この河川では保護の効果もあって、河床のほぼ全体にわたってバイカモが密生し、開花数も大変多い。 バイカモの花はふつう5花弁であるが、ここのものは変異が多いことで知られ、画像右隅のものは8花弁となっている。 河川は「バイカモ公園」としてよく整備されており、川岸のキンキカサスゲと思われる草叢なども全て刈り取られ、河川周辺を含めた生育環境を観察したい私にとっては、 少しばかり欲求不満の残る場所であった。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
---------------------------------------------- 23rd. May. 2011 ------------------------------------------

スゲのシーズン
スゲや初夏のイネ科のシーズンとなりました。 すでに県南部の低地では連休後半にはスゲのシーズンとなっていましたが、摂津・丹波、それに市内北部や南部でも標高の高い場所ではシーズンに入ったところです。 里山の溜池では真っ先に開花しはじめるフトヒルムシロが開花全盛期です。 そういう訳で、今回はどうしても単子葉植物の記事が多くなり、春先と比べるとちょっと地味なページとなりました。 筆者の興味はどうしても単子葉類に偏りがちで、シーズン真っ盛りとなるとどうしてもそのようになってしまう点は、あらかじめご了承のほどを。

畦に残されたミズタカモジ
Fig.1 耕起後、畦に残されたミズタカモジ
ミズタカモジは図鑑やweb上でも画像が少なく、もうひとつ実体の解らない湿生植物で、長らく自分の中では課題となっていた。 市内のタガネソウの標本を採集しに夕刻に市内北部の里山に立ち寄ったところ、耕起前の水田にセトガヤやスズメノテッポウに混じって、 背の高いムツオレグサのようなイネ科草本が眼に入った。 立派なムツオレグサだなぁと思って近づいたところ、小穂からは沢山の芒が出ていて、小穂はエゾムギ属の特徴を備え、しかしよく見かけるカモジグサの仲間とは様子が異なり、 これまで未見のものだった。 これはもしかしたら例のミズタカモジか、エゾムギ属の未見の外来種かどちらかだろうと考えて標本を採集して調べると、ミズタカモジの特徴と一致した。 翌日、自生個体数や植生を詳しく調べようと自生する水田を訪れたところ、耕起が始まっており、自生する2枚の水田のうち1枚はすでに耕起が終わっており、 2枚目の半ばまで耕起中であった。 多くの個体が土中に鋤きこまれたが、耕起後には画像のように花穂を直立するミズタカモジの集団が畦畔に残っており、これが世代を繋いで行くと考えられる。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●湿生植物 ミズタカモジ
ミズタカモジとカモジグサの花穂
Fig.2 ミズタカモジとカモジグサの花穂比較
ミズタカモジとカモジグサの違いは花穂の特徴において最も明瞭となる。 ミズタカモジでは花穂は直立するが、カモジグサでは花穂の先が垂れる。 これは画像中に黄色矢印で示した中軸の太さからくるもので、ミズタカモジでは頑丈で太く、カモジグサは非常に細いことから曲がりやすいためである。 またミズタカモジでは小穂が中軸に密着するのに対して、カモジグサでは斜開する。 おそらく、これは小穂と中軸の関節部の太さの違いに起因するものだと考えられる。 文献によると、ミズタカモジは頴果が熟すと、花穂と最上部の葉をつけた節の部分から離れて落ちるとされている。 これは小穂が太い関節で中軸にしっかりとついて落果しないことと関係しているのだろうと考えられる。 この他、ミズタカモジとカモジグサの違いで顕著なものは、葯の長さ、葉の長さなどに表れ、草体はミズタカモジに比べ、カモジグサはより粉白を帯びる。
ミズタカモジは環境省絶滅危惧U類だが、その姿はいかにも雑草然としており、そばに生えていても気付かずに通り過ぎている可能性がある。 初夏に畦や休耕田などを注意して見ると、今後あちこちで発見される可能性が高い。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
ドジョウツナギ
Fig.3 用水路を被うドジョウツナギの花穂
里山の棚田でドジョウツナギが用水路が見えなくなるほど多数の花穂を上げていた。 この場所のドジョウツナギは土手下部の用水路脇で頻繁に刈り込みに遭いながらも大株となっており、草丈は低いながらも、花茎を密にあげている。 ドジョウツナギは刈り込みに遭わなければかなり大きくなり、ここで見られるものとはまるで別種のように見え、花穂がなければ同定には苦労する。 時に河川内で沈水状態で生育することがあり、一時的にミクリ類やセキショウモ類のような沈水形をとることがある。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●湿生植物 ドジョウツナギ
ヤマミゾイチゴツナギ
Fig.4 ヤマミゾイチゴツナギ
ヤマミゾイチゴツナギは兵庫県下では内陸部では比較的よく見かける種であるが、情報量が少ないためミゾイチゴツナギやオオイチゴツナギ、イチゴツナギと間違えられることがある。 ヤマミゾイチゴツナギは林縁の湿った草地、半日陰の湿った場所に現れ、ときに群生する。 生活形は1年草または短命な多年草とされ、それを裏付けるように地下部は発達せず、有花茎は細く、茎葉は少数で、か弱い印象を受ける。 花穂はあまり開かず、上部の枝は中軸に密接して下垂する。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 ヤマミゾイチゴツナギ
フタリシズカ
Fig.5 フタリシズカ
丹波地方の雑木林の林床ではフタリシズカが開花しはじめた。 フタリシズカは兵庫県下では比較的山地寄りの林床に見られるが、山が迫る内陸の丹波地方では里山の雑木林の林床に比較的よく出現する。 画像中のフタリシズカの右には結実期のオオマルバコンロンソウが写りこんでおり、自生地は古い地層が撹乱を受けずに良好に保たれている場所である。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 フタリシズカ
ヒトリシズカ果実期
Fig.6 果実期のヒトリシズカ
Fig.5 のフタリシズカの生育場所ではヒトリシズカが群生し林床を優占する。 ヒトリシズカの開花期はフタリシズカよりも約1ヶ月ほど早く、フタリシズカが開花する頃には果実形成期に入り、刮ハが充実する最中である。 ヒトリシズカは花後、花茎は倒伏し、成長する葉にもたれかかるようにして果実を充実させる。 葉はフタリシズカよりも光沢があって、花や花序をあげていなくても区別できる。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 ヒトリシズカ
ギンラン
Fig.7 ギンラン
丹波地方のまばらな社寺林下にギンランが点在していた。 里山に生育するラン科植物では比較的よく見かける種だが、遷移・開発行為・盗掘により減少している。 ラン科というだけで盗掘される傾向にあるようだが、その貧しい思考回路はなんとかならないものかと思う。 かつてはちょっとした古い雑木林にはどこにでも見られたはずであるが、兵庫県ではRDB Cランクとなっている。
  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 ギンラン
キンラン
Fig.8 キンラン
溜池土堤の林縁でキンランが開花していた。 県南部ではギンランよりも見かける機会が少なくなっている。 キンランと同様な理由のほか、雑木林の管理放棄によって見られなくなった場所が多く、ここ数年でも観察していた場所から急速に姿を消しつつある。 花が黄色で目立つため盗掘による採集圧も高いと考えられる。 現状では兵庫県版RDBのCランクと評価されているが、早い時期にBランクに移行する可能性がある。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 キンラン
エビネ群落
Fig.9 エビネ群落
木洩れ日の入る雑木林の林床にヒトリシズカとともに、大株のエビネがあちこちで花茎をあげていた。 エビネはかつて栽培ブームがあり、その時期にかなり盗掘が行われ、このような光景が見られる場所は少なくなっている。 現在でも盗掘が続いており、様々な園芸品種が選抜増殖されている現在では、山野に自生するタイプのエビネは安価で販売されているので、 フィールドで見かけても採取してほしくないものである。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 エビネ
ヤマサギソウ
Fig.10 ヤマサギソウ
溜池土堤でヤマサギソウが点々と生育していた。 ヤマサギソウはよく見かけるオオバノトンボソウに似るが、茎に翼はなく、日当たり良い草地に生育し、オオバノトンボソウよりも開花期が早い。 草刈り管理が行き届き、圃場整備などによって大きな環境改変が行われてこなかった良好な草地環境にだけ見られ、自生地・個体数ともに少ない。 自生がみられた土堤にはツリガネニンジン、キキョウ、ワレモコウ、おびただしい数のオカオグルマが生育しており、ヤマサギソウの個体数も多く、 素晴らしい草地環境が残されていた。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
ヤチカワズスゲ
Fig.11 ヤチカワズスゲ
ヤチカワズスゲは比較的自然度の高い日当たり良い貧栄養な湿地環境に出現する。 西宮市内ではときに棚田の素掘りの水路脇に出現することがあるが、そのような場所ではオニスゲやアギナシ、アギスミレ、サワギキョウ、ミズギボウシなどを伴い、 かつては湿地があったと考えられる。 兵庫県下では貧栄養な湿地が多い南部でよく見られ、ヤチカワズスゲに似た種は見られず、特徴的な小穂を見るだけで種の特定は容易である。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●湿生植物 ヤチカワズスゲ
コジュズスゲ
Fig.12 コジュズスゲ
コジュズスゲは自然度の高い山際近くの休耕田や畦で見かけることが多い。 丹波地方では日陰の林道脇の小さな湿地にネコノメソウ類やヤマサギゴケ、ヤブタビラコ、ミズタビラコなどとともに出現することもあり、日向にも見られるが、 半日陰的な湿地環境を好む傾向があるようだ。 コジュズスゲはタマツリスゲ節のスゲがだ、湿地に出現するのは本種だけで比較的解りやすいスゲである。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●湿生植物 コジュズスゲ
アワボスゲ
Fig.13 アワボスゲ
草刈りの行き届いた、自然度の高い草地環境にのみ生育する草原性のスゲ。 圃場整備の普及によって激減しているスゲで、兵庫県版RDBでは記載されていないが、現状はかなり危機的状況にある。 ここでは草刈りされた休耕田の畦や、次に紹介するヤマジスゲが群生する農道脇に30個体ほど確認できた。 アワボスゲはよく見かけるヤワラスゲに似るが、果胞のくちばしが短いことにより区別でき、兵庫県下では南部に記録が点在する。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西のスゲ アワボスゲ
ヤマジスゲ
Fig.14 ヤマジスゲ
ヤマジスゲは兵庫県版RDB Cランクとされ、兵庫県下の農道上や湿った林道上に局所的に生育しているが、自生地では群生していることが多い。 ここでは棚田の間を通る農道上に群生しており、その様子はまるでイネ科の雑草のようである。 前回紹介したミヤマジュズスゲに似るが、ミヤマジュズスゲの頂小穂は雄雌性となるのに対し、ヤマジスゲでは常に雄性であることによって区別できる。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西のスゲ ヤマジスゲ
アオバスゲ
Fig.15 アオバスゲ
丹波地方の渓流畔の明るい林床にアオバスゲが生育していた。 兵庫県下では中北部の半日陰の林床や渓流畔、林道脇などで見られる。 アオバスゲはスゲ属ヒエスゲ節で、同節で兵庫県下に生育するものにヒロバスゲとサンインヒエスゲがある。 サンインヒエスゲとは果胞が有毛で、匐枝を出さない点で区別でき、ヒロバスゲとは葉幅が8mm以下と細く、果胞のくちばしは長く、口部が2歯となることで区別できる。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西のスゲ アオバスゲ
ダイセンスゲとヌカボシソウ
Fig.16 ダイセンスゲとヌカボシソウ
画像上はダイセンスゲ、下がヌカボシソウで疎林の林床でまばらに生育していた。 ダイセンスゲは日本海側に分布の中心域があるが、三田市以北の内陸部にもよく見られる。 ヌカスゲ節は区別の難しいものが多いが、ダイセンスゲは基部にささくれて繊維状となった古い葉や鞘が残るため区別できる。 ヌカボシソウはイグサ科スズメノヤリ属で、丹波地方の林床や林縁にごく普通に見られる。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西のスゲ ダイセンスゲ  ●関西の花 ヌカボシソウ
開花中のミヤマシラスゲ
Fig.17 開花中のミヤマシラスゲ
休耕田の水路脇でミヤマシラスゲが開花中だった。 休耕田中ではアゼスゲやマツバスゲが果実期に入っていたが、スゲ属の中ではミヤマシラスゲ節のものは開花期が比較的遅い。 スゲ属をはじめとしたカヤツリグサ科は、ふつう開花期に同定するものではないが、よく見かけるスゲは現場で生体を見ても解るものである。 (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●湿生植物 ミヤマシラスゲ
ヒゴクサ
Fig.18 開花中のヒゴクサ
西宮市内の低地ではヒゴクサはすでに果実期に入っているが、高所ではまだ開花中だった。 ヒゴクサは草地から半日陰の林床、溜池畔の林縁など、いろいろな場所に出現し、比較的普通に見られる。 今回は雄小穂(頂小穂)の黄色の葯が新鮮に見えたのであえて開花期のものを掲載してみた。 モジャモジャとした白い雌蕊の柱頭も個性的である。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●湿生植物 ヒゴクサ
ミズタガラシ
Fig.19 ミズタガラシ
山塊に挟まれた狭い沖積盆地の用水路で例年よりも3週間ほど遅れてミズタガラシの開花が始まっていた。 タネツケバナ属のなかでも径約1cmと大きな花を開き、群生すると遠くからでもよく目立つ。 河川や水路、溜池、湿地に生育するが、いずれの場所でも地下からの湧水の供給があるようで、泥中に手を突っ込むとひんやりと感じられる。 兵庫県東部では自生地は限られ、この場所では年々個体数が減少している。 (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●湿生植物 ミズタガラシ
フトヒルムシロ
Fig.20 開花したフトヒルムシロ
水際でミズタガラシの開花が始まる頃、県南部の溜池ではフトヒルムシロの開花が始まる。 フトヒルムシロは兵庫県下では最も開花の早い水生植物で、水生植物のシーズンの開始を告げる。 フトヒルムシロは西宮市内でもっとも普通に見られる水生植物で、腐植栄養質の溜池を好むほか、貧栄養な溜池や水路、砂防ダムの溜まりなどに見られる。 初夏の浮葉は光沢があり、赤褐色を帯びて美しい。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●浮葉植物 フトヒルムシロ
カザグルマ
Fig.21 カザグルマ
カザグルマは湿った半日陰の林縁に生育する。花は大きく径10cm前後で、よく目立つ。 園芸品種のクレマチスの原種となったが、現在減少傾向にあり、環境省準絶滅危惧、兵庫県版RDB Bランクに指定されている。 花はなかなか付けないようで、開花個体を眼にする機会は少なく、花をつけていないと、センニンソウと全く区別できない。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
オオイワカガミ群落
Fig.22 オオイワカガミ群落
アカマツ林が良く発達した尾根のゆるやかな斜面にオオイワカガミの群落がひろがり、開花全盛期となっていた。 西宮市内の人目につきやすい場所に生育していたものは、盗掘によりすっかり姿を消してしまったが、山中を分け入ると所々に群落が残っている。 高山に生育するコイワカガミと比べると、草体はかなり大きい。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 オオイワカガミ 
ホソバテンナンショウ
Fig.23 ホソバテンナンショウ
オオイワカガミ群落の傍に2種のテンナンショウの仲間が開花していた。 この仲間は中間的な形質を持つ個体も多く、典型的な個体を除いて専門家にしか分類ができないものである。 幸いなことにテンナンショウの専門家であるTK先生との調査行であったため、ホソバテンナンショウというお墨付きを頂けた。 右隅はホソバテンナンショウの典型的な付属体を示したもので、幅2mm前後の棍棒状で、先は少し前傾するが、付近には先がふくらんでいる中間的な個体も見られた。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 ホソバテンナンショウ
アオオニテンナンショウ
Fig.24 アオオニテンナンショウ
アオオニテンナンショウは最近記載されたものらしく、私の持っている図鑑には載っておらず、web上では全く情報がない。 小葉の幅は同所的に見られたホソバテンナンショウよりも広く、仏炎苞の舷部内面は平滑で粒状突起や乳頭状突起がない(ホソバテンナンショウでは粒状突起がある)。 付属体は棍棒状でホソバテンナンショウよりも太く、先が少しふくらむ。 このように書いているが、私は種の特徴を完全に把握できたわけではなく、TK先生がいなければお手上げの状態である。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
---------------------------------------------- 10th. May. 2011 ------------------------------------------

丹波の初夏の花
連休の後半、ようやくまとまった時間を空けれたので丹波地方に出掛けてきました。 イチリンソウがそろそろ終わりかけで、休耕田や湿地ではサワオグルマが開花し始めました。
丹波地方では奥山はどこもシカの食害が深刻で、見るべき草本が少なく、シカ除け柵の内側の里山を歩き廻ることが多くなってしまいます。 丹波地方だけでなく、兵庫県下のかなりの場所がそのようになりつつあるようです。 林道沿いの沢を遡行すると、ワナにかかったシカが沢山投棄されていることもあり、そういう場所では上空をカラスが舞って殺伐とした空気が流れています。 あまり出くわしたくない光景です。

サワオグルマ
Fig.1 サワオグルマ
西宮市内では全く見かけないが、丹波地方では休耕田、湿地、用水路脇などに比較的普通に見られ、特に山際の経年休耕田に多い。 日当たり良い環境を好むが、水辺のハンノキ林の林床に群生していることもある。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●湿生植物 サワオグルマ
オカオグルマ
Fig.2 オカオグルマ
こちらはサワオグルマと比べると自生地・個体数ともにはるかに少なく、山間深くの畑の土手や棚田の土手に生育する。 乾いた場所に生育しているような記述もあるが、やや湿った場所に見られることが多い。 サワオグルマとは根生葉に葉柄がなく、茎葉が細く小さい点で区別できる。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 オカオグルマ
シカ除け柵
Fig.3 シカ除け柵のあちらとこちら
シカ柵の向こう側の植生が乏しいのが一目瞭然である。 柵のこちら側はミヤマカンスゲ、メアオスゲ、ミゾイチゴツナギ、トボシガラ、ニョイスミレ、トウバナ、ミズタマソウ、ダイコンソウ、ミズヒキなど狭い草地に 豊富な植生が見られたが、柵の向こうはクラマゴケ、ヒカゲノカズラ、マツカゼソウ、アケボノソウ、タケニグサ、ムロウテンナンショウなどのシカの不嗜好植物だけが 残っている。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
ムロウテンナンショウ
Fig.4 ムロウテンナンショウ
シカの不嗜好植物で何もない林内でボコボコと生育している姿がよく目立つ。 本来毒草でありシュウ酸を大量に含むため、誤って食すと口の中全体にトゲが刺さったようにチクチクと痛むという。 コンニャクもテンナンショウと同じ仲間で、生のコンニャク芋には大量にシュウ酸が含まれている。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 ムロウテンナンショウ
急斜面の植生
Fig.5 急斜面に残された植生
山に接した社寺裏のやや湿った急斜面に、シカの食害を受けていない本来の植生が見られる場所が残っていた。 社寺はシカ除け柵の外側にあるが、見通しが良いためと、急傾斜であるためシカが立ち入れなくなっている。 斜面にはチャルメルソウとセリバオウレン、ミヤマカタバミが非常に多く、エンレイソウ、トキワイカリソウ、ナガバノタチツボスミレ、オオタチツボスミレ、 イチリンソウ、ショウジョウバカマ、オオバタネツケバナ、ニシノホンモンジスゲ、ヒカゲスゲ、イヌシダ、ジュウモンジシダ、イヌワラビ、ナンゴクナライシダなどが見られた。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
ヤブサンザシ
Fig.6 ヤブサンザシ
ヤブサンザシは古生層がひろがる地域の、これまであまり撹乱を受けてこなかった礫質の土壌のある場所に見られる。 花崗岩や流紋岩質凝灰岩を基岩とする場所の多い西宮市内には見られないが、丹波地方では見かける機会が多く、 ヤブサンザシが生育しているような場所では、春先に多くの春植物が開花しているのが見られ、春植物の指標種となる。 撮影地周辺ではセツブンソウ、キクザキイチゲ、イチリンソウ、ニリンソウ、ヤマエンゴサク(広義)、キバナノアマナ、アマナなどが見られる。 ヤブサンザシは秋に赤い実つけるが、サンザシのような食用とはならない。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 ヤブサンザシ
オヘビイチゴ
Fig.7 オヘビイチゴ
この時期は水田の畦に黄色い花が目立つ。 丹波地方で最も多いのはウマノアシガタで、他にヘビイチゴ、ヤブヘビイチゴ、ミツバツチグリ、キジムシロ、オオジシバリ、イワニガナ、ニガナ、セイヨウアブラナ、 セイヨウカラシナ、ハルザキヤマガラシなどで、オヘビイチゴも休耕田や用水路脇で群生して、非常に多くの花をつける。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●湿生植物 オヘビイチゴ
クチナシグサ
Fig.8 クチナシグサ
農道脇の刈り込まれた草地斜面でクチナシグサが開花していた。葉は小さく、半寄生植物とされるゴマノハグサ科草本で、イネ科植物に寄生しているようである。 県内では雨の少ない南部を中心に分布するが、丹波地方では流紋岩質凝灰岩を基岩とする、貧栄養な土壌が広がる地域に生育が見られる。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 クチナシグサ
サトヤマハリスゲ
Fig.9 サトヤマハリスゲ
サトヤマハリスゲは2008年に記載された比較的新しい種であり、載っている図鑑がほとんどない。 兵庫県下では県南部に広く分布していると思われるが、標本数が少なく要調査種となっている。 西宮市内には自生地が多いが、丹波地方では南部の流紋岩質凝灰岩を基岩とする貧栄養な湿地に見られる。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●湿生植物 サトヤマハリスゲ
ミヤマジュズスゲ
Fig.10 ミヤマジュズスゲ
渓流畔でヤマジスゲのような草体のやわらかいスゲを見つけた。 渓流畔の水際にヤマジスゲがあるとはおかしいなぁ、と思いながら採集して持ち帰った標本を調べると、小穂は全て雄雌性であり、ミヤマジュズスゲであると判った。 ミヤマジュズスゲもヤマジスゲも、花茎がなければ、ほぼ間違いなくイネ科草本だと思ってしまうだろう。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西のスゲ ミヤマジュズスゲ  ●関西のスゲ ヤマジスゲ
ナツトウダイ
Fig.11 ナツトウダイ
渓流畔の湿った斜面にナツトウダイが点々と生育していた。 和名に「ナツ」の文字があるが、丹波地方では里山でトウダイグサが咲く春から初夏に、山地の渓流畔などで開花しているのを見る。 近縁種とは腺体がいちじるしく三日月形に広がる点で区別が容易である。 (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 ナツトウダイ
ニシキゴロモ
Fig.12 ニシキゴロモ
ナツトウダイが生える渓流沿いの水際から離れた林床ではニシキゴロモが開花していた。 ニシキゴロモは主に日本海側に生育し、変種であるツクバキンモンソウは太平洋側に生育するが、内陸である丹波地方では両種とも分布する。 しかし混生しているのは見たことがない。混生地があれば雑種が生じて、かなり区別が難しくなるだろう。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
タニギキョウ
Fig.13 タニギキョウ
丹波地方の氷上低地の山際ではタニギキョウの開花が始まっていた。画像は開花しはじめたものだが、全盛となるとほぼ全ての茎に花がつくのでよく目立つようになる。 花は確かに合弁花でキキョウ仲間なのだが、渓流畔に広がって白い小さな花を開いているのを見ると、まるでハコベの仲間のようにも見える。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 タニギキョウ
ニシノヤマクワガタ
Fig.14 ニシノヤマクワガタ
ニシノヤマクワガタは兵庫県下では三田市より北に広く分布している。主に渓流畔に現われることが多いが、溜池畔や湿地にも現われるため、当サイトでは湿生植物としている。 画像のものは山間棚田の放棄水田の用水路脇に生育しているもので、ミツバやセリ、オオバタネツケバナ、チャルメルソウ、カキドオシ、ヤブヘビイチゴなどとともに生育していた。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●湿生植物 ニシノヤマクワガタ
シャク
Fig.15 シャク
丹波地方の里山が広がる地域をクルマで徐行しつつ、周辺を注意しながら流していると、山際の草地に白い花を咲かせた草叢が眼に入った。 クルマを停めて見に行くとシャクが群生して開花していた。 シャクはこれまで兵庫県下では但馬地方と淡路島から記録されていたが、県南部から中部は分布の空白地帯となっていて、丹波地方では初記録となる。 さわやかな香りのある美味しい山菜でもあるが、丹波にここしかないとなれば、採集して食べようという気持ちも起こらない。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 シャク
コウヤワラビのフィドルヘッド
Fig.16 コウヤワラビのフィドルヘッド
里山の用水路脇でコウヤワラビがフィドルヘッドを立ち上げていた。コウヤワラビは根茎で広がり、ここでもかなりの面積に広がっていた。 圃場整備以前には広く見られたはずであるが、丹波地方では点在する程度でそれほど自生地は多くない。 葉は他種にはない特徴的な形をしており、開きかけの葉でもずぐにコウヤワラビであることが判る。 フィドルヘッドとは、シダ類の展葉直前の巻いた姿がバイオリン(フィドル)の柄の先に似ていることによる。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●湿生植物 コウヤワラビ
---------------------------------------------- 7th. May. 2011 ------------------------------------------

市内住宅街に見られる路傍の植物と、外来種が及ぼす問題
この連休中は何かと野暮用が重なって、ほとんどフィールドに出掛ける機会がありませんでした。
ということで、今回は野暮用の合間に自宅周辺の路傍の植物に眼を向けてみました。 3年前までは自宅近くにも水田があって水田雑草のよい観察地でしたが、いまでは完全に宅地化してしまって魅力の乏しい一画となってしまいました。 自宅周辺は幹線道路と鉄道に挟まれ、すでに在来種よりも外来種のほうが圧倒的に多くなっています。 在来種として知られるムシクサやシロイヌナズナでも、自宅周辺で見られるものは外来種だろうと考えています。

スミレ
Fig.1 スミレ
自宅周辺の路傍で唯一見られる在来スミレ。鉄道の土手下の石垣とアスファルトの間に列をなして生育している。 スミレは主の居なくなった隣家の庭にも見られ、人家の庭にもかなりが生き残っているはずである。 他には自宅や隣家にはヒメスミレが見られるが、路傍では外来のニオイスミレが殖えている。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 スミレ
ヒメツルソバ
Fig.2 ヒメツルソバ
ヒメツルソバは自宅周辺の路傍、とくに河川の石垣護岸に沢山定着している。 ヒマラヤ原産のタデ科植物であるが、グランドカバーなどで植栽されたものが逸出して、あっという間に殖えてしまった。 花もコンペイトウのようにかわいらしいため、あえて除草しようとする人も少ないのだろう。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
ツタバウンラン
Fig.3 ツタバウンラン
側溝内をツタバウンランがはっていた。ツタバウンランも同様にグランドカバーなどに使われたものが逸出したもの。 市内ではヒメツルソバとともに河川の石垣護岸を覆っている。 画像にはオランダミミナグサと、根生葉が青いタイプのオニタビラコが写っているが、これも最近では外来であろうと言われている。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
ハタケニラ
Fig.4 ハタケニラ
自宅周辺の路傍ではいたるところでハタケニラが生育しており、この時期には街路に彩りを添えている。 昨年からは自宅の庭にも侵入し、今年は開花していた。草体にニラ臭はなく、食用にもならず、畑地の強害草となっている。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
イノモトソウ
Fig.5 イノモトソウ
新たに区画整理や工事が行われていない路傍の側溝ではイノモトソウやカニクサが良く見られる。 以前は宅地跡の石垣にヤブソテツやベニシダも見られたが、いまでは新しい住宅が建ち、路傍では見られなくなった。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 イノモトソウ
イヌケホシダ
Fig.6 イヌケホシダ
イヌケホシダは園芸植物や園芸用土などに便乗して現在北上中の暖地性シダ。 一時期、ホウライシダの北上が顕著だったが一段落し、現在はイヌケホシダが側溝に目立つようになってきた。 自宅周辺でも2ヶ所で見られる。モエジマシダも北上しているといわれているシダだが、まだ市内では確認していない。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
モモイロヒルザキツキミソウ
Fig.7 モモイロヒルザキツキミソウ
北アメリカ原産のアカバナ科草本で園芸植物として植栽されていたものが逸出してひろがったもので、西宮市内では海岸近くの道路沿いに多く見られる。 今が開花の盛りで、幹線道路にそって群生開花している姿はかなり見応えがある。住宅街では点在している程度で、コマツヨイグサが多くなる。 住民はモモイロヒルザキツキミソウは除草対象としていないようだが、コマツヨイグサは除草対象となっているにもかかわらず、コマツヨイグサの繁殖力に押され気味である。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
アカバナユウゲショウとキュウリグサ
Fig.8 アカバナユウゲショウとキュウリグサ
自宅近くの公園ではアカバナユウゲショウの開花が始まっていた。自宅周辺ではよく見られ、河川の石垣護岸の隙間に多くの個体が生育している。 この公園は傍に流れる小河川を利用した親水公園のような箇所があり、そこに多く生育している。 後方にはキュウリグサが生えているが、これは市内の路傍のどこにでも見られ、放棄された植え込みなどで一面に群生している。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 アカバナユウゲショウ
シロイヌナズナ
Fig.9 シロイヌナズナ
シロイヌナズナは西宮市内では古くから武庫川河川敷での記録がある。 しかし、最近になって外来のシロイヌナズナが入ってきて、市街の路傍や中央分離帯の草地にも生育が見られるようになっている。 画像のものも公園内の緑地部分に見られるもので外来の集団であると考えられる。 多くの幹線道路や鉄道の架橋が架かる武庫川河川敷にも同様な外来の集団が侵入していると考えられ、今では河川敷に生育しているものが在来のものか、 外来のものか判別しがたくなっている。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
アオイゴケとマメカミツレ
Fig.10 アオイゴケとマメカミツレ
公園の緑地部分に生育している。公園は数年前に造られた比較的新しいもので、最初はアオイゴケは見られなかった。 造成の際に持ち込まれた土砂に種子が混入していたか、付近にグランドカバーとして植栽されていたものが逸出したものと考えられる。 初め外来のアオイゴケはカロリナアオイゴケとされていたが、現在ではそれは否定され、在来のアオイゴケと同じ種だろうと推定されている。 兵庫県下では在来のものが淡路島に生育しており、淡路島でも武庫川河川敷のシロイヌナズナと同様な事態が生じると予想される。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
ネバリノミノツヅリ
Fig.11 ネバリノミノツヅリ
ノミノツヅリの毛に腺毛が多い変種であり、西宮市街ではいたるところで生育しており、画像のように分枝を繰り返して塊となって見られることも多い。 葉や花はコハコベよりも一回り小さいが、これだけの株になるとよく目立ち、毛や腺毛におおわれているため白っぽく見える。 史前帰化植物とされるが、どうも現在も継続的に帰化が続いているように思える。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
イトツメクサ
Fig.12 イトツメクサ
ヨーロッパ原産の帰化植物で、西宮市街のアスファルトや歩道の敷石の隙間のいたるところで見られる。葉の長さ2cm前後で、花に花弁はない。 北方系といわれる葉が1cmと小型のアライトツメクサはまだ市内で見たことがない。 在来のツメクサは庭先の湿った場所に生育していることが多く、乾いた場所のものはほぼ外来のイトツメクサである。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
スズメノエンドウとカスマグサ
Fig.13 スズメノエンドウとカスマグサ
舗装されていない駐車場でスズメノエンドウ、ヤハズエンドウ、カスマグサの3種が生育していた。 そこではスズメノエンドウの個体数がもっとも多く、カスマグサはわずかに見られた。 自宅周辺ではヤハズエンドウが最も多く見られ、続いてスズメノエンドウが多く、カスマグサは少ない。 いずれも宅地跡の空地、舗装されていない路地の道端、公園の草地などで見られる。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
シロバナマンテマとコメツブツメクサ
Fig.14 シロバナマンテマとコメツブツメクサ
公園の草地部分のコメツブツメクサの絨毯の中にシロバナマンテマが混生していた。両種ともに市街の道端に良く見られる種である。 シロバナマンテマは香枦園浜や鳴尾浜などの砂浜の高潮帯以上に多くみられる。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
オオスズメノカタビラ
Fig.15 オオスズメノカタビラ
この仲間(イチゴツナギ属あるいはナガハグサ属)は酷似するものが多く、区別が難しく、多くは標本を持ち帰って詳しく調べないと判らない上に、割と変異も多い。 一応同定できても、常に一抹の不安が残る。公園の草地部に生育しているものだが、背丈が非常に低いのでオオスズメノカタビラとは思わなかったが、他の場所ではより大きく成長しているものもあり、 画像のものもオオスズメノカタビラであろうと判断した。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
カラスムギ
Fig.16 カラスムギ
公園の親水施設に生えていた。ヨーロッパ原産の帰化植物である。先のイチゴツナギ属に比べると随分と判りやすい。 良く似たものにマカラスムギとミナトカラスムギというものがあるが、まだ市内では見ていない。 西宮市内の御前浜ではカラスムギが所々で群生している。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
モエギスゲ
Fig.17 モエギスゲ
自宅と同じ通りにある家の石垣に、毎年沢山のモエギスゲが結実する。 時々、綺麗に掃除されて姿を消してしまうが、石垣の間の狭い隙間には根茎が残って、絶えてしまうことがない。 この家のモエギスゲと、自宅に植えているゴウソとアリマイトスゲでスゲのシーズンを計るのである。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●湿生植物 モエギスゲ
ベアグラス
Fig.18 ベアグラス
これはマンションの花壇に植栽されていたもの。数少ないスゲ属の園芸種である。 ベアグラスはオオシマカンスゲであるとするもののほか、ハチジョウカンスゲであるという説もあるようだが、 ここに植えられているのは雌小穂が明らかにオオシマカンスゲの特徴を備えていた。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
---------------------------------------------- 1st. May. 2011 ------------------------------------------

春の花・その3
春は早くも過ぎ始め、西宮市内の平地や丘陵部ではアオスゲやノゲヌカスゲ、ヒカゲスゲなどのスゲ類の結実が始まり、そろそろスゲのシーズンとなります。
丹波地方の里山ではアズマイチゲやキクザキイチゲなど、初期開花のスプリングエフェメラルが結実し、トキワイカリソウやラショウモンカズラの開花が始まりました。

ナガバノタチツボスミレ
Fig.1 ナガバノタチツボスミレ
西宮市内の雑木林の林縁ではタチツボスミレに替わって、ナガバノタチツボスミレが満開となっていた。 葉はくすんだ緑色で、花の色はタチツボスミレよりも紫色が強いものが多く見られる。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 ナガバノタチツボスミレ
ヒメハギ
Fig.2 ヒメハギ
市内丘陵部の道端ではヒメハギが開花していた。陽光の当たる乾いた草地や裸地に多くみられ、カナビキソウなどとともに生育していることが多い。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 ヒメハギ
シロバナヤハズエンドウ
Fig.3 シロバナヤハズエンドウ
ふつうのヤハズエンドウと混生して見られることが多いヤハズエンドウの白花品。市内では数ヶ所で毎年生育がみられ、白花は遺伝的に固定されている。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●湿生植物 ヤハズエンドウ
ナルコスゲ
Fig.4 ナルコスゲ
丹波地方の里山の清流にナルコスゲが生育していた。清流のほとりにはタニガワスゲも見られ、川岸に交互に仲良く(?)並んで生育していた。 ナルコスゲは兵庫県下では日本海側に分布の中心域がある。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西のスゲ ナルコスゲ
ハダカコンロンソウ
Fig.5 ハダカコンロンソウ
ナルコスゲの生育する河川の高水敷では、ハダカコンロンソウが開花していた。ハダカコンロンソウはコンロンソウのうちの、茎に毛の生じない品種。 まだ開花が始まったばかりで、花序は短い。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 ハダカコンロンソウ
ハクサンハタザオ
Fig.6 ハクサンハタザオ
この時期はいろいろな環境でアブラナ科の草本が開花する。ナルコスゲとハダカコンロンソウが生育する河川の護岸上の草地の一画ではハクサンハタザオが群生していた。 草地では気の早いハナウドも花茎を上げている個体があったが、盛大に開花するのはもう少し先になる。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 ハクサンハタザオ
ワサビ
Fig.7 ワサビ
山間棚田最奥の用水路ではワサビが開花していた。 近くの林床では近い仲間のユリワサビが見られたが、ユリワサビの開花はすでに終り、長く倒伏した花茎に角果をつけていた。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●湿生植物 ワサビ
サワハコベ
Fig.8 サワハコベ
丹波地方の湿った林床では、サワハコベの開花が目立つようになった。同じような場所に生えるミヤマハコベより花は小さく、開花時期は少し遅い。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 サワハコベ
アズマイチゲとキクザキイチゲの果実
Fig.9 アズマイチゲとキクザキイチゲの果実
春先に開花する両種はすでに開花も終り、果実期に入っていた。両種ともキンポウゲ科に多い集合果で、アズマイチゲは横向きにつくが、キクザキイチゲは下向きとなる。 アズマイチゲは結実率が悪く、太った痩果が見られないが、キクザキイチゲはほとんどの痩果が充実しつつある。 アズマイチゲの分布がキクザキイチゲよりも限られるのは、この結実率の悪さも関係しているだろう。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 アズマイチゲ  ●関西の花 キクザキイチゲ
ヤマスズメノヒエ
Fig.10 ヤマスズメノヒエ
スズメノヤリの近縁種で、ヤマスズメノヒエは西宮市などの県南部の地域ではあまり見かけないが、丹波地方では近い仲間のヌカボシソウとともにふつうに見られる。 ヤマスズメノヒエは向陽地を好むが、ヌカボシソウは半日陰となる林縁に多く見られる。 丹波地方の里山では、スズメノヤリ、ヤマスズメノヒエ、ヌカボシソウの近縁3種が同時に見られる場所も少なくない。 ここでは棚田の土手でスズメノヤリと混生していた。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 ヤマスズメノヒエ
トキワイカリソウ
Fig.11 トキワイカリソウ
丹波地方の里山の山裾の雑木林では、あちこちでトキワイカリソウが開花している。 とある神社の本堂の裏手ではシカの食害の及ばない急斜面で、ショウジョウバカマ、エンレイソウとともに咲き乱れており、素晴らしい光景が現出していた。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 トキワイカリソウ
ラショウモンカズラ
Fig.12 ラショウモンカズラ
ラショウモンカズラは丹波地方では、撹乱をあまり受けてこなかった古い土壌が残っている場所に多くみられ、花後に匐枝をのばして殖えるため群生することが多い。 ここでは腐植質の堆積した岩上の岩棚にイチリンソウ、オオタチツボスミレ、ユリワサビ、ジュウモンジシダ、チャセンシダなどとともに生育している。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 ラショウモンカズラ
トウゴクサバノオ
Fig.13 トウゴクサバノオ
昨年見つけたトウゴクサバノオの自生地での開花個体。この谷筋の砂防ダム上に多くの個体が見られ、継続的にモニタリングするための基礎調査を行った。 調査箇所は頻繁な獣類の通過による斜面の崩落や、大雨による氾濫が見られ、その影響を調査しようというもの。 総個体数は651個体だったが、開花・結実しているものは30個体程度で、自生個体のほとんどが当年苗であり、前述の負荷によって開花結実に到るものが非常に少ないと推測できる。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 トウゴクサバノオ
ジロボウエンゴサク
Fig.14 ジロボウエンゴサク
丹波地方ではヤマエンゴサク(広義)は比較的よく見られるが、ジロボウエンゴサクの自生地は少なく、これまで1ヵ所で記録があるにすぎない。 今回、新たな自生地を見つけることができた。この場所には数回訪れていたが、これまで開花を見たことが無く、ヤマエンゴサクであろうと思っていた。 開花期はヤマエンゴサクよりも遅く、スプリングエフェメラルの開花時期から少しずれるため、自生地があっても認識されていない可能性がある。 画像では花が淡紅紫色に見えるが、実際の花はもっと紅色を強く帯びている。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 ジロボウエンゴサク
イワカラタチゴケの仲間
Fig.15 イワカラタチゴケの仲間
丹波地方の社寺の石垣にイワカラタチゴケが群生していた。近縁のコフキカラタチゴケよりも見かける機会は少なく、空気の清浄な場所に生育し、中山間地の社寺の石垣で見かけることが多い。 この石垣ではキウメノキゴケ、ゴンゲンゴケ、アツバジョウゴゴケと思われるものなど、多くの地衣類が見られた。 イワカラタチゴケは最近では複数の細かい分類群に分けられているようである。
(画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 イワカラタチゴケ
クジャクゴケ
Fig.16 クジャクゴケ
トウゴクサバノオのモニタリング調査の際、渓流畔の湧水のしたたる岩上を覆っていたもの。 遠目に見るとシダの仲間であるコウヤコケシノブのように見えたが、近寄ると凾煬ゥられ、クジャクゴケであると判った。 蘚類のなかで大きいほうで、美しいものの1つである。  (画像をクリックすると拡大画像がご覧頂けます。)
●関西の花 クジャクゴケ


<<<戻る < 2011年4月へ TOPページ 2011年6月へ >